今回は産婦人科医ブロガーとして、妊婦さんに寄り添った記事で人気の「きゅー先生」に分娩誘発剤の成分や効果、副作用について解説していただきました。
分娩誘発剤とは?
分娩誘発剤の種類~オキシトシンとプロスタグランジン~
現在日本の臨床で使用されている分娩誘発剤は、オキシトシンとプロスタグランジンという2つの薬剤が主流で、いずれも点滴でポタポタ投与をするタイプの薬剤です。
以前はプロスタグランジンの内服薬や腟錠も使用されていたのですが投与量のコントロールが難しく、陣痛が強くなりすぎて赤ちゃんが苦しくなってしまった場合などの事を考慮し使用されなくなってきました。
以前はプロスタグランジンの内服薬や腟錠も使用されていたのですが投与量のコントロールが難しく、陣痛が強くなりすぎて赤ちゃんが苦しくなってしまった場合などの事を考慮し使用されなくなってきました。
分娩誘発剤=愛情ホルモン?
プロスタグランジンは生理痛を引き起こすホルモン、そしてオキシトシンは産後おっぱいを出すためのホルモンとして、どちらも皆さんの体の中で作られるものです。特にオキシトシンは、愛情ホルモンや子育てホルモンと呼ばれ注目されていますし、将来子供の自閉症に対して治療効果を持つ可能性が示唆されていて、俄然注目を浴びています。
愛情ホルモンと分娩誘発剤が同じものであることを知らない人が多いせいか、産後は非常に好感度が高いホルモンであるにも関わらず、場面が変わると一転して忌み嫌われる存在になってしまうオキシトシン。はちょっと可哀想に思いますし、少々納得がいかないところもありますが、私たち産科医にとっては無くてはならない薬剤です。
愛情ホルモンと分娩誘発剤が同じものであることを知らない人が多いせいか、産後は非常に好感度が高いホルモンであるにも関わらず、場面が変わると一転して忌み嫌われる存在になってしまうオキシトシン。はちょっと可哀想に思いますし、少々納得がいかないところもありますが、私たち産科医にとっては無くてはならない薬剤です。
分娩誘発剤を使用するケース
産前・産後の様々なケース
体の中で作られる物質で出来ているにも関わらず、分娩誘発剤が敬遠される要因は、個人的には「陣痛促進剤」というネーミングが少なからず影響していると思います。
これらの薬剤は、いわゆる子宮収縮剤であり下記のような様々なケースで使用されています。
これらの薬剤は、いわゆる子宮収縮剤であり下記のような様々なケースで使用されています。
例えば…
■妊娠42週を過ぎると(過期妊娠)、赤ちゃんの状態が悪くなりやすいことがわかっているので、その前の週くらいに計画分娩を行なうケース
■子宮の収縮が弱く分娩が中々進まない分娩停止、破水してしまい赤ちゃんに感染が及ぶ前にお産にしたい時
■妊娠高血圧症候群や心臓病といったお母さんの体を考慮した場合
■妊娠42週を過ぎると(過期妊娠)、赤ちゃんの状態が悪くなりやすいことがわかっているので、その前の週くらいに計画分娩を行なうケース
■子宮の収縮が弱く分娩が中々進まない分娩停止、破水してしまい赤ちゃんに感染が及ぶ前にお産にしたい時
■妊娠高血圧症候群や心臓病といったお母さんの体を考慮した場合
大量出血の予防
さらに大切なのは、出産後の大量出血を予防するための使用方法です。現在の妊産婦死亡率の1番多い原因は依然として出血によるものです(約3割)。
出産直前の子宮には実に毎分1Lもの血液が注がれており、産後胎盤が剥がれた後は子宮自身の収縮で出血を止めなくてはなりません。収縮力が弱いとしばしば大量出血を来すため、産後出血に対する積極的な管理を行うことが重要です。
その管理の第一選択としてオキシトシンの使用が産科ガイドラインでもしっかりと明記されており、現在多くの施設で、出産直後に全ての妊婦さんに対してオキシトシン投与を行っています。
この様に分娩誘発剤は陣痛を起こさせるだけでは無く、子宮収縮作用を利用し、様々な場面で使用される薬剤なのです。
出産直前の子宮には実に毎分1Lもの血液が注がれており、産後胎盤が剥がれた後は子宮自身の収縮で出血を止めなくてはなりません。収縮力が弱いとしばしば大量出血を来すため、産後出血に対する積極的な管理を行うことが重要です。
その管理の第一選択としてオキシトシンの使用が産科ガイドラインでもしっかりと明記されており、現在多くの施設で、出産直後に全ての妊婦さんに対してオキシトシン投与を行っています。
この様に分娩誘発剤は陣痛を起こさせるだけでは無く、子宮収縮作用を利用し、様々な場面で使用される薬剤なのです。
分娩誘発剤使用時の確認ポイント
事前に説明文書をチェック
それでも、分娩誘発剤ってなんだか怖い!と感じている人は、何のために使用するのか?どの様に使用するのか?どんな副作用があるのか?などについて、現場でしっかりと聞いておく様にしましょう。
最近では、分娩誘発剤使用について詳細な説明文書を渡す施設も多くなってきたので、きちんと目を通して、納得した上で使用をする様にしましょう。
最近では、分娩誘発剤使用について詳細な説明文書を渡す施設も多くなってきたので、きちんと目を通して、納得した上で使用をする様にしましょう。
副作用や赤ちゃんにストレスはある?
