登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の管理薬剤師&オーナー
顔の見える薬剤師を目指し、日々奮闘中

★兼城 美枝
兼城 美枝(かねしろ みえ) 56歳
高コレステロール薬を服用中
検便で血便が出たことがあり、それ以降大腸を気にしている

★石原 真優
石原 真優(いしはら まひろ) 25歳女性
ゆきさんにあこがれて、ゆきさん薬局で働く薬剤師
素直で明るく、真優ちゃんと呼ばれ、スタッフにかわいがられている

コレステロールの薬、ずっと飲み続けていて良いの?

いつもコレステロールを抑える薬だけをもらいに来る兼城さんがゆきさん薬局に入ってこられました。
全て自分で解決したいようなタイプの方で、薬局でもあまり相談することは少ない方です。
たぶん込みいった相談もないだろうと思い、ゆきさんは後輩の真優ちゃんにお願いすることにしました。
「真優ちゃん、兼城さんのお薬、お渡ししてもらえるかな」

真優ちゃん快く「はーい」と返事をして、早速兼城さんをお呼びしました。
「兼城さん、お薬準備できましたよ」

兼城さん
「はい、ありがとう。おいくらかしら」

真優ちゃん
「いつもと同じ薬です。1480円です。もう、ずっと飲まれている薬なので問題ないですね」

兼城さん
「あら、ずっと飲んでいるのが問題なのよ。いつまで飲み続けるのかしら?」

真優ちゃん
「兼城さん、ご存知の通り、ピタバスタチンは高コレステロールのお薬です。高コレステロールは生活習慣病です。生活習慣が改善されてコレステロール値が安定すれば、先生と相談して止めることもできると思います。しかし、生活習慣も変わらず、薬で安定している患者さんの場合は、止めると元に戻ってしまうかもしれないので、止めるのは難しいと思います」

兼城さん、普段からあまり話す方ではないのですが、この日は近くにいる私を見ながら、話しかけ始めました。
「たまたま区の検診を岩谷先生で受診して、コレステロール値が少し異常範囲にあるということで、処方されるようになったの。だけど、いつも『異常ありませんね』と処方されるだけなのよ。まあ、これでコレステロール値が安定しているので良いのだけど、いつまで飲めばよいのかわからないのよね」

ゆきさん、兼城さんが私に相談したそうなのを感じて、真優ちゃんに「ごめんね、席代わってもらえるかな」と言ってイスに座り、兼城さんに話し始めました。
「うちのスタッフが話した通り、生活習慣病は、生活習慣を変えて初めて薬を止めることの検討を始められます」

兼城さん
「そうよね、簡単に薬をやめない方が良いのはわかったわ」

別の病院でも同じ薬はもらえるの?

兼城さん、相談を続けました。「こんなこと薬局で聞いてよいのかわからないけど、このコレステロールの薬なら、どこの病院でも処方してもらえるの?」

ゆきさん
「せっかく検診で岩谷先生に見つけてもらったのですから、そのまま診てもらうのが良いのではないですか」

兼城さん
「岩谷先生は良い先生で何も問題ないんだけど、ゆきさんで中山内科からの痔の薬ももらっているでしょ。何だか内科を2ヶ所行くのが面倒で、どうしたらよいか悩んでいるのよ」

ゆきさん
「そもそも中山内科には、何で行くようになったのですか?」

兼城さん
「検便で引っかかって。岩谷先生のところには大腸内視鏡がないので中山内科を紹介してもらって行くようになったの。今一番心配しているのは大腸で、今後も年に一度は診てもらうかなと思っているの」

ゆきさん
「便の色は黒くないんでしょ。黒い便だと内臓からの出血の可能性があるので、注意が必要です」

兼城さん
「それは大丈夫みたい。内視鏡でも問題なかったから」

ゆきさん
「それでも、一番気にされているのは大腸なんですね」

兼城さん
「そうなんです」

ゆきさん
「それなら、中山先生にコレステロールの薬ももらうようにしたらいかがですか。中山先生でも処方してもらえるはずですよ」

兼城さん
「でも、岩崎先生に悪くないかしら」

ゆきさん
「全然問題ないですよ。内科と言ってもそれぞれ専門があります。中山先生は消化器が、岩崎先生は呼吸器が専門です。遠慮せずに気になる病気の専門の先生に診てもらった方が良いですよ。先生の方がかえって気を遣って、他で診てもらった方が良いよと言えてないかもしれません」

兼城さん
「そうなの?」

ゆきさん
「そんなもんですよ。岩谷先生に行かなくなったとしても、道ですれ違ったときに、『いかがですか』とあっさり声をかけられるくらいなもんです。しかも病院選びは、専門性だけでなく、お付き合いとかで先生を変える場合もあることを、先生たちは心得ていますよ」

兼城さん
「そうよね、お友達も娘の同級生の親が開業したので、そこっで診てもらうようになったと言っていたわ」

どの病院に行けば良いのか、わからない!

兼城さん
「これも薬剤師さんに聞いてよいのかわからないけど、クリニックでいろんな診療科が書かれているでしょ。でも、きっと得意な診療科目や、本当は専門で無い科目が書いてある気がするのだけど、そんなことは無いの?」

ゆきさん
「先生は一人しかいないはずなのに、内科、小児科までは理解できるけど、皮膚科、整形外科なんてまで書いているところがありますよね」

兼城さん
「皮膚科なんて、大抵泌尿器科も書いてあるじゃない。」

ゆきさん
「本当ですよね。でも、どちらかが専門で、もう一つは専門外みたいですよ。標榜はしているので、勉強はされているとは思いますが、経験値が違うのは明らかだと思います」

兼城さん
「やはり、そうよね」

ゆきさん
「確かに標榜している科目を信じて良いのかは、一般の人はもちろん、私もわかりません。それで、製薬会社のMRさんに聞くようにしています。彼らの仕事では、人間関係がとても重要なので、前職はどこで勤務していて、何を専門としていたかを熟知しています。また、どの勉強会に積極的に出席しているかなどもよく知っています」

※製薬会社 のMRとは?
MRとは、医薬情報担当者とよばれ、製薬会社に所属し、自社のお薬の情報に詳しく、適切なお薬の情報を医師や薬剤師など医療関係者に提供する方。


兼城さん
「それじゃ、受診する前にここで相談すれば教えてもらえるわね」

ゆきさん
「そうして、いただいて構いませんよ。即答できなくても調べることはできると思います」

兼城さん
「今回はとても勉強になったわ。これからもよろしくお願いします」

ゆきさん
「何をおっしゃっているんですか。こちらこそよろしくお願いします」

兼城さんが変えられた後、ゆきさんが真優ちゃんに席を譲ってもらったお礼を言おうと思ったところ、逆に真優ちゃんから声をかけられました。
「ゆき先生、兼城さんの心のドアを開けることができるなんて、すごいですね」

「そうか」とうれしそうに照れ笑いするゆきさんでした。

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです