1.カルバマゼピンはどんな薬

1-1. カルバマゼピンの作用

カルバマゼピンには、脳神経細胞の過剰な興奮を抑える働きがあります。神経細胞が興奮するには細胞の外にあるナトリウムイオンがNaチャネルという入り口を通って細胞内に流入する必要があります。カルバマゼピンはこのNaチャネルをブロックすることで、ナトリウムイオンを細胞内に入れなくして、神経細胞の興奮を抑制する働きがあります。

 

1-2. カルバマゼピンが適用される疾患

カルバマゼピンは脳神経細胞の興奮を抑える作用によって、主に以下の3つの病態を治療します。

①てんかん発作

脳神経細胞の過剰な興奮を抑えることでてんかん発作を抑制します。カルバマゼピンはてんかんの治療薬として用いられており、特に部分発作と呼ばれるてんかん発作に対しては第一選択薬として用いられることが多いです。

 

②躁病、躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態

カルバマゼピンには鎮静作用があるため、過剰な気分の高まりを抑えることで躁病などの治療にも用いられています。

 

③三叉神経痛

三叉神経とは、顔の感覚(痛みや温度など)を脳に伝える働きをする神経ですが、この神経が何らかの原因によって異常を来すと、顔面に断続的に痛みを感じるようになります(三叉神経痛)。カルバマゼピンは三叉神経痛に大変良く効く薬として知られており、症状の8割以上が軽快するとされています。

2.カルバマゼピンの副作用について

2-1. カルバマゼピンにはどんな副作用がある?

カルバマゼピンの主な副作用には、眠気、めまい、ふらつき、けん怠・易疲労感、運動失調、脱力感、発疹、頭痛・頭重、立ちくらみ、口渇などがあります。

 

また、臨床検査値異常として、γ-GTP上昇、AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、ALP上昇、白血球減少なども報告されています。稀に生じる重大な副作用としては、再生不良性貧血、汎血球減少、白血球減少、無顆粒球症、貧血、溶血性貧血、赤芽球癆、血小板減少、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿疱症、紅皮症、SLE様症状、過敏症症候群、肝機能障害、黄疸、急性腎不全、PIE症候群、間質性肺炎、血栓塞栓症、肺塞栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎等の血栓塞栓症、アナフィラキシー、うっ血性心不全、房室ブロック、洞機能不全、徐脈、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、無菌性髄膜炎、悪性症候群などがあります。

 

これらの重大な副作用は滅多に起こるものではありませんが、服用後に何らかの異常を感じた場合はすぐに医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

 

2-2. カルバマゼピンで頭痛などの副作用が生じた時の対処法は?

カルバマゼピンには中枢神経を抑制する作用があるため、特に飲み初めには、眠気、めまい、ふらつき、頭痛などの副作用が見られることがあります。これらの副作用は服用を続けるうちに治まっていくため、軽度であればしばらく様子を見ることもできます。ただし、いつまでたってもこうした副作用が治まらないようであれば薬が体に合わない可能性もあるため、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。

 

また、カルバマゼピンの服用後に、皮疹、高熱(38℃以上)、目の充血、まぶたの腫れ、くちびるや陰部のただれなどが起こった場合は重大なアレルギー性の副作用が生じている場合があります。万一このような症状が見られた場合は直ちに服用を中止して医療機関を受診するようにしましょう。

 


カルバマゼピンの代わりとなる薬


カルバマゼピンの服用中に頭痛などの副作用が続いて服用を継続するのが困難な場合は、医師に相談して類似薬に変更してもらうという手段もあります。てんかん治療薬はカルバマゼピン以外にも非常の多くの種類が発売されており、薬を変更することで副作用を軽減できる可能性があります。また、躁病の薬としては、炭酸リチウム(商品名:リーマス)、バルプロ酸ナトリウム(商品名:デパケン)、ラモトリギン(商品名:ラミクタール)などがあり、三叉神経痛の薬としてはバクロフェン(商品名:ギャバロン)、バルプロ酸ナトリウム(商品名:デパケン)、フェニトイン(商品名:アレビアチン)などがあります。ただし、カルバマゼピンは古くから発売されている薬のため薬価が安く抑えられていますが、新しく発売された薬はカルバマゼピンと比べて薬価が非常に高くなる場合もある点には注意が必要です。

 

3.カルバマゼピン服用時の注意点について

3-1. カルバマゼピンが服用できない人は?

以下に該当する人はカルバマゼピンが服用できません。

 

・カルバマゼピンの成分または三環系抗うつ剤に対して過敏症がある人
・重篤な血液障害のある人
・第II度以上の房室ブロック、高度の徐脈(50拍/分未満)のある人
・ボリコナゾール、タダラフィル(アドシルカ)、リルピビリンを投与中の人
・ポルフィリン症の人

 

3-2. カルバマゼピンの服用に注意が必要な人は?

以下に該当する人は症状が悪化したりカルバマゼピンの副作用が発現したりする可能性があるため、慎重にカルバマゼピンを服用する必要があります。

 

・心不全、心筋梗塞等の心疾患または第I度の房室ブロックのある人
・排尿困難又は眼圧亢進のある人
・高齢者
・肝障害、腎障害のある人
・薬物過敏症の人
・甲状腺機能低下症の人

 

3-3. カルバマゼピンと併用注意の薬は?

カルバマゼピンは以下の薬と併用すると、互いの薬の作用に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。特に、カルバマゼピンは併用注意薬が非常に多いため、現在服用中の薬がある方は、カルバマゼピン服用前に必ず医師や薬剤師に相談するようにしてください。

 

【併用禁忌の薬】
ボリコナゾール(商品名:ブイフェンド)
タダラフィル(商品名:アドシルカ)
リルピビリン(商品名:エジュラント)

 

【併用注意の薬(一部抜粋)】

・MAO阻害剤
・炭酸リチウム
・メトクロプラミド
・中枢神経抑制剤(ハロペリドール、チオリダジンなど)
・利尿剤(ナトリウムを喪失するタイプのもの)

 

またカルバマゼピンは、市販の風邪薬や鼻炎薬など抗ヒスタミン成分を含む薬と一緒に服用すると、眠気、めまい、ふらつきなどが強く生じる可能性もあります。こうした薬を購入する際は薬剤師や登録販売者に相談するようにしましょう。

 

3-4. カルバマゼピンはお酒と併用できる?

カルバマゼピンの添付文書(製薬会社が作成した薬の説明書)にはお酒との併用について、「相互に作用が増強されるおそれがある。過度のアルコール摂取は避ける。」と記されています。カルバマゼピンとアルコールはどちらも中枢神経を抑制する作用があるため、これらを併用すると過度の眠気、めまい、ふらつきなどが生じる恐れがあり、危険を伴います。

 

少量の飲酒であれば問題にならない場合もありますが、お酒を併用したい方は念のため事前に主治医の先生に許可を得るようにしましょう。

 

4.まとめ

カルバマゼピンは服用期間が長期に渡ることが多い薬のため、副作用についてのリスク管理が大切になります。生じる可能性のある副作用については事前に頭に入れておき、万一、こうした症状が見られた場合は、直ちに医師や薬剤師に相談するようにしましょう。また、薬を服用する上で気になることや不安な点がある場合も専門家に相談するなどして、安心して薬が服用できる環境を作っておくことも大切となります。