在宅医療とは?①家にお医者さんがくる?

皆さんは在宅医療と聞いて、どんなイメージがありますか?
お医者さんや看護師さんが、定期的に自宅まで訪問して診察や処置を行うのが在宅医療です。1人で問題なく通院できる方は、高齢になっても病院やクリニックの外来に来られますが、だんだん動けなくなり通院が難しくなった方は、在宅医療の対象となります。

日本は高齢先進国と言われており、今後ますます高齢者の絶対数が増えていく傾向にあります。それに伴い、身近な人が急に介護や在宅医療を必要とするケースも出てくると思います。いざというときに備え、ぜひ、本連載で在宅医療についての予備知識をつけてもらえればと思います。

在宅医療とは?②どのように医療が提供されるの?

(1)訪問診療

通常月1〜2回のペースでご自宅まで医師が診察に伺います。
癌の末期など状態が不安定な方のところには、毎週伺うこともあります。

診察をして定期のお薬を出すのが主な役割ですが、褥瘡(じょくそう:床擦れのこと)ができたり、何らかの処置が必要になった場合は、適宜対応します。特に色々と医療が必要な方(これを「医療度が高い」と言います。胃ろうや尿道カテーテルが入っている場合などそれにあたります。)を担当する場合は、訪問看護ステーションに指示書を発行して連携します。

急性の病気を起こした場合、たとえば誤嚥(ごえん:異物や食品を気管内に飲み込んでしまうこと)が原因の肺炎や転倒が原因の骨折などには、臨時往診をして対応します。入院が必要な状況であれば適切な病院に紹介することもありますし、本人・家族と相談して自宅治療を望まれる時は、一時的に訪問の回数を増やして自宅で治療を行います。

(2)訪問看護

週1回からご自宅まで看護師が伺います。

病状の観察(血圧・体温・脈拍など)、便通の状態確認、皮膚トラブルのチェック、薬が飲めているかの確認、リハビリテーションなど幅広く行います。また、肺炎の治療が必要な時は点滴をしたり、褥瘡の処置を医師から指示を受ける、自宅でのお看取りのサポート、など医療度が高いことも積極的に行います。

訪問看護が関わることで、病院で受けていた医療を自宅で受けることができ、癌の末期の方も自宅で最期を過ごすことが可能になります。病状が不安定で介護の方が不安になるような在宅患者さんの入浴のサポートなども行います。訪問看護は、生活から医療のことまで幅広く支える、在宅医療に欠かせない医療の形です。

(3)訪問リハビリテーション

週1回からご自宅へリハビリのスタッフが伺います。

施設に通うリハビリテーションに比べて時間は少ないものの、その分マンツーマンでリハビリの指導を受けることができます。ストレッチ、歩行訓練など体を動かす指導から、自宅のなかの導線や手すりの使い方の確認など在宅生活で重要なサポートや提案も行います。特に独居の高齢者の場合、本人が自宅で快適に動けることが在宅生活を続けるためにとても大切ですから、リハビリスタッフが在宅医療のチームにいると、医師としても心強く感じます。

(4)訪問薬局

訪問診療で処方箋が発行された時に、薬剤師さんが自宅までお薬を届けてくれます。

医師としてありがたいのは、残薬確認や本人の状態に合わせた飲み方も提案してくれることです。ある訪問診療の患者さんは、押し入れの中から1000錠もの残薬が発掘されましたが、探し出して数えてくれたのは訪問薬局の薬剤師さんでした。本人や家族がしっかり管理できていれば問題ありませんが、薬の飲み方や管理に不安がある方は、訪問薬局を早めに利用されることをお勧めします。

(5)訪問歯科

定期的にご自宅まで歯科医師が伺います。

口腔ケア、虫歯治療、入れ歯の作成など自宅でできる口の中の処置も多数あります。在宅患者さんは歯の治療で頻繁に通うことができない方が多いので、訪問歯科の存在はとても心強いものです。特に最近は、嚥下(えんげ:飲み込むこと)状態も確認してくれるところが増えています。これまでは、入院して検査をしないと嚥下の状態が評価できなかったのですが、近年では、自宅にカメラを運んできて観察、評価することが可能になりました。

(6)訪問マッサージ

医療保険を使ってご自宅で受けられるマッサージ治療です。

マッサージと標榜していますが、医師の立場からは、拘縮(こうしゅく)予防やベッド上のリハビリ指導をしてくれるため、大事な在宅医療の一貫だと認識しています。痛み止めを飲んでもまだ痛みが残る高齢者に対して、薬以外の方法で疼痛(とうつう:ずきずき痛むこと)緩和をはかることのできる有効な方法です。

在宅医療とは?③どんな時に頼むの?

ケースによって、在宅医療を始められる理由は様々です。

「エレベーターのない団地に住んでいるため、階段を降りるのが大変になったから」という理由もあれば、「転倒や皮膚のトラブルを繰り返しているため、訪問診療を入れて綿密に連携 を取らないといけない状況になった」という理由もあります。

75歳以上で後期高齢者と呼ばれる方々のなかでも、特に「介護保険を申請して要介護状態の判定になった方」に在宅医療を必要とする方が多い印象です。私の担当している在宅患者さんも80−90歳代が多くの割合を占めています。

4. 注意が必要なこと

注意して欲しいことは、在宅医療をお願いするタイミングを逃してしまわないことです。

家族全員が大変になるまで通院を続けたり、東京都内に特に多いのですが、認知症の独居高齢者の場合、足の踏み場がないくらい家が荒れた状況になってから頼まれるケースもあります。

5. おわりに

今回は、在宅医療とはどんなものかざっくりとご説明しました。

これからはますます高齢者が増えていく時代になります。「自分の家族が在宅医療を必要とするようになった」というケースもますます増加することが予測されます。正しい知識を身につけ、いざという時に備えましょう。

次回からは、読者の皆さんの助けになるよう、在宅のサービス内容、印象に残った患者さんのこと、お看取りについてなど、色々な角度から在宅医療を紹介させてもらえればと思います。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。