登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の管理薬剤師&オーナー
顔の見える薬剤師を目指し、日々奮闘中

★吉岡 多恵 
吉岡 多恵(よしおか たえ) 71歳
10年以上坐骨神経痛に悩まされている
やっと効果のある薬に巡り合えたが、副作用で太ってきた

坐骨神経痛が治らなくて!

風邪でたまに来局される吉岡さん、今日も内科の処方箋をお持ちになりました。

ゆきさん
「吉岡さん、お薬のご用意ができました」

吉岡さん
「また、風邪をひいてしまって、結構のどが腫れているみたい」

ゆきさん
「のどの他にも、咳、鼻水の症状もあるのですかね?」

吉岡さん、つらそうに「えぇ」と答えました。

ゆきさん
「吉岡さんによく処方されている薬は、咳止め、鼻炎、のどの炎症を抑える薬、消炎鎮痛剤、抗生物質です。確か、吉岡さん整形外科も受診されていましたよね。鎮痛剤はダブるので、こちらの薬を飲んでいる間は、整形外科の薬は中止してくださいね」

ゆきさん、内科の先生とは事前打ち合わせをしており、「風邪などで整形外科と鎮痛剤がダブり」、「整形外科の薬が長期で出ている弱めの鎮痛剤の場合」には、内科の薬を優先利用するというルールを決めていました。

吉岡さん、不満そうに話し始めました。
「整形外科に通ってはいるけど、ちっとも良くならないのよ。電気を当てて同じ鎮痛剤を出すだけでしょ。電気を当てたときには少しましになるけど、その時だけで、良い状態が続かないの。もう治らないのかしら?」

ゆきさん
「先生には、きちんとご相談されているのですか?」
吉岡さん
「電気を当てに、真面目に通院しないからダメなんだと怒るのよ。治しもしないで頭にくるわ!」

「病は気から」とも言うくらいで、医師との信頼関係が築けなければ治るものも治りません。ゆきさん、吉岡さんと医師との信頼関係ができていないことを確認して、「他の整形外科を受診することを勧めた方が良いかも」と感じ始めました。

「吉岡さん、そこまで思っていらっしゃるなら、病院を変えてみるのが良いかもしれませんよ」

吉岡さん
「そうよね。どこか良い病院は、あるかしら?」

ゆきさんは、「どこの病院が良いですか」という相談をよく受けます。紹介にあたっては、病状だけでなく、患者さんの性格や考えも考慮しています。
今回は患者さんとの信頼関係を重視したので、「あの先生は、優しい先生よ」と患者さんから言われる医師ではなく、「あの先生は、治療方針がはっきりしているので信頼できる」と言われている医師を考えました。

「神田整形は聞いたことがありますか?あそこは、すごく混んでいるけど、きちんと治療してくれるという評判ですよ」

吉岡さん
「1時間待ちは当たり前と言われている病院よね」

ゆきさん
「そうなんです。でも、『なるべく負担の無いように通院回数を少なく、早く治すようにしてくれる』と受診されている患者さんがお話しされています。飲み薬がだめなら、注射、それでもだめなら別の注射と、矢継ぎ早に治療方法を考えてくれるようですよ」

吉岡さん
「あら、そう。ダメな治療を続けても意味無いわよね。どうもありがとう。早速行ってみるわ」

リリカの服用はここに注意

翌日、吉岡さんが神田整形の処方箋を持って来られました。
「神田先生、なかなかテキパキしている先生ね。気持ち良かったわ。神経痛には単なる痛み止めではなかなか厳しいので、麻薬に近い薬を処方すると言っていたわよ」

ゆきさん、「それは良かったですね」と話しながら薬の準備をして、早速薬の説明を始めました。
「吉岡さんの痛みは、慢性的な痛みになっていますよね。今まで利用していたハイペンという鎮痛剤は、いわゆる一般的な痛み止めですが、今日のリリカは、慢性的な痛みを忘れさせるような薬です」

