1.空気感染と飛沫感染の違い?

感染症はウイルスや細菌などの病原体に感染することによって発症する病気のこと。ウイルスや細菌には多くの種類があり、様々な感染経路を持ちます。そのなかで、今世界を震撼させている新型コロナウイルスは「飛沫感染」をする可能性が高いと考えられています。

感染症を予防するには、病原体がどのような経路で感染するか知っておくことが大切です。まずは、一般的に混同されがちな「飛沫感染」と「空気感染」の違いについて詳しく見てみましょう。

1-1. 空気感染とは?

空気感染とは、空気中を漂う病原体を吸い込むことによって生じる感染経路のことです。ウイルスや細菌などの病原体は、感染者の咳やくしゃみの「しぶき(飛沫)」と共に体外に排出されます。つまり、病原体の周りを唾液や鼻水、痰などの水分が包むようにして排出されるのです。しぶきには水分の重みがあるため、通常は排出されるとすぐに内部の病原体と共に床や机などに落ちていきます。

しかし、病原体の中には、しぶきに含まれる水分が蒸発するとそのまま空気中を漂うものがあります。しかも感染力を保ったまま空気中をプカプカ浮いている状態。このタイプの病原体は同じ空間にいると感染者から遠い場所にいても感染してしまう危険があるのです。

 

<空気感染するのはどんな感染症?>

空気感染する感染症には、次のようなものが挙げられます。

・はしか
・水ぼうそう
・結核

1-2. 飛沫感染とは?

飛沫感染とは、感染症患者の咳やくしゃみの「しぶき(飛沫)」を直接吸い込むことによって生じる感染経路のことです。

上でも述べた通り、病原体はヒトの体内に侵入すると増殖を繰り返し、鼻水や唾液、痰、便などと共に体外へ排出されるようになります。咳やくしゃみをすると、病原体が含まれたそれらのしぶきがあたりに飛び散ることに…。周りにいる人が病原体入りにしぶきを吸い込んでしまうと感染が拡がってしまうのです。

しぶきは目に見えない細かさで思いのほか遠くまで飛んでいきます。くしゃみをするとしぶきは半径2mの範囲にまで飛び散るとの報告もあるほど。感染症は感染者のすぐ近くにいなければうつらないと誤解している方もいますが、すこし離れた場所にいても飛沫感染する可能性は少なくないのです。

 

<飛沫感染するのはどんな感染症?>

飛沫感染する感染症には、次のようなものが挙げられます。

・インフルエンザ
・風疹
・おたふくかぜ
・百日咳
・マイコプラズマ
・風邪(ライノウイルス、アデノウイルスなど)
・RSウイルス

1-3. 空気感染と飛沫感染の違いまとめ

空気感染と飛沫感染は元々同じく「しぶき(飛沫)」に含まれる病原体によって引き起こされます。空気感染は、しぶきの水分が蒸発して空気中をプカプカ浮いた病原体を吸い込むことによるもの。一方、飛沫感染はしぶきそのものが口や鼻の中に入り込んでしまうことによるものです。

どちらも同じような感染の仕方に思えるかもしれません。しかし、空気感染を引き起こす病原体は、わずか5μm以下の非常に小さな「病原体そのもの」として空気中を漂います。このため、近くにいない人、たまたま通りかかった人にも感染してしまうこともあるため、恐ろしい感染経路です。

対して飛沫感染は、咳やくしゃみなどをしたときに少なくとも半径2m以内にいる人にのみ感染を拡げる可能性を持ちます。不特定多数の人に感染させてしまうリスクは空気感染の方がはるかに高いと言ってよいでしょう。

2.感染を防ぐための対策方法は?

空気感染と飛沫感染が別物であることがわかりました。では、それぞれの感染を防ぐにはどのような対策を講じればよいのか詳しく見てみましょう。

 

2-1. 手洗い

感染対策の基本は手洗い!…と言いたいところですが、実のところ空気感染はどんなに手洗いを徹底しても予防することはできません。空気感染は手に付着した病原体を吸い込むのではなく、空気中を漂う病原体を吸い込むためです。同じように、飛沫感染も感染者のしぶきが鼻や口から直接入り込むことで生じるため手洗いをしても予防することはできません。

しかし、多くの感染症の感染経路となる「接触感染」(手に付着した病原体を体内に取り込んでしまうことで生じる感染経路)を防ぐ効果は高いため、感染症を防ぐには手洗いはマストです。

 

2-2. 消毒

感染対策として多くの方が行う消毒も空気感染や飛沫感染を予防することはできません。理由は手洗いと同じく、空気感染と飛沫感染は「手」や「物」を介した感染経路ではないからです。一方で、やはり「接触感染」を予防する効果は高いため、感染症を予防するには必須の対策と言えます。

なお、消毒と言えばアルコールを使用する方が多いですが、病原体のタイプによってはアルコールが効かず、次亜塩素酸(ハイターなど)が必要になるケースもあります。消毒薬の種類には注意しましょう。

 

2-3. マスクの使い分け

空気感染と飛沫感染対策の違いとして最も大切なのがマスクの使い分けです。

というのも、空気感染と飛沫感染は原因となる病原体としぶきの大きさが異なるから。空気感染の際に空気中を漂う病原体の大きさは5μm以下。この大きさは通常の市販のマスクの繊維を通り抜けてしまいます。通常のマスクでは予防効果が発揮できないのです。そのため、空気感染を予防するは、通常のマスクより繊維が細かい「N95」と呼ばれる特殊なマスクが必要となります。

一方、飛沫感染の原因となるしぶきは大きいため、マスクの繊維を通過することはないとされています。マスクを着用することで感染を防ぐことができるでしょう。

しかし、今回の新型コロナウイルスに関連して、WHOはよほど感染者の近くで接する場合を除いて、屋外での感染予防効果は薄いとの声明を発表しています。感染症を予防する一定の効果があるのは確かですが、マスクを過信しすぎて他の感染対策を怠らないようにしましょう。

 

2-4. 室内の換気

空気感染は手洗いやマスクなど一般的な感染対策では太刀打ちできないため、予防が難しいのが特徴です。ただし、空気感染を引き起こす感染症にかかった時は室内の換気を行うと空気中を漂う病原体を排除することができます。

ご自身や家族など身近な方が空気感染による感染症にかかったときは、こまめに換気行うよう心がけましょう。

 

2-5. その他の対策

空気感染と飛沫感染を防ぐには、ワクチンがあるものは予防接種を受けることも一つの方法です。特に、空気感染を引き起こす感染症のワクチンは、乳児期の定期接種に指定されていますので、忘れずに接種するようにしましょう。

また、飛沫感染を起こす代表的な感染症であるインフルエンザのワクチンは毎年異なるタイプになりますので、毎年流行期以前に接種を済ませておくと安心です。

3.身近な方が感染症にかかった時はどんなことに注意する?

家族など身近な方が感染症にかかった時は、今回ご紹介した対策を徹底するようにしましょう。しかし、空気感染と飛沫感染は予防が難しいもの。感染者は個室で療養し、できるだけ家族との接触を控えることも大切です。特に幼児や高齢者は感染症にかかると重症化しやすいため、注意が必要しましょう。

また、空気感染や飛沫感染を防ぐためには、感染者自身もマスクを着用することが大切です。咳やくしゃみによるしぶきがシャットアウトされますので、感染対策には非常に有用。発熱や咳などの症状があるときにマスクを着用するのは苦しいかもしれませんが、せめて家族など身近な方と接触するときは忘れずにマスクを着用しましょう。

4.おわりに

似ているようで全く異なる空気感染と飛沫感染。どちらも完全に予防するのは困難ですが、今回ご紹介した対策法を実践することでリスクを減らすことができます。

今、世界を震撼させている新型コロナウイルスの感染経路の一つは飛沫感染と考えられています。テレビニュースなどで中国国内の悲惨な医療現場などを見ると不安が募ってしまうものですが、慌てず落ち着いて対策を行っていくことが何よりも大切です。過度に心配することなく、冷静に正しい感染対策を講じていきましょう。