基本的には体内で作られるホルモンと同様の成分なので、大きな副作用は無いのですが、薬剤が多すぎると子宮の収縮が強くなりすぎる過強陣痛を来たし、赤ちゃんにストレスを与えてしまうことがあります。
そのため分娩誘発剤は、数十分おきに子宮収縮の程度をチェックして、少しずつ増量・減量をしながら調整を行います。人によってはすぐに効果が得られずに中々しっかりとした子宮収縮が起こらないケースも多いのですが、急に薬剤を増やして赤ちゃんにストレスを与えてしまったら元も子もありませんので、薬剤の調整は慎重に行います。
そのため分娩誘発剤は、数十分おきに子宮収縮の程度をチェックして、少しずつ増量・減量をしながら調整を行います。人によってはすぐに効果が得られずに中々しっかりとした子宮収縮が起こらないケースも多いのですが、急に薬剤を増やして赤ちゃんにストレスを与えてしまったら元も子もありませんので、薬剤の調整は慎重に行います。
まとめ
■分娩誘発剤は、オキシトシンやプロスタグランジンといった、体内で作られるホルモンと同様の成分である。
■子宮収縮作用を利用し、陣痛を起こす以外の様々な場面でも使用される。
■投与量が多くなり、過強陣痛を来すと赤ちゃんにストレスがかかることがあるので、増減は数十分おきに慎重に行われる。
■子宮収縮作用を利用し、陣痛を起こす以外の様々な場面でも使用される。
■投与量が多くなり、過強陣痛を来すと赤ちゃんにストレスがかかることがあるので、増減は数十分おきに慎重に行われる。
※※
如何でしたでしょうか。
初めて妊娠・出産される方は、分娩誘発剤使用の有無以外にも、「陣痛から出産までの流れ」や「妊娠中の体重の増加はどれくらいまでセーフ?」などさまざまな疑問があるかと思います。今回寄稿いただいた産婦人科医きゅー先生の新刊『妊娠・出産を安心して迎えるために 産婦人科医きゅー先生の本当に伝えたいこと』では、妊娠・出産を初めて迎える妊婦さんの疑問に分かりやすく答えています。気になった方はぜひチェックしてみてください。
如何でしたでしょうか。
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『妊娠・出産を安心して迎えるために 産婦人科医きゅー先生の本当に伝えたいこと』
著者:産婦人科医きゅー (さんふじんかいきゅー)
都内の某大学病院で働く産婦人科医。医学博士。アメブロ公認トップブロガー。「専門的な知識をとにかくわかりやすく!」をコンセプトに開設したブログが評判を呼び、現在23000人を超える読者に向け、産婦人科の知識を伝えている。
出版社:KADOKAWA
発売日:2016年6月16日
定価:1200円(税別)
著者:産婦人科医きゅー (さんふじんかいきゅー)
都内の某大学病院で働く産婦人科医。医学博士。アメブロ公認トップブロガー。「専門的な知識をとにかくわかりやすく!」をコンセプトに開設したブログが評判を呼び、現在23000人を超える読者に向け、産婦人科の知識を伝えている。
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