登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の管理薬剤師&オーナー
顔の見える薬剤師を目指し、日々奮闘中

★ 石原 真優 
石原 真優(いしはら まひろ) 25歳女性
ゆきさんにあこがれて、ゆきさん薬局で働く薬剤師
素直で明るく、真優ちゃんと呼ばれ、スタッフにかわいがられている

初回質問票が何でカラーなんですか?

今日は雨で患者さんが少ないので、ゆきさんは真優ちゃんと雑談を始めました。
そんな中で、真優ちゃんがゆきさんに質問を始めました。
「先日、大学の同級生と食事をしていて話題になったのですが、うちの薬局のアンケートってカラーじゃないですか。何でなんですか?」

ゆきさん、質問に素直に答えることなく、逆質問を始めました。
「アンケートって、初回の患者さんに記入してもらう質問用紙のことだね。真優ちゃん、うちの質問用紙の表題を見たことはある?」

真優ちゃん、すぐにその用紙を見て、「あー初回質問票て書いてあります。アンケートじゃないんですね」

ゆきさん
「一般的なアンケートって、何のためにすると思う?」
真優ちゃん
「たとえば、会社が新商品を開発するためとか、お店でサービスが行き届いているかを確認するためとかに、お客様の意見を聞くことを目的として行っていると思います」

ゆきさん
「そうだよね。だからアンケート、と聞くと、最終的にはお客様のためではあるのだけど、お客様からすると、会社のため書かされていると思ってしまうよね」

真優ちゃん
「あー、確かにそうですね」
ゆきさん
「だからうちでは、アンケートとは言わずに初回質問票と言っているんだよ。患者さんに記入をお願いするときにも、『患者さんにお薬を安全に使っていただくために、記入をお願いしています』と、患者さん自身のためであることを言って、お願いしてもらっているでしょ」

真優ちゃん
「そうだったんですね。そこまでは理解していませんでした」

ゆきさん「あちゃー、部下が理解していないとは、それはダメな上司だね」と笑いながら話しを続けました。
「それで、その初回質問票なんだけど、患者さんのためと言っても、やはり面倒くさいから書きたくないという人が多いと思うんだよね」

真優ちゃん
「そうですね。非常にまれですけど、たまにアンケートを記入しなければいけないのなら、他の薬局に行くという患者さんもいますもんね」

ゆきさん
「そうなんだよ。自分でも、いつもと違う整体に行くと記入させられるので、面倒くさいなと思うからね」

真優ちゃん笑いながら「ゆき先生、整体に行くんですね」と答えました。

「あー行くよ。これでも苦労しているんだよ」とゆきさんも笑いながら答えました。
「そんなことより、何故カラーにしているかだったよね。カラーにしているのは、記入作業を少しでも負担を感じないようにしてもらうためなんだ」

真優ちゃん
「なるほど、そうなんですね。確かに白黒だと味気なくて書かされている感が強いですもんね」

質問項目はどうやって決めたのですか?

真優ちゃん、質問を続けました。
「初回質問票の質問は、どうやって決めたんですか?」

ゆきさん、またまた逆質問を始めました。ゆきさんはスタッフに常に考えて行動をしてもらいたいので、逆質問をよく行っています。
「将棋や囲碁の棋士たちは、常に何を考えているか聞いたことがあるかい?」

真優ちゃん
「どうやったら勝てるかじゃないんですか?」

ゆきさん
「それはそうなんだけど、彼らは、相手がどのような手を打つか50も100も先を予想して試合を進めているそうだよ」

真優ちゃん
「それと、初回質問票の質問項目とどう関係があるんですか?」

ゆきさん
「この質問項目も、患者さんがどんな答えをするかによって、どんなアドバイスができるかと考えてあるんだよ」

真優ちゃん
「薬剤服用歴管理指導加算の算定要件を満たすために、質問しているのではないのですか?」

※薬剤服用歴管理指導加算とは、お薬の服用歴や服用状況、体質・アレルギーなどを記録し、それに基づいて必要な指導を行うことによって算定できる点数のこと。
ゆきさん、少し怒った顔をして話し始めました。
「真優ちゃん、僕たちは患者さんのために薬剤師として仕事をしているのであって、定められた算定要件を満たすために仕事しているわけじゃないんだよ。厚生労働省が、薬剤師として必要であろうと思うことを求めているだけなんだからね。」

ゆきさん、感情的になってしまったなと反省しながら、話を続けました。
「当然のことだとは思うんだけど、薬局、薬剤師は患者さんのために動かなければだめだよね」

真優ちゃん
「そうですよね。つまらない事を言って、すいません」

具体的な例を見てみよう!

ゆきさん、来局した患者さんの質問票を見ながら、具体的に話し始めました。
「この方は、慢性的な肩こりで整形外科に来られている患者さんで『現在他にかかっている病気や、健康でお困りのことはありますか?』に『冷え性』と記入してあるでしょ。筋肉の緊張をやわらげる薬と湿布剤が処方されているけど、こんな時は、他に血行を良くする薬、ビタミンEや葛根湯の提案をすると喜ばれます」

真優ちゃん
「確かに、肩こりに葛根湯を飲まれている患者さんは多いですね」

ゆきさん
「しかもこの患者さん、質問票には記入していなかったけど、手肌のあれ、ひどいときにはしもやけで苦しんでいると話していたから、もっと血行を良くする当帰四逆加呉茱萸生姜湯を医師に提案して処方してもらったんだ」

真優ちゃん
「それは患者さん、喜びますよね」

ゆきさん
「こちらの患者さんは『三食取っていない』にチェックしているでしょ。何に気を付けないといけないか、わかるかい?」

真優ちゃん
「規則正しい生活をする様に、指導するのではないんですか」

ゆきさん笑いながら「患者さんは、そんなことは言われなくてもわかってるよ」と答えました。
「食事をしないと薬は飲んではいけないと思って、1日2回しか食事をとらない人で1日3回毎食後の薬を2回しかとらない人がいるんだ。そんな人には、胃を悪くしないためや、飲み忘れ防止のために食後で処方されていることを説明し、食事をとらないときは、胃を悪くしないために多めの水で服用してもらう様に説明するんだよ」
真優ちゃん
「そうだったんですね」

ゆきさん
「当たり前の話をされても、患者さんはうれしくないから、気を付けた方が良いよ。他に緑内障、前立腺肥大患者さんへの注意はわかっていると思うけど、病名にチェックが入っていなくても、併用薬からも判断してあげることも多いんだよ」

真優ちゃん
「確かに、適当に記入している患者さんも多いですからね」

ゆきさん
「そうなんだよ。だから、患者さんが記入したくなる様に、また色んなアドバイスができるように網を張った質問票を作ってあるんだよ」

真優ちゃん
「うちの質問票には愛がつまっているんですね」

「良いこと言ってくれるねー」と嬉しそうにするゆきさんでした。

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです