登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の管理薬剤師&オーナー
顔の見える薬剤師を目指し、日々奮闘中

★相澤 公子
相澤 公子(あいざわ きみこ) 47歳
最近更年期障害で困っている
仕事もしていて、さばさばとした性格

ほてりは取れたけど、多汗症が激しくて!

更年期障害で悩んでいる相澤さんが、ゆきさん薬局を訪れました。
ゆきさん早速お薬の準備をして、電子薬歴と処方箋を見ながら、相澤さんに話しかけました。

「あれ、今日は桂枝茯苓丸では無いのですね。ずっと飲んでいたから、桂枝茯苓丸で症状が落ち着いているのだと思っていました」

相澤さん
「本多レディースクリニックで処方してもらっていた桂枝茯苓丸を飲んでほてりは取れてきたんですけど、多汗症が治らないんです。それでその相談をしたら、このパッチにしてみようということになりました」

ゆきさん
「そうだったんですね」

相澤さん
「この薬は飲むのではないようだけど、どう使うんですか?」

ゆきさん
「今日の薬は、メノエイドコンビパッチという貼り薬です。週に2回、3~4日に1回貼り替えをします。下腹部に貼ってほしいのですが、かぶれるといけないので、場所を少しずつ変えてください」

相澤さん
「今までの漢方とはどう違うのですか?」

ゆきさん
「漢方では血液の循環が悪い状態をお血と言います。桂枝茯苓丸は、そのお血を取り除くことによって、熱のバランスやホルモンのバランスを整えていきます。今日の薬は、いわゆる女性ホルモン剤です。ホルモン補充療法と言って、女性ホルモンを補充することによって、更年期障害の症状を改善していきます」

相澤さん
「どっちの方が効くのですか?」

ゆきさん
「漢方には、患者さん一人一人の心と体の状態をあらわした『症』というものがあります。この『症』に当てはまると本当に良い効果を得られます。一方ホルモン補充療法は、急速に低下したホルモンを直接補充するので、より効果は確実だと言えます。しかし、血栓症や乳がんが起きることがあるという怖い副作用があるので、慎重に利用します」

相澤さん「なるほど、安全な方を先生は先に処方してたのね。じゃあ、これを試してみるわ」と言って帰られました。

汗ではがれるのだけど、下腹部で無いとだめ?

数日後、相澤さんが相談に訪れました。
「私、多汗症で困っているでしょ。この薬を下腹部に貼ると汗ではがれてしまうの。下腹部でなくても大丈夫ですか?」

ゆきさん
「それはお困りでしょう。汗対策のご質問ですが、ごめんなさい、今はっきりとしたお答えが出来ないので、確認した上でご連絡させてください。それで、貼ってみて調子はいかがですか?」

相澤さん
「何だか、調子良いみたい。もう少し続けてみたいので、良い方法を教えて!」

ゆきさん「そうですか、調子が良くなったのは良かったです。継続してもらいたいので、すぐに調べてみます」と言って、相澤さんが帰られるのを見送ると、早速製薬メーカーの学術に確認しました。

※製薬メーカーの学術とは?
メーカーには医療機関、薬局からの質問に対応する部署があり、その対応の多くは学術が担っています

相澤さん、翌日に薬局に来られました。
「ゆき先生、何か良い方法ありましたか?」

ゆきさん
「ええ、色々わかりましたよ。まずね、貼ってはいけない所があります。乳房とか、胸の近くには貼らないでください」

相澤さん
「えー、何でですか?」

ゆきさん
「昨日お話したとおり、ホルモン剤の副作用に乳がんがあります。乳房に近いと、乳腺からの吸収で乳がんの可能性が上がるかも知れないんです。だから、胸には貼らないでください」

相澤さん
「それは、怖いわね。わかったわ」

ゆきさん
「それで汗対策なんですが、結果から言いますと、臀部に貼って様子を見てみるのが良いと思います。他社の類似薬でのデータで、臀部に貼って吸収が落ちたという報告もある様ですが、メノエイドコンビパッチの会社では、下腹部以外のデータは取っていないので、それ以上のお答えは出来ないそうです。でも、吸収が落ちたとしても、それほど激しく落ちるとも考えにくいし、貼らない、よりは貼った方が良いので臀部に貼るのがお勧めだと思います」

相澤さん「まあ、試してみるしかなさそうね。でも胸に貼ってはいけない事を教えてもらっただけでも助かるわ」と言って帰られました。

1週間貼りっぱなしでも、調子が良いのだけど

薬がなくなるであろう1ヵ月後に、相澤さんが来られました。
「ゆき先生の言われるとおり、臀部に貼ってみたけど、調子良いから大丈夫みたい。汗の量も減ってきた気がするわ」

ゆきさん、嬉しそうに答えました。
「それは良かったですね。薬剤師として、薬が効いて調子良くなったと言われるのは、一番うれしいことです」

相澤さん
「でもね、3、4日に1回の貼り替えだけど、7日間貼りっぱなしでも調子が良かったの。この薬、何日間効くのかしら?」

ゆきさん、すぐに調べてお知らせしました。
「メノエイドコンビパッチは、4日間はほぼ安定して血液中の医薬品の濃度を保ちますが、その後急激に血液中の医薬品濃度が下がる様です。つまり4日間しか、薬は有効で無いということになります。7日間貼りっぱなしで調子が良かった、効いていたということであれば、5日目から7日目は薬が無くても大丈夫だったということになります」

相澤さん
「やはり、4日間しか効かないということね」

ゆきさん
「そうですね。7日間貼っていたということであれば、3日間は薬を利用していなかったことになります」

相澤さん
「それなら、薬を止めてもよいかしら?」

ゆきさん
「自覚症状がなくなっているのであれば、止めても良いかもしれません」

相澤さん
「そもそも、この薬はいつまで続けるものなの?」

ゆきさん
「更年期障害によって起こるほてり、のぼせ、多汗などを改善する薬なので、自覚症状が治まれば止めているようです。しかも、お薬を開始するときにお話しした副作用のリスクがあるので、5年で中止するという先生が多い様です」

相澤さん
「ゆき先生、色々調べていただいてありがとうございます。本当に助かります」

「私の方こそ、色々と質問していただいたので、良い勉強になりました。ありがとうございます」とうれしそうに返事するゆきさんでした。



※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
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