通販や健康番組でよくみかける光景

通販やCMなんかで「このサプリメントを飲めば、○○に効くとされています!」と病気に関する効果が宣伝されているのをよく見かけます。悪質なものでは、「抗酸化作用があり、毎日飲めばがんに効く!」などと謳い、高額な治療費で頑張っているがん患者さんからさらにお金をせしめようとする企業さえあります。

私たち医師は、実はちまたに流れている「この病気には●●が効く!」という情報をあまり真剣に受け止めていません。その多くが、医学的にさしたる影響はないものだと思っているからです。もちろん、確実に効果があるものもありますが、大部分が眉唾モノかな・・・というのが正直なところです。
その昔、ある民放の健康番組で、「毎日野菜ジュースを飲んだら冷え症が治るか?」という検証実験をおこなっていました。患者さん10人を5人ずつに分けて、それぞれ野菜ジュースとただの水を毎日飲んでもらったのです。野菜ジュースを飲んでいる人5人のうち2人で体温がやや上がりました。水を飲んでいた人は5人のうち1人しか体温が上がりませんでした。そこで番組はこう言ったのです。「野菜ジュースを飲んでいる方が、体温が上がる効果がある」と。毎日野菜ジュースを飲むことで、冷え症が治ると言わんばかりの結論を導きだしたのです。

良識のある人ならば、この比較にはまったく意味がないことがおわかりでしょう。明らかに、これは「誤差」の範疇です。本当に統計学的に差があるものだと認めるためには、500人ずつくらいに分けてしっかり計算しなければいけません。5人ずつでは何の役にも立たないのです。

通販、健康番組で紹介されている商品の多くは、ヒトに対して大規模な検証をおこなっていないものがほとんどで、明確に効果があると考えられる商品はほとんどないと言っても過言はありません。フタを開けてみたら、マウス5匹ずつで検討したなんとも信頼性の低い健康商品ということも珍しくありません。

少しは効くかもしれないが…

研究者がしっかり実績を出した健康商品で、統計学的にもバッチリ効果があります!と謳われたものであったとしても、その効果については疑問符がつきます。なぜでしょう?

これは、消費者が期待しているインパクトよりも圧倒的に効果が低いからです。たとえば、「がんに効果がある」というのは、身体にあるがんの病巣が縮小したり消えたりすることを患者さんは期待しています。しかし、一口に効果があると言っても、試験管の中でがん細胞の元気がちょっぴりなくなった程度の影響しかなく、ヒトという大きな個体にはほぼ効果がない健康商品もたくさんあります。その広告は、決してウソではないのですが、販売者側と消費者側の認識のギャップがかなり大きく、実際の効果は期待する効果とかけ離れている場合があるのです。

それをあたかも「あなたのがんに効きますよ」と誇大広告をするのは、私はモラルに反するのではないかと考えています。藁にもすがりたい思いで闘病している患者さんの気持ちを利用している商売を目にすると、何とも言えない気分になります。
特に、ほぼ無料で手に入る水を、特別な水だと謳って高額で売りさばくのは、私は犯罪だとすら思っています。健康的な成分や元素が入っていたとしても、そのほとんどはH2Oです。がんに劇的に効果をもたらすほどのパワーがないことは、ちょっと医学をかじった人間であれば直感的に分かるはずです。

医師は無理に止めないことが多い

「○○に効く!」という謳い文句を見て、それを使い続けている患者さんはたくさんいます。しかし、実臨床に悪影響がなければ、医師はそれを止めません。その理由は、現在の治療の大勢に影響がなければ、サプリメントの類は飲んでもらって構わないと考えている医師が多いこと。また、医学や統計学のことを一から患者さんに勉強してもらうわけにはいかないので、「この健康商品は大規模な検証がなされていないから・・・」などと患者さんを諭す時間がないからです。

お酒やたばこについては有害になる可能性があるので止めますが、健康商品については多くの場合、医師が積極的には介入しません。

そのため、患者さん自身が「本当に効果があると思いますか?」と主治医に腹を割って聞くのが一番効果的ではないかと考えます。ただ、「効果がないと思います」と私見を述べても、多くの患者さんはその民間療法を継続しているように思います。
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