1.喘息治療における吸入ステロイド薬の位置づけ

吸入ステロイド薬は、喘息治療の柱となる重要な役割を担っています。

1-1. 喘息治療のベースは吸入ステロイド薬

喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起きる病気です。治療は、気道の炎症をおさえて発作を起こりにくくする長期管理薬と、発作時に使用する発作治療薬で行います。

 

吸入ステロイド薬は長期管理薬の一つで、気道の炎症をおさえる働きがあります。毎日使用することで気道の炎症をおさえ、発作の起こりにくい環境を整えます。

 

一方、ステロイドには気道を広げる働きがないため、症状に応じて気管支を広げる働きのある薬剤が併用されます。

1-2. 喘息治療に使われる吸入ステロイド薬の剤型

吸入ステロイド薬には、「ドライパウダー式」「エアゾール式」「ネブライザーを使用するもの」の3種類があります。

・ドライパウダー式
専用の吸入器で、粉末の薬剤を自力で吸い込むタイプです。自分の力で薬剤を深く吸入しなければならないので、吸い込む力の弱い幼い子どもや高齢者では上手に使えないことがあります。

・エアゾール式

ガスの圧力で薬剤を噴射するタイプのものです。吸い込む力が弱い人でも使いやすいですが、薬剤が噴射されるタイミングで吸入しなければなりません。タイミングを合わせるのが難しい場合は、補助器具(後述)を使うことで上手に吸い込むことができます。

・ネブライザーを使用するもの

ネブライザーは、液体の薬を霧状にして吸入するための機械です。子どもや高齢者でも使いやすいですが、吸入に時間がかかります。また、ネブライザーで吸入できるステロイド薬は限られています。

1-3. 剤型は年齢などに応じて選択

喘息治療で使用する吸入ステロイド薬は、症状のほか、年齢や過去の薬剤使用歴などに応じて選択されます。

 

成人は自力で吸い込む力が比較的強いので、吸入薬はドライパウダー式のものが選択される場合が多いです。しかし、以前からエアゾール式の薬を使っている場合やドライパウダーを吸い込んだときの粉っぽさが苦手な場合、吸い込む力が弱い場合などは、エアゾール式の吸入薬が選択されることもあります。

 

吸う力が弱い幼い子どもの場合は、エアゾール式のものかネブライザーを使用するタイプの薬剤が選択されます。小学生以上になると吸う力がだいぶ強くなるので、ドライパウダー式が選択されることが多くなります。

2.吸入ステロイド薬「オルベスコ」の特徴

「オルベスコ」は、エアゾール式の吸入ステロイド薬です。エアゾールの粒子が細かいため肺への到達率が高く、さらに、有効成分が肺の中に長時間滞留する性質を持つため、1日1回(高用量の場合は2回)の吸入で効果が持続します。

 

また、有効成分の「シクレソニド」は、肺の組織の中で活性化されてからステロイドとしての効果を発揮するので、口腔内の副作用が発生しにくいとされています。そして、肝臓での代謝も早期に行われるため、全身性の副作用も起きにくいといわれています。

 

ステロイド単剤のエアゾール式薬剤

 

オルベスコ

フルタイド

キュバール

有効成分

シクレソニド

フルチカゾンプロピオン酸

ベクロメタゾン

効果持続時間

24時間

12時間

12時間

1日の投与回数

1回

(高用量の場合は2回)

2回

2回

匂い・味

アルコール臭

ほとんどなし

アルコール臭

粒子の大きさ

1.1μm

3.1μm

1.1μm

小児への適用

あり

あり

あり

 

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オルベスコは新型コロナウイルス(COVID-19)治療薬となりうるのか

「オルベスコを新型コロナウイルス(COVID-19)に感染した患者へ投与したところ、症状が改善した」との報告が、2020年3月2日に公開されました。

報告によると、オルベスコで3例の症状が改善したとのことですが、患者に投与されたオルベスコの量は、通常の喘息治療で使われる用量・用法を超えたものとなっています。また、各患者の背景が異なるので「効果を論ずることはできない」ともされています。

新型コロナウイルス感染症に対するオルベスコの使用については、症例も少ないことから、今後さらなる検討が必要なのは明らかです。「オルベスコを使っているから大丈夫」などと過信せず、うがい、手洗いなど日常的な感染症予防ケアを欠かさないようにしましょう。

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3.オルベスコの吸入方法

オルベスコの使用方法や注意点を、使用の流れに沿って解説します。

3-1. 使用前の注意

①初回は、外側のフィルムをはがします。そして、使用前にボンベがアダプター(L字型のプラスチックパーツ)にきちんと装着されていることを確認します。

②吸入口のキャップを外し、ボンベの底を押して3回試し噴射をします。このとき、噴射液が顔や目にかからないように注意しましょう。

 

