登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の管理薬剤師&オーナー
顔の見える薬剤師を目指し、日々奮闘中

★井上 佳代子
井上 佳代子(いのうえ かよこ) 59歳
シロスタゾール、ピタバスタチン、イコサペント酸を服用中
薬を飲むのが嫌いで、常になるべく減らしたいと考えている

サプリメントなら安全でしょ!

いつも決まった薬シロスタゾール、ピタバスタチン、イコサペント酸エチルカプセルをもらいにくる井上さんが来局されました。
「ここの所とても調子が良いの。ところが、鼻血が大量に出たのよね。これって、最初にシロスタゾールを飲み始めたときにも起きたんだけど、久しぶりにそれが起きたの。今は止まって何とも無いけど、このまま飲んでいて良いのかしら?」

ゆきさん
「井上さん、薬を飲むようになったきっかけは、何ですか?」

井上さん
「私、薬は嫌いで健康食品のDHA、EPAをとっていたのだけど、先生に『それなら処方薬でもあるよ』と言われて処方してもらったの」

ゆきさんは、本当は病気のきっかけや、そもそも今の処方薬が必要になった理由を聞きたかったのですが、まずは話を聞き続けました。

井上さん
「サプリメントなら体に害が無いでしょ。だからそれは飲んでるの!」

ゆきさん
「サプリメントが全て安全、安心ということは無いんですよ。今はネットでも購入できるから、何が入っているかわからないようなものもあります」

井上さん
「えー、そうなの!」

ゆきさん
「健康被害が出て、ニュースになっていることもありますよ」

井上さん
「それじゃ、何を信じて良いかわからないじゃない」

ゆきさん
「例えば、JHFAという品質を保証するマークがあります。これは第三者機関でサプリメントが安全に、適正に作られているのかを確認するマークです。これが無ければ必ずしも安全では無いというわけではありませんが、安心の一つの目安になります」

井上さん
「ふーん」

ゆきさん
「他に健康への効用を示す『特定保健用食品』というマークもあります。これは国が食品に健康表示を許可しているというマークなんです。このマークが無くて、効果をうたっているものがあれば、違法なので注意した方が良いです。また、高品質なサプリメントでも、状況によってはその素材を飲まない方が良い場合もあります」

井上さん
「サプリメントもなかなか難しいのね」

ゆきさん
「井上さんが飲んでいるEPAは特定保健用食品にもなっているし、医薬品として存在するものだから飲んでおくのは良いと思います」

とにかく薬は、あまり飲みたくないの!

ゆきさん、やっと本題の質問に入ることが出来ると思ったら、井上さんが再び話し始めました。
「このシロスタゾールは出血しやすいんでしょ。こういうのは飲みたくないわ。もう一つの薬(ピタバスタチン)も筋肉を壊すことがあるんでしょ。それも嫌なのよね」

ゆきさん
「確かに、不必要な薬は飲みたくないですよね。まずはピタバスタチンの方からお話をしましょう。今までずっとうちの薬局でお薬をお渡ししていましたけど、ピタバスタチンを飲み始めて、何もお変わりなかったですよね」

井上さん
「えー、特に問題ありません」

ゆきさん
「このピタバスタチンの副作用は、井上さんご指摘の通り、筋肉を壊すというのがあります。具体的には筋肉がだるくなったり、痛くなったりします。大抵は飲み始めに起こる副作用で、井上さんのように長く飲み続けている方は、ほとんどの場合問題ないですよ」

井上さん
「なら、私は気にしなくて大丈夫なのね」

ゆきさん
「そうですね。もし副作用が起きたとしても、血液検査でわかります。数ヶ月に一度は血液検査をしているので、副作用が起きればすぐにわかるはずです。安心して良いと思いますよ」

ゆきさん、ようやく一番気にしていた質問に入れました。
「もう一つのシロスタゾールを飲むようになったきっかけは、何ですか?」

井上さん
「人間ドックで、『脳梗塞一歩手前だから薬を飲んだ方が良い』と言われて飲み始めることになったの」

ゆきさん
「それじゃあ、安易に止められる薬ではないですね」

井上さん
「そうなの。でも、鼻血が出たので心配なの」

専門医に診てもらいましょう!

ゆきさん
「一番最初にシロスタゾールを処方したのは、どの先生になるのですか?」

井上さん
「人間ドックは幸生会病院だったので、そこの先生に処方してもらいました。その後は、自宅の近くが良いということで、岩谷先生で診てもらうように指示されて、そこで同じ薬をもらうようになりました。」

ゆきさん
「それで、岩谷先生を受診されているのですね」

井上さん
「岩谷先生に薬を減らしたい相談をしても、幸生会病院の先生が決めたことなので、変えづらいと頭を抱えられてしまうの」

ゆきさん
「それは、岩谷先生も悩ましいところだと思いますよ。そもそも、岩谷先生は呼吸器が専門だから、循環器の薬のさじ加減は、より慎重になるんじゃないかな」

井上さん
「幸生会病院に検査に行くこともあるのだけど、病院の先生もよく変わるから、『問題無いから、そのままに続けなさい』で終わるのよね」

ゆきさん
「井上さん、このシロスタゾールですが、今の血栓を起こさない良い状況を保っている薬なので、なかなか止める判断は難しいですよ。お薬を止めたいという気持ちはわかりますが、必要な薬はやはり飲まなければだめですよ」

井上さん
「今まで2回しかないけど、鼻血が出ても続けないとダメなの?」

ゆきさん
「鼻血では大きな問題が起こることは少ないですが、脳梗塞は死に至ったり、後遺症を起こしたりするので怖いですよ。飲み続けておいた方が良いと思うけどなあ」

井上さん
「でも、体調は良いのよ」

ゆきさん
「一度、循環器が専門の先生に診てもらってはいかがですか。近所では花田先生が循環器の専門です。検査設備も結構整っているので、診てもらうのが一番ですよ」

井上さん
「勝手に行ってよいのかしら?」

ゆきさん
「病院ではなく、開業医の先生だから、紹介状が無くても大丈夫ですよ」

井上さん「それなら、行ってみるわ」と言って帰られました

数日後、再び井上さんが薬局を訪れました。
「ゆき先生、やはり薬を飲むことにしたは。それにしても同じ内科でも検査設備が全然違うのね」
ゆきさん
「そうでしょ。一口に内科と言っても、それぞれ専門があるんです。いずれにしても納得して薬を飲んでもらえれるのが、こちらとしてもうれしいことです。薬の効果も、納得しているのとしていないのでは、大違いです」


井上さん、笑いながら話しました。
「それは無いでしょ。同じ薬なんだから」

同じく笑いながら「いやいや、信じる者は救われるですよ。信じて飲んで下さい」と答えるゆきさんでした。

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです

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