登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の薬剤師
優しくて、おだやかな性格

★田中恵子
田中恵子(たなか けいこ) 45歳 女性
頭痛もち
専業主婦。毎日子育てに追われている

★ 田中葵
田中恵子さんの長女 3歳 
アトピー体質

ステロイド軟膏の塗り方を確認

いつものように、「お薬、お願いします」とかわいい声で、田中さんの娘さんがお母さまと一緒に「ゆきさん薬局」に入ってきました。
先に待っていたおばあちゃんも「元気があっていいねえ」と、薬局内に響きわたる葵ちゃんの声で、とても和やかな雰囲気になります。
この元気な葵ちゃん、幼稚園生ですが、誕生後間もなくからアトピーで苦しんでいました。
田中さん
「ゆきさん、お蔭様で葵のアトピー、随分と治まってきました。良くなったり、悪くなったりの繰り返しは、あるんですけどね」

ゆきさん
「田中さん、まあそれでも良くなってきているのだったら、良かったじゃない!ずっと利用してもらってはいるけど、一応、塗り方の確認しますね。保湿剤とステロイドはどちらを先に塗っていますか?」

田中さん
「ステロイドを先に塗ると、保湿剤を塗るときに悪くない部分までステロイドを塗ってしまうことになるから、保湿剤が先で、悪いん部分だけにステロイドを塗るんでしょ」

ゆきさん
「はい、その通り。で、ステロイドの頻度は、どれくらいで利用されていますか?」

田中さん
「悪いときは治るまで、1日2回は塗って完治するまで毎日塗りました。良くなって先生から中止の指示が出たら、一度きっぱりと止めるんでしょ。いつまでもだらだら使うのが、いけなかったはずよね」

ゆきさん
「田中さん、よく頑張ったじゃない。ステロイドの使い方はパーフェクトですよ。それでも、良い状態と悪い状態の繰り返しなんですよね。私の長女のときも、ステロイドを塗ってきれいになってからが大変で、かゆがっている腕に保湿剤をまめに塗ってあげて、夜中にさすってあげたり、冷やしてみたりしたのを覚えています」

田中さん
「あら、ゆきさんの娘さんもアトピーだったんだ。今でも続いているの?」

ゆきさん
「今は、無いですよ。小学校2年くらいまでは、アトピーはあったけど、その後は落ち着きました。そのかわり、喘息が出て来る様になって、小学校5年生くらいまで続きました。今はアレルギー性鼻炎だけあって、ハウスダストなどがひどいときに鼻水を出しています。いわゆるアレルギーマーチで、症状が変わるけれど、結局はアレルギーが原因で起きる病気です。でも体力がついてくると落ち着いてくるので、心配せず、少し長い目で根気よく付き合ってあげてください」

プロトピックの塗り方と注意点

ゆきさん
「ところで、今日出ているプロトピックの使い方は先生から説明がありましたか?」

田中さん
「先生にゆきさんところで薬もらっていると話したら、じゃあ、そっちで説明受けてだって。ステロイドをずっと使っているより、こちらに変えた方が良いかもと言ってたわ」

ゆきさん
「プロトピックは、ステロイドの長期連用で起きる皮膚萎縮の副作用がないので、安全な薬です」

田中さん
「それは良い薬ね。ゆきさんが、言うなら安心して使うわ」

ゆきさん
「ただし、プロトピックは、塗ったところがかゆくなったり、ひりひりすることがあります。3日もたてば慣れるとは言われているのですが、炎症が激しいところに塗るとかなりひりひりする場合があります。
葵ちゃんは炎症がそれほどひどい状態ではないので、大丈夫だとは思いますが、どうしてもだめという人もいます。
それと塗る量が決まっています。葵ちゃんは3歳だから1回1ℊです。1日2回塗るのですが、12時間おきに塗ってほしいんです」

田中さん
「あら、色々と面倒なこともあるのね」

ゆきさん
「そもそもプロトピックは、免疫抑制剤を軟膏にしているので、注意することが多いのです。免疫抑制剤、つまり免疫力を低下させる薬なので、理屈としては発がん性を高めるということになります。色んなデータでは問題は発生していないようですが、理論上可能性があると考えられる場合は、万全を期して様々な制約があります」

妊婦さんはNGの塗り薬?

ゆきさん、説明をしながら、田中さんのお腹が大きいことに気が付きました。普段は間違えると大変失礼になるので質問はしないのですが、重要なことがあったので、意を決して質問をしました。「田中さん、おめでたですか?」

田中さん、うれしそうに「これで最後だと思うけど、子供ができたの」

ゆきさん
「それは、おめでとうございます。本当はこの質問、僕からはなかなかしないんですけどね」と笑いながら話しました。
「でも妊婦さんだって気が付いてよかった!このプロトピックは、先ほど言ったように発がん性の可能性があるので、妊婦さんは利用できないんです」

田中さん
「え、そうなんですか。塗り薬なのに妊婦はダメなの?」

ゆきさん
「はい、ダメなんです。小児用の軟膏だし、量も1gとかなり少ないので、葵ちゃんに塗ってあげるだけなら、まず問題はないと思いますが、ビックイベントが控えているので、発がん性の可能性のあるものをお母さんに使ってもらうわけにはいきません。まずはご主人に塗ってもらって、様子を見てはいかがですか」

田中さん
「そうね、お産もあるし、主人の協力はいずれにしても必要だから、そうするわ」

ゆきさん
「そうそう、お母さんが頑張る分、お父さんも頑張ってもらわないとね」

田中さん「ゆきさん、いつもありがとう」と言って、葵ちゃんは、ゆきさんと恒例のハイタッチをしてから、にこやかに帰って行きました。

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです