1. 当コラムに掲載されている情報については、原則として薬剤師、医師その他の医療及び健康管理関連の資格を持った方(以下「薬剤師等」といいます)による助言、評価等を掲載しております。当社自身でも掲載内容に不適切な表記がないか、細心の注意を払って確認をしておりますが、医療及び健康管理上の事由など、その内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではありません。あくまで、読者皆様ご自身のご判断にてお読み頂き、ご参考にして頂ければと存じます。
2. 当コラムにおける一般医薬品に関する情報は、読者、消費者の方々に適切な商品選択をして頂くことを目的に、薬剤師等に対して当社より課題、テーマを提示の上、執筆を依頼しております。主眼は、商品より成分であり、特定の商品に関する執筆を依頼しているわけではなく、また特定の医薬品製造事業者等(以下「メーカー等」といいます)からの販売又は紹介に関する対価が発生するものではありません。
3. 当コラムにおける情報は、執筆時点の情報であり、掲載後の状況により、内容の変更が生じる場合があります。当社は、掲載されている情報を予告なしに変更、更新する場合があります。
4. 前各項に関する事項により読者の皆様に生じた何らかの損失、損害等について、当社は、一切の責任を負うものではありません。
全部見る
目次:ベルソムラ®錠②副作用と飲み合わせなどの注意点
■ベルソムラの副作用について
・傾眠・眠気
・頭痛・疲労感
・悪夢・異常な夢
■ベルソムラの他の薬との飲み合わせ(相互作用)
・ベルソムラの他の薬との飲み合わせ(相互作用)
・一緒に服用する際に注意が必要な薬(併用注意)
■ベルソムラ保管上の注意
■まとめ
■参考
ベルソムラの副作用について
ベルソムラ®の代表的な副作用として、傾眠、頭痛や疲労感、悪夢が挙げられます。他にも副作用は存在しますが、代表的なこの3種類について簡単にまとめます。
傾眠・眠気
傾眠や眠気はベルソムラ®に限らず睡眠薬全般に見られる副作用です。薬の作用からして当然のものですが、問題となるのはその持続時間です。ベルソムラ®は翌朝にはその効果が消失するように開発されていますが、薬の効き方には個人差があります。服用翌日にも眠気が残るようであれば、日常作業に危険な影響を及ぼす可能性があるので、医師や薬剤師に相談するようにしてください。
頭痛・疲労感
これも多くの睡眠薬で見られる副作用です。軽度であることが多いため様子を見ているうちに改善することもあります。ですが、症状がひどかったり、持続したりするようであれば医師や薬剤師に相談するようにしてください。
悪夢・異常な夢
悪夢については、他の睡眠薬でも見られることがありますが、ベルソムラ®の特徴的な副作用と言えます。これはベルソムラ®の作用の特徴から起こるものではないかと考えられています。
人間はレム睡眠中に夢を見やすいと言われています。ベルソムラ®錠には「ノンレム睡眠を減らすが、レム睡眠は短くしない」という特徴があるため、夢を見やすくなってしまうのではないかと言われています。
個人差もありますが、悪夢を繰り返し辛いようであれば無理をせず医師や薬剤師に相談するようにしてください。
ベルソムラの他の薬との飲み合わせ(相互作用)
ベルソムラ®の有効成分であるスボレキサントは肝臓や小腸に存在する薬物代謝酵素シトクロムP450(CYtochrome P450:CYP450)により代謝を受けます。CYP450の3Aというタイプ(CYP3A)による代謝を受けることで、スボレキサントは薬効を失い、排泄されていきます。ですが、同じようにCYP3Aにより代謝される薬を一緒に服用すると、CYP3Aが足りなくなってしまって、スボレキサントが十分に代謝されなくなってしまうことがあります。また、薬の中には体の中でCYP3Aが作られるのを邪魔するものもあります。こういった薬の影響を受けると、スボレキサントの血中濃度が高くなりすぎて、副作用を出してしまう危険性が高まるというわけです。
一緒に飲むことができない薬(併用禁忌)
以下の薬はCYP3Aの働きを強く阻害するため、ベルソムラ®と一緒に飲むべきではないとされています。
・イトリゾール®など(イトラコナゾール)