なお、試し噴射は、初回開封時または1週間以上使用しなかった場合のみ行います。毎回する必要はありません。

3-2. 吸入方法

①吸入口のキャップを外し、ボンベの底が上になるように持ちます。親指をアダプターの底部分に、人差し指をボンベの底にあててはさむように持つのが、正しい持ち方です。

ポイント!
力が弱い場合は、両手の親指・人差し指で持つと、ボンベの底を押すときに力を入れやすくなります。

 

②息を十分に吐き出し、息を止めたまま吸入口を軽く歯でくわえたら、唇でしっかり覆います。

ポイント!
唇とアダプターの間にすき間があると、薬が漏れて十分な量の薬剤を吸入できなくなるので注意しましょう。

 

③息を吸い込み始めると同時にボンベの底を1回押し、5~10秒ほどかけて薬をゆっくり吸い込みます。

ポイント!
タイミングを合わすのが難しい場合は、吸入補助器具(後述)を使うと上手に吸い込むことができます。

 

④アダプターを口から外して唇を閉じ、5~10秒ほど息を止めます。

ポイント!
息を止めることで、肺の中に薬を十分に行き渡らせることができます。

 

⑤ゆっくり息を吐きだします。複数回吸入する場合は、②~⑤を繰り返します。

ポイント!
複数回吸入する場合は、間を1分ほど空けて呼吸を整えてから吸入します。立て続けに吸入すると、十分に薬剤を吸入できない可能性があります。

 

⑥吸入後はうがいをして、口の中に付着した薬剤を洗い流します。うがい後の水は、飲みこんでも大丈夫です。うがいができない場合は、唾液をティッシュに吐き出すようにしましょう。食前に使用し、歯磨きをするのもおすすめです。

ポイント!
口の中に付着した薬剤を取り除くと、嗄声(声のかすれ)や口腔内カンジダ症(カビの一種)、咳などの副作用が起こりにくくなります。

3-3. 吸入後のケア

吸入後はキャップを閉めて、携帯用袋に入れて保管します。また、噴霧口のつまりを防ぐため、ときどき吸入口の内側と外側を柔らかい布やティッシュなどでふきます。

ただし、水洗いは禁止です。ボンベやアダプターが濡れると、噴霧不良が生じるおそれがあります。

保管場所は、高温を避けます。50度以上になると、ボンベが破裂する可能性があります。

4.オルベスコの使用を補助するさまざまなグッズ

ここからは、オルベスコの使用を助けるグッズをいくつか紹介します。

 

使用期間確認シール

オルベスコは、表示されている噴霧回数を過ぎてもガスが出てきます。しかし、表示の噴霧回数を超えて使用した場合、十分な量の薬剤がガスに含まれていない可能性があります。

 

噴霧回数を超えて使ってしまわないように、オルベスコを使用する際には使用開始日と使用終了日を専用のシールに記入して、アダプターに貼り付けておきましょう。シールは、処方せんを提出した薬局で薬と一緒にもらうことができます。

 

残薬量目安計

オルベスコは、専用の残薬量目安計でおおよその残薬量を知ることができます。残薬量目安計は、薬局を通じてメーカーから取り寄せることができます。

 

噴霧補助器具

手の力が弱く、ボンベをうまく押すことができない方のために、オルベスコには専用の噴霧補助器具があります。噴霧補助器具も、薬局を通じてメーカーから取り寄せることができます。

 

吸入補助器具

噴霧のタイミングに合わせて吸入ができない場合は、吸入補助器具を利用することで上手に薬剤を吸い込むことができるようになります。

 

市販されている代表的な吸入補助器具は「エアロチャンバープラス」という商品で、口でくわえるマウスピースタイプと、鼻と口を覆うマスクタイプがあります。いずれも週1回の洗浄が必要ですが、食器洗浄器で洗うことも可能です。使用期限は1年ですが、マウスピースやマスク部分近くにあるバルブが破損した場合は、買い替える必要があります。

 

なお、エアロチャンバープラスは、Amazonや楽天市場などのショッピングサイトから購入することができます。

 

5.おわりに

「オルベスコ」は、喘息治療の中心となる吸入ステロイド薬の一種です。1日1回の使用で長時間効果が持続し、副作用の発現も比較的少ないとされていますが、上手に吸入するためにはちょっとしたコツが必要です。オルベスコを使用していても効果が不十分な場合は、吸入がうまくできていない可能性があります。そのような場合は使用方法を再確認し、必要に応じて吸入補助器具などを利用して、しっかり吸入できる環境を整えましょう。