吉岡さん
「一般的な痛み止めと、何が違うの?」

ゆきさん
「一般的な痛み止めは、炎症や刺激で起きる痛みに利用する薬です。一方リリカはビリビリ、ジンジン、チクチクなどの電気が走るような痛みや、しびれるような痛み、神経が障害されて起こる痛みに利用する薬です。ただし、眠気、ふらつきなどの副作用が起きることがあるので、飲み方に注意が必要です」

吉岡さん
「どんなことに注意するの?」

ゆきさん
「副作用を起こさないように、少しづつ体を慣らしていく必要があります。少量から飲み始めて、徐々に薬の量を増やしていき、止める場合も徐々に減らしていきます」

吉岡さん
「今日の処方ではどうなっているの?」

ゆきさん
「今回は吉岡さんの年齢も考えて、本当に少ない量、回数で1週間分処方されています。1日1回寝る前に、25㎎1カプセルを飲んでください。その後は、朝夕2回に、そして1回50㎎、75㎎と効果が確認できる量まで、増量していくことになると思います」

吉岡さんは1か月かけて、1日2回、1回75㎎まで増量することになり、今まで苦しんでいた坐骨神経痛からかなり解放されるようになりました。

副作用で太り始めたら…

痛みから解放されて嬉しそうにしていた吉岡さん、リリカで安定して3か月ほど経過したのですが、今日は浮かない顔で来局されました。

ゆきさん
「吉岡さん、いつものリリカです。今日は元気が無い様ですが、何かありましたか?」

吉岡さん
「恥ずかしい話なんだけど、最近太り始めたのよね」

ゆきさん
「そうですか。原因はわからないのですが、実はリリカの副作用に体重増加があります。吉岡さん、残念ながらその副作用が出たみたいですね。せっかく痛みが軽減されたのですから、リリカは止めない方が良いと思いますが、困りましたね」

吉岡さん
「どうすれば良いかしら?あきらめるしかないの?」

ゆきさん
「ごめんなさい。現時点では対処法が思いつかないので、後日考えて連絡しますね」と言って、その場を終えました。

ゆきさん、早速メーカーの学術に問い合わせの電話をして相談をしました。

※ 製薬メーカーの学術とは?
メーカーには医療機関、薬局からの質問に対応する部署があり、その対応の多くは学術が担っています

学術担当者は、しばらく時間をかけて文献を調べてくれて「防風通聖散で体重減少を抑制したという報告があります」と教えてくれました。

ゆきさん、その手があったかと早速吉岡さんに電話しました。
「吉岡さん、体重増加の対処法を考えたのですが、まず一つ質問させてください。便秘がちなことはありますか?」

吉岡さん
「前から便秘がちです。『年をとると便秘になる』とお友達みんな言っているわ」

ゆきさん
「そうですか。確かに、加齢とともに便秘になる方は多いような気がしますね。防風通聖散という漢方薬があるのですが、便秘がちで肥満症の方が利用する薬なんです。それで体重減少を抑える場合があるようです。試してみてはいかがでしょう」
吉岡さん
「それって、便秘にも効果があるのね。それは良いかも。どのようにすれば手に入るかしら?」

ゆきさん
「次回、神田整形に行かれた時に『ゆきさんが、リリカでの肥満の副作用に、防風通聖散が良いかもと言っていた』と率直にお話ししてください。神田先生とは面識があるので、『そうか、じゃあ試してみましょう』となると思います」

吉岡さん、「わかったわ、先生に相談してみます。わざわざ、ありがとう」と電話を切りました。

痛みが安定していたので、吉岡さんの受診は、1か月に1回になっていました。2回目の防風通聖散の処方箋を持って来られた吉岡さん、嬉しそうに手土産をもって、薬局を訪れました。
「ゆきさん、お蔭様で便の調子が調子良いわよ。このまま順調に行けそうな予感がしてきたわ」

ゆきさんは「良かったじゃないですか」と言いながら手土産をのぞき込みました。
「これ、僕の大好きなシュークリームじゃない。自分は痩せて、僕を太らせる魂胆ですか」と嬉しそうに声を上げるゆきさんでした。

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです