登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の薬剤師
優しくて、おだやかな性格

★伊藤夫婦
伊藤 正(いとう ただし)77歳 男性
前立腺肥大、高血圧、高脂血症
冗談が好きで面倒見がいい

伊藤 みよ子(いとう みよこ)74歳 女性
胃腸薬、整腸剤を服用
特に体調に問題はなく、元気で明るい性格

ジェネリックは、先発品と同じ?

ゆきさんが将来、あんな夫婦でありたいなとあこがれている、伊藤さんご夫婦が仲良く薬局に入ってこられました。

いつものように、にこやかに挨拶されながら入ってこられるので、薬局の雰囲気も自然と明るくなります。

ゆきさんが「はい、伊藤さん。いつもの高血圧とコレステロールを下げるお薬ね」と言ってお薬をお渡しするときに、高血圧薬に新しくジェネリックが出ていたのに気がつきました。

伊藤さんは、最初にお会いしたときには、「よくわからないから、ジェネリック希望ではない」と、初回質問票に記入していました。ゆきさん薬局では、もちろんその質問票の回答をもとに調剤しています。

しかし、患者さんとの距離が近くなっていくと、ジェネリック変更希望の回答は限りなく「薬局におまかせ」と変化していきます。伊藤さんともかなり仲良くなっているので、久しぶりにジェネリック変更希望の確認をしました。

ゆきさん
「伊藤さん、ジェネリック医薬品をご存知でしたよね」

伊藤さん
「えー知ってます。でも同じ薬なの?」

ゆきさん
「ジェネリックは、メーカー違いの安い薬のことなので、基本的に同じ薬です」

伊藤さん
「その安いというのが、心配なんだよね」

ゆきさん
「国が認めている薬なので、問題があったら大変ですよ」

ゆきさんはジェネリックを利用するの?

伊藤さん
「まあ、そりゃそうだと思うけど、何となく心配で。ところで、ゆきさんはジェネリックを利用するの?」

ゆきさん
「私は基本的にジェネリックを利用しますよ。ジェネリックは後出しじゃんけんをしていると思うんです。信頼性が低いように言う人もいますが、後から作られているので、味とか飲みやすさとか工夫されていると思います」

伊藤さん
「基本的にということは、利用しない事もあるの?」

ゆきさん
「母の薬なんかは、最初ジェネリックにしませんでした。母は神経質で、薬が変わると怖がって飲まなくなるんです。同じ薬だと言っても、ダメなんです。今は一包化にしているので、ジェネリックにして普通に飲んでいます」

伊藤さん
「なるほど」

ゆきさん
「保湿剤のヒルドイドローションの場合は、先発品とジェネリックで使い分けています。同じ薬なのに、先発品は乳液状で、ジェネリックは化粧水状なんです。だから夏場はジェネリック、冬場は先発品にしています。他に、子供には、先発品、ジェネリックにこだわらず、喜んで飲んでくれる方を選んでいました」

伊藤さん「いずれにしても、僕はゆきさんにまかせるよ」と話し、奥様も「私もよくわからないから、まかせるわ」と続きました。

ゆきさん
「伊藤さんのところは、仲が良いですね!別々の判断をする夫婦もおられるから」と笑顔で、正直な気持ちを口にしました。

薬局でジェネリックが勧められるのはなぜ?

しばらくして伊藤さん、思い出したようにジェネリックの話を再開しました。
「私はゆきさんにしか処方箋を持ってこないからわからないけど、知り合いは薬局でうるさくジェネリックを勧められると言っていたよ。何でなの?」

ゆきさん
「ジェネリックの方が安くなるので、患者さんに喜んでもらえると思って紹介しいるんじゃないですか」

伊藤さん
「本当?結構、強引にジェネリックに変更する薬局もあると聞いているけど、それだけの理由で、そんなことまでするの?」

ゆきさん「さすが伊藤さん、お見通しですね」と笑いながら話を続けました。
「伊藤さん、国がジェネリックを推進しているのはご存知ですか?」

伊藤さん
「医療費が膨れ上がっているから、ジェネリックを使うように政府が言っているのでしょ」

ゆきさん
「その通り。しかも、患者さんにアピールしているだけで無く、薬局にもプレッシャーをかけているんです」

伊藤さん
「へー、どんなプレッシャーをかけるの?」

ゆきさん
「薬の値段が安くなれば、薬局の売上も下がり儲からないように感じるでしょ。ところが薬局でジェネリックの利用率が低いとペナルティがあるんです。正確にはペナルティでは無く、ジェネリック利用率が高い薬局へのご褒美になっているのですが、医療費抑制で調剤報酬がずっと下がってきているので、そのご褒美をもらわないと今まで通りの報酬を得られないんです。だからペナルティと言っているのです」

伊藤さん
「そうか、だからそんなに積極的にジェネリック変更を勧める薬局があるんだ」

ゆきさん
「そうなんです。だから、やみくもにジェネリックを勧める薬局も出るんです」

伊藤さん
「ゆきさん、真摯に向き合ってジェネリック変更に取り組んでいるのだから、こんな話もきちんと患者さんに説明した方が良いよ」
ゆきさん
「伊藤さん、うれしいこと言ってくれますね。でもね、ジェネリックよりも大事な説明がたくさんあるから、そればかりに気を使っていられないんです」

伊藤さん
「そりゃ、そうだ」

ゆきさん
「患者さんとの信頼関係も出来て、ゆっくりと話せる時には説明するようにしているんですけどね」

伊藤さん
「うちの近くに、ゆきさん薬局があって良かったよ」

ゆきさん
「はい、今日の講義は終わり。じゃあ、今までの薬と同じですが、今日は新しくジェネリックにしておきました。きちんと飲んでくださいね」

ゆきさん、うれしそうに出て行かれる伊藤さん夫婦を見送ると、次の患者さんの準備にかかり始めました。

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです