目次

・研究成果がすぐに薬になるわけではない
・本当は怖い医薬品?
・医薬品ができるまでの道のりは長い
・医薬品ができるまで
 1、基礎研究
 2、非臨床試験
 3、臨床試験(治験)
 4、申請・審査・承認
 5、薬価基準収載
 6、販売・市販後調査
 長い歳月とお金を費やして生まれる医薬品
・まとめ

研究成果がすぐに薬になるわけではない

世の中の製薬会社、大学、各種研究機関の努力により、新しい化合物が発見されたり、今まで知っていた物質が新しい効果を持つことが発見されたり、そんなニュースを目にする機会があると思います。

でも、そこからすぐに新しい医薬品ができるわけではないですよね?
素晴らしい効果を持つ物質が発見されたら、すぐに医薬品にしてしまえばいい!と思うかもしれませんが、なかなかそうはいかないのです。

本当は怖い医薬品?

市販薬の箱や説明書には薬の成分がどの程度含まれているかが記載されています。

病院や薬局でもらう薬であれば、×××錠◯mg、×××カプセル◯mgのように成分の量が薬の名前に記載されています。例に挙げたように、薬1錠に含まれる成分の量はmg単位であることがほとんどなのですが、わずか数mgの成分が、一人の人間の血圧を下げたり、体温を下げたり、痛みを和らげたりするわけです。これって考えてみると恐ろしいことですよね?
薬って怖い・・・、何て危険なものなんだ・・・!と思ってしまうかもしれません。

確かに、「薬はリスク」、「毒を持って毒を制す」というように、危険性が完全に0という薬は存在しません。ですが、私たちが通常口にする薬は、そうした危険性が最小限になるように工夫されているものばかりです。

医薬品ができるまでの道のりは長い

医薬品はただ効果があればいいというわけではありません。

効果がすごいけど、それ以上に副作用が強いなんて薬では使い物になりません。効果や効果が期待できる確率、起こり得る副作用の重さや起こってしまう確率、そう言ったものを総合的に判断した時に、効果>副作用とならないと「薬」とは言えません。

なので、国が医薬品を認可するまでの道のりは非常に長くなっています。様々な研究だけでなく、数多くの試験の積み重ね、それらの結果に対する審査をパスして初めて、医薬品として製造する許可を得ることができるようになっています。

医薬品ができるまで

医薬品として認められるまでにはたくさんのプロセスがあります。その内容について簡単ではありますが、まとめてみます。

1、基礎研究

薬の主成分となる化合物を見つけたり、従来知られている成分に新しい効果が期待できないかなど、様々な研究があります。
植物や動物、微生物などから薬効を持つ物質を探し、抽出したり、化学合成や遺伝子工学の技術により、薬効を持つ新規物質を作りだしたりします。

そうして発見された物質がどのような性質を持つのかについて詳しく研究を行い、医薬品の候補を見つけ出します。

一つの医薬品ができるまでの期間を平均すると、基礎研究にはだいたい2〜3年の年月を要します。

2、非臨床試験

基礎研究の中で発見された物質について、医薬品としての効果や毒性を調べるために、動物や細胞等を使って、様々な試験を行います。

期待される効果について試験を行うのはもちろんの事、毒性の有無や発がん性の有無を調べる試験なども含まれます。体内へどのように吸収され、分布し、代謝を受け、排泄されるか(ADME)についてもここで調べます。ここで、問題が見つかれば、次の臨床試験に進むことはできません。

非臨床試験には3〜5年の歳月がかけられます。

3、臨床試験(治験)

非臨床試験をクリアした薬の候補(治験薬)を実際に人に投与して試験(治検)を行います。

治験は、GCP(Good Clinical Practice)という厚生労働省が定めた基準に従って行われます。また、治験を実施する前には、製薬会社はどのように治験を行うかの計画を作成し、専門家や厚生労働省による審査を受けています。また、治験を実施する病院においても、治験審査委員による審査を受けて、初めて治験は実施可能になります。

こうして行われる臨床試験は3つのステップに分かれています。臨床試験全体を通じて、3〜7年の期間がかかると言われています。

フェーズ1(第一相試験)

少数の健常人を対象とした試験です。主に安全性(副作用)についての試験が行われます。

フェーズ2(第二相試験)

少数の実際の患者さんを対象とした試験です。
安全に効果を発揮するための投与量や服用方法を調べる試験が行われます。

フェーズ3(第三相試験)

多数の患者さんを対象とした試験です。
既存の薬(治療方法)と比較して、効果や安全性について調べる試験が行われます。

4、申請・審査・承認

これまでの試験の結果のデータやそれを基にした使用方法等をまとめ、医薬品として認めてもらうための申請を行います。

提出された資料は、医薬品医療機器総合機構(pmda)で詳細な審査が行われ、細部にわたる照会を受けます。その審査を終えると、専門家で構成される薬事・食品衛生審議会(薬食審)の審査を受け、問題がなければ、ついに医薬品としての製造承認を受けることができます。

申請から審査を終えるまでには1〜2年の歳月を要します。

5、薬価基準収載

日本の場合、医療用医薬品の値段は「薬価」という公定価格になっています。

製造販売の承認を受けた後に、厚生労働省により薬価が決定、薬価基準収載となります。薬価の決め方には、すでに販売している医薬品と比較して決める方式を基本として、画期的なものを評価するルールなどがあります。

ルールを経て決められる薬価には、原料や製造にかかる費用だけでなく、研究開発費や様々な経費などが含まれています。
薬価基準収載は特別な場合を除き、承認後90日以内に行われますが、そのタイミングは年4回(2月、5月、8月、11月)と決まっています。

6、販売・市販後調査

販売開始後も数年にわたって様々な試験を行うことが義務付けられています。

長い歳月とお金を費やして生まれる医薬品

このような過程を経てようやく生まれる医薬品ですが、一つの医薬品ができるまでに必要な年月は10数年、かかる費用はおよそ500億円にもなると言われています。

もちろん、発見されたすべての物質が医薬品になることはできません。途中で失敗したり断念したりする様々な研究の中から、新薬として販売されるものができる確率はわずか3万分の1と言われています。

まとめ

今回は薬が生まれるまでの話をまとめてみました。

薬というものは、単純に効果を発揮するものではなく、副作用など期待する効果以外の作用を持つものです。そのために、厳重な試験を重ねて、使用する薬の量はもちろんの事、対象となる症状や疾患、飲むタイミングや期間、飲んではいけない体質や病気など様々な部分までルールが決められています。そうやってできた薬ですから、医師の診察なしで手に入れることができなかったり、値段が高かったりするのも当然と思ってもらえたでしょうか?

また、繰り返しの試験を受けることからわかるように、薬は正しく使うことが非常に大切です。試験の中で見つけられた方法に従うことで、初めて薬は十分な効果を発揮して、リスクを最小限にとどめることが可能になります。

薬を正しく使うことで、治療の期間を短くすることができますし、副作用による新たな治療が増えるのを防ぐことができます。そのためにも、薬は医療機関での指示に従って使い、わからないことがあればいつでも薬剤師に相談するようにしてくださいね。