・クラリス®/クラリシッド®など(クラリスロマイシン)
・ノービア®(リトナビル)
・インビラーゼ®(サキナビル)
・ビラセプト®(ネルフィナビル)
・クリキシバン®(インジナビル)
・テラビック®(テラプレビル)
・ブイフェンド®(ボリコナゾール)
これらの薬を服用中は、ベルソムラ服用前に必ず医師や薬剤師に相談するようにしてください。
一緒に服用する際に注意が必要な薬(併用注意)
併用を禁止はされていませんが、副作用が出やすくなったり、効果が十分発揮されない可能性があるため、一緒に飲む際に注意が必要な薬も多く存在します。そのため、お薬手帳等を活用して、医師や薬剤師に服用している薬を把握してもらうことが大切になります。
中枢神経を抑制する薬
当然と言えば当然のことですが、ベルソムラ®自体が中枢神経を抑制する効果を持っているわけですから、同じような作用を持つ薬と一緒に服用する際には注意が必要です。必要に応じて一緒に服用する可能性は十分にある飲み合わせですが、他の病院で飲んでいる場合等はそのことを医師に伝え、その上で一緒に飲むべきかどうかを判断してもらうことが大切です。ちなみに、アルコールにも中枢神経を抑制する作用があります。飲酒についても医師や薬剤師に伝えるようにしてください。
CYP3Aを阻害する薬
以下の薬はCYP3Aを阻害することが知られていますが、併用禁忌であげた薬ほど阻害する力は強くありません。ですが、一緒に飲む際はベルソムラ®の量を10mgにするかどうかを検討する必要があります。
・ヘルベッサー®など(ジルチアゼム)
・ワソラン®など(ベラパミル)
・ジフルカン®など(フルコナゾール)
ちなみに、CYP3Aを阻害する薬剤は他にも多数存在しています。ですから、併用している薬剤を医師や薬剤師にしっかり確認してもらうことが大切です。
今すぐ飲み合わせを確認するには?
EPARKお薬手帳 [PR]
今すぐ飲み合わせを確認したい方は、EPARKお薬手帳アプリがおすすめ。
病院で処方されたまたはご自身で購入した、今服用しているお薬と市販薬のチェックが可能!
他にもお薬と食品の飲み合わせもチェックできます。
アプリに今まで服用していたお薬や服用中のお薬をまとめて登録しておくことで、いつも簡単に飲み合わせチェックができるため、登録しておきましょう
\ 30秒で完了! /
さっそくチェックする
CYP3Aを強く誘導する薬
以下の薬は体内でCYP3Aを作るように促す(誘導)効果があります。一緒に飲むことでベルソムラ®の代謝を進めてしまい、効果を発揮しにくくしてしまう可能性があるため、注意が必要です。
・アプテシン®など(リファンピシン)
・テグレトール®など(カルバマゼピン)
・アレビアチン®など(フェニトイン)
ちなみに、CYP3Aを誘導する薬剤も他に多く存在していますから、繰り返し述べているように、併用している薬剤を医師や薬剤師にしっかり確認してもらうことが大切です。
ジゴキシン
最後にジゴキシン。いわゆる強心剤として使用されている薬です。これまでのものとは異なり、ベルソムラ®とジゴキシンを一緒に服用することで、ジゴキシンの血中濃度が上昇してしまい、副作用のリスクを高めてしまう可能性があります。これはベルソムラ®の有効成分であるスボレキサントがp糖蛋白というジゴキシンの排出に関わるタンパク質の働きを阻害してしまうためです。
ベルソムラ保管上の注意
ベルソムラ®錠は光に弱いため、包装から出した状態での保管は適していません。ですから、服用する直前にPTPシートから取り出すようにしてください。
同様の理由により、薬局で薬を服用時点ごとにまとめて包装し直す「一包化」や錠剤を半分に割ったり粉砕して調剤を行うことができない薬となっています。
まとめ
2回に分けてまとめたベルソムラ®錠ですが、オレキシン受容体拮抗薬という新しい作用により、これまでの睡眠薬とは異なる特徴を持っています。これまでの薬と比較してどちらが優れているというわけではなく、それぞれの特徴を生かして使い分けていくことが大事です。その中で、ベルソムラ®錠は大きな選択肢の一つなのではないかなと思います。
参考
1)ベルソムラ錠 インタビューフォーム MSD株式会社
2)ベルソムラ錠添付文書 MSD株式会社