目次:パキシル とパキシルCRの違いって?パキシルの基礎知識

・有効成分は「パロキセチン」
・2種類の剤形
 >パキシル錠
 >パキシルCR錠
 >パキシルCR錠が作られた目的
・使用できる病気
 >パキシル錠
 >パキシルCR錠
・治療効果
 >パキシル錠とCR錠との比較
・実際の使い方
 >まずは2-3週間継続する
 >いつまで続ければよいのか?
・他の抗うつ薬との比較
・副作用
 >離脱症状
 >セロトニン症候群
 >その他、頻度の高い副作用
・パキシルの基礎知識まとめ

パキシルの有効成分は「パロキセチン」

パキシルの有効成分は「パロキセチン」です (1)。

脳における、神経伝達物質の一種である「セロトニン」のはたらきを強めるメカニズムを持つ「選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)」の一種です。

パキシルの2種類の剤形

パキシルには、2016年9月現在、次の2つの剤形があります (1, 2)。

●パキシル錠
●パキシルCR錠

パキシル錠

このうち、最初に開発されたのは普通の「パキシル錠」の方です。発売されてからの期間が長いので、こちらにはジェネリック医薬品があります (3)。

パキシルCR錠

これに対して、CR錠の方は普通錠から2年弱遅れて、日本で販売開始されました (1, 2)。CRとは「Controlled-release」の略で、日本語では「放出制御製剤」などと表現します。CR錠には、まだジェネリック医薬品は発売されていません (3)。

これは、錠剤から薬の有効成分が、少しずつ放出されるように加工された製剤です。もともと、放出制御製剤は、薬の効き目を長続きさせることで、例えば1日3回服用の薬を、1日1回で済むようにするなどの目的で作るものです。

しかしパキシルの場合、普通錠もCR錠も1日1回服用の薬です (1, 2)。では、なぜCR錠が作られたのでしょうか?

パキシルCR錠が作られた目的~初期の副作用を起こしにくい~

その目的は、ひとことで言えば、「投与初期の副作用である吐き気などを回避すること」です。

パロキセチンをはじめとしたSSRIは、脳のセロトニンのはたらきを強める作用を持ちますが、この作用は脳以外の部分でも起こります。

腸の細胞にセロトニンが作用すると、吐き気を生じやすいことが知られています (5)。SSRIは、腸においても作用し、こうした副作用を起こします。また、これらの副作用は、一般に新規でSSRIを飲み始めた場合や、薬の量を変えてから、比較的早い段階で生じることが多いものです。そのため、SSRIの投与初期には、吐き気などに特に注意する必要があるのです。

薬の成分が一気に溶け出すと、短時間のうちに大量の成分が血液中に入り込みます。その結果としてセロトニンの効果の増強も一気に起こり、吐き気の副作用が生じやすくなります (6)。

こうしたことを回避するために、錠剤から有効成分が徐々に溶け出す、CR錠が作られたのです。CR錠ならば、一度にたくさんの成分が溶け出すことはないので、成分が吸収されるスピードも穏やかになります。この結果、吐き気などの副作用が減るということです。

実際に、投与初期の吐き気によって、パロキセチンによる治療を続けられなくなる人が一定の割合でいますが、その割合は、普通錠よりCR錠を使用した場合の方が低いことが知られています (6)。

パキシルが使用できる病気

パキシル錠

2016年9月現在で、パキシル錠に認められている効能効果は、以下の通りです (1)。

●うつ病・うつ状態
●パニック障害
●強迫性障害
●社会不安障害
●外傷後ストレス障害

パキシルCR錠

これに対し、パキシルCR錠の効能効果は、「うつ病・うつ状態」だけです (2)。つまり、現状では保険適応上の関係で、パキシル錠の方しか使用できないケースもあるということです。

ともあれ、この点については将来的にパキシルCR錠の効能効果が拡大されて、差がなくなってくる可能性があることを付記しておきます。

パキシルの治療効果

パキシル錠とCR錠との比較

パキシルの普通錠とCR錠では、治療効果がどの程度異なるのでしょうか?

18-65歳のうつ病患者に実際に投与して、それぞれの効果を検証したところ、普通錠とCR錠には大きな効果の違いは認められませんでした (7)。

そのため、CR錠の利点は基本的に開始当初の副作用軽減のみ、となります。つまり、現状パキシル錠を使っていて、十分な効果がある場合では、すでに吐き気などの副作用をもっとも警戒すべきフェーズは過ぎているわけですから、この状態からあえてCR錠に変更する必要性はほとんどないといえるでしょう。

もっとも、こうした結果はあくまでもうつ病に対して使用した場合に限られるものです。そのため、他の病気では普通のパキシル錠の方がよく効くということがあるかもしれませんし、その逆の可能性もあり得ます。

しかし、後程詳しく述べますが、パロキセチンを含めたSSRIは、一度や二度飲んだからといってすぐに効果が現れるような薬ではありません。ある程度の期間、しっかりと継続して初めて効き目が出てくるものです。したがって、薬の成分が溶け出すスピードに多少の違いがあるからといって、パロキセチンの効果が劇的に変化するということは、少なくとも理屈の上では考えにくいと思います。

パキシルの実際の使い方

まずは2-3週間継続する

パキシルは、普通の錠剤もCR錠も、1日1回夕食後に飲むのが普通です (1, 2)。これは、薬の影響で眠くなることがあるからです。

基本的には、まず2-3週間程度飲んでみます。薬があっていて、なおかつその量も十分なら、そのくらいの期間で効果が実感できるはずです。逆にいえば、このくらいの期間はきちんと続けて飲まないと、効果は出ないということです。抗うつ薬は、どれも速効性のある薬ではありません。また、どのくらいの量を使って効果が出るかにも、かなりの個人差があります。

そのため、「パキシルを飲んだけど、効果がない?」と感じたとしても、薬が効かないと判断する前に、①薬を飲んだ期間、②薬の量、のどちらか、あるいは両方が十分かどうかしっかり検討する必要があります。

これらをいずれも満たしたうえで、なおかつ効かない場合には、別の種類の薬に変更することを考えます。ある抗うつ薬が効かなくても、別の抗うつ薬なら効果が出ることもよくありますので、自分にあう薬に当たるまで粘り強く治療を続けることが重要です。

いつまで継続すればよいのか?

抗うつ薬を使っている人からよく受ける質問の1つに、「抗うつ薬をいつまで続ければよいのか?」というものがあります。これについて正確に回答をするなら、「ケースバイケースです」となります。ともあれ、これでは参考にならないでしょうから、一般論を述べれば、次のような方針が取られることが多いです。

まずは症状が落ち着くまで十分な量の抗うつ薬を継続します。その後、少しずつ薬の量を減らしていき、症状がなくなる最低の量を見極めます。この「最低の量」がゼロになる場合もありますし、そうならない場合もあります。

また、抗うつ薬には再発を予防する意味合いもあるので (8)、症状がなくなっていて一見無意味に感じても、薬を継続したほうがよいケースもあります。実際にこうした使い方をするかどうかは、症状があった時期に、その程度がどうだったのか、副作用は出ているか、など多くの観点から判断する必要があるため、一概にはいえません。担当の医療者としっかり相談することを勧めます。

いずれにしても、まずは症状がなくなるまで十分な量の薬を継続するのが先決です。病気にもよりますが、特にうつ病は薬がよく効きますので、焦らず治療を続けていれば、薬を減らせるタイミングはやってくるものです。

パキシルと他の抗うつ薬との比較

ところで、抗うつ薬にはパロキセチン以外にもいろいろな種類がありますが、パロキセチンなどのSSRIは他の抗うつ薬と比較して、何か大きな違いがあるのでしょうか?

結論からいえば、効果の面では大差ないと思ってよいでしょう。一部で、パロキセチンと比較して効果が高いという結果が得られた抗うつ薬もありますが、他の研究結果と総合して判断すれば、薬の種類による明確な優劣はつけがたいといえます (8, 9)。

SSRIと古典的な抗うつ薬の大きな違いは、副作用の種類です。今、「古典的」と書きましたが、パロキセチンなどのSSRIは、抗うつ薬の中では比較的新しいタイプに分類されます。これに対して、もっと古い抗うつ薬は例えば、「三環系」とか「四環系」という名前で呼ばれるものです。ちなみに、「三環」や「四環」とは、これらの抗うつ薬成分の化学構造を見た際、輪っかが3つ、あるいは4つ連なっているように見えることに由来します。

これら三環系や四環系の抗うつ薬は、心臓の機能や眼圧に影響を与える性質があり、こうしたことから一部の持病を持った人には使いにくいという欠点を持っています (10)。

一方、パロキセチンをはじめとしたSSRIは、こうした副作用は少なく、関連する持病を持った人にも使いやすいのが特徴です。この理由は、簡単にまとめるとこういうことです。
パロキセチンが脳の神経伝達物質である「セロトニン」に影響する薬であることは、冒頭で説明しました。しかし、脳には他にもいろいろな種類の伝達物質があります。具体的な名前を出せば、「ノルアドレナリン」や「アセチルコリン」などです。パロキセチンなどのSSRIはこれらのうち、もっぱらセロトニンに影響を与えます。他方、三環系や四環系など古典的な抗うつ薬は、数多くの種類の伝達物質に影響を及ぼします。その結果、セロトニン以外の伝達物質が関係する副作用も起こしてしまうのです。もっとも、古典的な抗うつ薬が多くの伝達物質に影響することは、少なからず薬の効果にも貢献していると考えられるので、そのこと自体が悪いわけではないのですが。

逆にいえば、古典的な抗うつ薬の副作用が、ノルアドレナリンやアセチルコリンなどが原因となっているならば、それらに作用せず純粋にセロトニンだけに働きかける薬を作れば、より安全な薬になるのでは?という発想から生まれたのがSSRIであるともいえます。

ただし、その結果としてSSRIにおいてはセロトニンが関わる、吐き気などの副作用が相対的に目立つようになったのも事実です。つまりまとめれば、古典的な抗うつ薬とパロキセチンとでは、起こしやすい副作用の種類が異なるので、どちらのタイプの副作用がより受け入れやすいかを考慮して、使う薬を選択するというわけです。

では、そのパロキセチンの副作用を、もう少し紹介しましょう。

パキシルの副作用

離脱症状

パロキセチンの副作用としてよく知られているのは、先ほど紹介した吐き気ですが、もう1つ、「離脱症状」も有名です。

これは、服用を始めた後に、急に薬を中止することによる起こる、一連の症状を指します。具体的には、次のような症状が知られています (11)。

●吐き気
●体のだるさ
●頭痛
●不眠
●歩行障害

繰り返しですが、これらはパロキセチンをはじめとしたSSRIを「急に」中止することで起こります。徐々に薬を減らしていけば起こることは稀なので (11)、薬の量を調整するときには注意してください。

セロトニン症候群

もう1つ、パロキセチンなどのSSRIに特徴的な副作用に、「セロトニン症候群」が挙げられます (12)。

セロトニン症候群は、セロトニンの作用が過剰になることで起こる、一連の症状をいいます。SSRIはセロトニンの作用を増強する薬ですので、場合によってはこの副作用を起こします。

具体的な症状は、以下のようなものです (12)。

●混乱する、イライラするなど精神状態の変化
●汗をかく
●手足や目が勝手に動く
●高熱が出る (通常は38℃以上)

この副作用が現れたときは、速やかに薬の量の調整などを行う必要があります。こうした症状が現れた場合は、かかりつけの薬剤師や医師に相談するようにしてください。

治療は、原因と考えられる薬を中止することから始めます (12)。しかし、症状の原因がセロトニン症候群でなかった場合、先ほど紹介した離脱症状を起こすリスクが高まるので、逆に危険です。

そのため、自己判断で薬を中止せず、必ず専門家に意見を聞くことが重要なのです。

ともあれ、セロトニン症候群が起きるのは、セロトニン機能に関係する薬を大量に飲んでいるケースがほとんどです (12)。そのため、少量の薬を継続使用している方は、あまり心配する必要はありません。

その他、頻度の高い副作用

先に紹介した2つの副作用は、発症率は低いですが、起こすと重症化するケースもある、というものです。

これに対して、よくある軽い副作用をいくつか列挙しておきます (1)。

●吐き気
●眠気
●めまい
●頭痛

パキシルの基礎知識まとめ

■パキシルの有効成分は「パロキセチン」である
■脳のシナプスにおけるセロトニンの再取り込みを阻害することで、セロトニンの作用を強める効果をもつ
■普通錠とCR錠があり、CR錠の方が吐き気の副作用を起こしにくい
■効果が出るまでは時間がかかるので、まずは2-3週間継続する必要がある
■効果の面では、普通錠とCR錠に大きな違いはない
■離脱症状を避けるため、量の調整は少しずつ行う

参考文献

(1) パキシル錠 添付文書 グラクソ・スミスクライン株式会社
(2) パキシルCR錠 添付文書 グラクソ・スミスクライン株式会社
(3) 薬価基準点数早見表平成28年4月版 じほう
(4) パキシルCR錠 インタビューフォーム グラクソ・スミスクライン株式会社
(5) Bailey JE, et al. J Psychopharmacol. 1995 Jan;9(2):137-41. PMID: 22298739
(6) Keene MS, et al. Am J Manag Care. 2005 Oct;11(12 Suppl):S362-9. PMID: 16236018
(7) Golden RN, et al. J Clin Psychiatry. 2002 Jul;63(7):577-84. PMID: 12143913
(8) 日本うつ病学会治療ガイドラン 日本うつ病学会治療ガイドラン Ⅱ.うつ病(DSM -5)/ 大うつ病性障害 2016
(9) Purgato M, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Apr 3;(4):CD006531. PMID: 24696195
(10) 龍原徹・澤田康文 ポケット医薬品集2016年版 白文舎
(11) Black K, et al. J Psychiatry Neurosci. 2000 May;25(3):255-61. PMID: 10863885
(12) Ables AZ, et al. Am Fam Physician. 2010 May 1;81(9):1139-42. PMID: 20433130