前回のコラムでは、インドの栄養不良についてお伝えしました。今回はその正反対とも言える生活習慣病についてお話ししたいと思います。

インドで生活習慣病が激増

急激な経済成長の裏で、生活水準の向上により肥満や生活習慣病の増加が深刻な問題となっているインド。
WHOの調査(2012年)によると、インドにおける死因の第一位は心疾患、第二位慢性閉塞性肺疾患、第三位脳血管疾患と報告されており、上位一位と三位が生活習慣病による死因で占められています。

インドで肥満と見なされる成人の割合は2002年には14%でしたが、2011年時点で19%、つまりほぼ5人に1人が肥満と言われているそうです。

成人の糖尿病罹患率は7.1%、平均的な発症年齢は42.5歳と、日本や欧州と比較すると10年程発症年齢が早く、親や稼ぎ手世代として最も重要な年代に発症しています。また、毎年約270万人が心臓病により死亡しており、2030年には150万人増の420万人を超える事が予想されています。

なぜ生活習慣病が急増しているのか?

生活水準向上による生活の変化

一見ヘルシーな食生活を送っていそうな菜食主義者(ベジタリアン)の割合も多いインドで、なぜこんなにも生活習慣病が急増しているのでしょうか。

大きく関係しているのは、下記のような富裕層と中間層の生活水準向上による生活の変化が考えられます。

・油を大量に使う料理が多い。ファストフードなども進出している。
・富裕層ではメイドを雇っている家が多く、あまり家事をしない。
・リクシャーやタクシーを使用することが多く、運動不足になりがち。

前回のコラムでは農村の貧困層家庭の日常の食事を紹介しましたが、中間層以上の家庭では鶏肉を使用したり、油やギー(バターのようなもの)を大量に使う料理が多くなります。また、食事の間に食べる屋台のスナックにも揚げた物が多く、売店では安価なチョコレートやスナック菓子、ビスケット等が簡単に手に入ります。ブッダガヤでは小さな子どもがスナック菓子をボリボリ食べている様子も良く見かけるので、心配になってしまいます…。

※チャイに砂糖を入れている少年。
また、インドのスイーツは基本的にシロップ漬けになっていたり、ものすごく甘いものが多く、甘いもの好きな私でも一口でギブアップする程。(もちろんこれは私の趣向も入っているので、美味しいと言う人もいますよ。)

※インドのスイーツ
1日に何度か飲むのが習慣のチャイ(ミルクティー)も、日本では考えられないくらいの砂糖が入っています。インドで飲むと、それが美味しく感じるから不思議なのですが…。

少ない運動量

そして運動量の少なさも、生活習慣病増加の原因のひとつです。

インドの気候は地域と季節によって大きく異なりますが、ブッダガヤでは5月頃気温が50℃近くなります。その時期は、もう外に出るとずっとドライヤーの風を全身に浴びている気分になりますし、何もする気が起きなくなります。

このような猛暑によるものと、生活水準向上によりバイクやリクシャー、車を利用する人が増えた事で、歩く時間や体を動かす時間が少なくなっているのは事実だと思います。

ちなみにブッダガヤではジムが流行っていて、大学生くらいの子なんかがよく通っています。ジムと言っても、ただの部屋にダンベルや腹筋マシンなどいくつか筋トレ用のマシンが置いてあるだけなのですが。こうしたジムに通っている子はムキムキボディを手に入れていますが、将来お腹が出てこない子はごく僅かだと思います。

お腹いっぱいまで食べさせるのがおもてなし

インドのおもてなし文化

これは昔からある慣習なので生活習慣病の急増とは別の話しになりますが、インドでは満腹まで食べさせるのが「おもてなし」なんだなと感じる事が多いです。

※ある日の友人宅での食事
人の家に食事に呼ばれたときは、ライスもチャパティもカレーも何もかも、なくなった傍から足されていきます。「もう大丈夫です!(本当にお腹いっぱい!)」と言っても、「あと少しだけ食べて!」と入れられて限界まで食べるというのがよくあるパターン。
おもてなしの気持ちが嬉しいので、つい断り切れず食べてしまうんですよね…。

インドの定食屋さんターリーでも…

インドの定食のような位置づけのターリーでは、内容は店によって違いますが、ご飯やチャパティと数種類のおかずがついてきます。

※ターリーでの食事
ご飯だけでなくおかず等も全てお代わり自由の事が多く、何も言わなくてもなくなった傍から店員さんがどんどん足していってくれます。安くてお腹いっぱい食べられるので、働き盛りの若い人には最高ですね。日本円にして100円前後で食べられるターリー屋さんがローカルには沢山あります。

インド豆知識:認知症発生率が少ないのは、ターメリックのおかげ

最後に少し話しが逸れますが、インドは認知症の発症率が米国の4分の1という調査結果が出ています。これはターメリック(ウコン)に含まれるクルクミンという成分によるものと言われており、人では証明されていないものの、マウスを用いた実験では既にその効果が確認されています。

インド人が毎日食べるカレーにはターメリックが含まれているので、これが認知症発症率の低さに繋がっていると考えられているのです。日本でも最近は、ウコンはお酒を飲む人だけでなく、認知症を心配する高齢者の間でも注目されています。

最後に

私はインドに通い始めてもうすぐ9年になりますが、当初より付き合いのあるインド人の友人も、年齢を重ねるごとにどんどんお腹が出て太ってきている人が実際に多いです。

友人のシャツのボタンがパツパツになっているのを見ると、何とも言えない気持ちに…笑。インドでも将来的に特定保健指導のような栄養・運動指導や学校での栄養教育が盛んになってくるかもしれませんね。

それでは、次回はインドのアルコール事情についてお伝えします。