目次

・女性生殖細胞:卵子
 >卵子の数の話
 >立ちはだかる卵子の老化という壁
・現在の生殖医療・これからの生殖医療
・男性生殖細胞:精子
 >精子の老化?
・まとめ

女性生殖細胞:卵子

卵子の数の話

卵子は、卵胞という袋に包まれて卵巣内に沢山溜め込まれています。生理周期に伴って数百個ずつの卵胞が発育して、1回の生理周期でわずか1-2個の卵子のみが【主席卵胞】となり、排卵されます。言い換えると、卵子は毎月数百個ずつ失われていくのです。さて、ではそれを上回るくらい卵子を産生すれば良いと思うのですが、卵子は皆さんがこの世に生を受けてから基本的に新しく作り出されることはありません。

上の図を見て下さい。

衝撃的な話ですが、あなたがお母さんの子宮の中にいたときに700万個程度存在した卵子は、あなたが生を受けた時にはすでに200万個まで減少してしまいます。排卵が始まる初潮を迎える頃には約30万個となり、毎月卵子が減っていき卵子が無くなってしまうと閉経を迎えることになります。つまり妊娠には必然的にタイムリミットがあるのです。卵子の残り数を大まかに知る方法として、抗ミュラー管ホルモン(AMH)という検査があります。しかしながら、卵子の数さえあれば必ず妊娠できるというわけではありません。

立ちはだかる卵子の老化という壁

上述したように、卵子は皆さんが生まれてから新しく産生される事は無いため、卵子もあなたと同様年齢を重ねているということです。卵子の年齢が上がってくると、受精する際に様々な不具合が起こりやすくなってしまい、年齢とともに正常な妊娠をする可能性が低くなってしまいます。下に受精卵が育った胚を子宮内に移植した際の年齢別の妊娠率・流産率を示した図を載せます。

http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2012data.pdf
日本産婦人科学会ARTデータ集より抜粋
35歳くらいを境にして、妊娠率がどんどん下がっていき、それに伴い流産率が上昇しているのがわかります。45歳を超えると、妊娠率が5%以下で、たとえ妊娠しても半分くらいの確率で流産してしまいます。また卵子の老化に伴い染色体異常の可能性も上昇していきます。30歳での妊娠と45歳での妊娠を比較すると、染色体異常になってしまうリスクは20倍以上となるのです。高齢妊娠では、低い妊娠率・高い流産率と染色体異常率の3つの壁を超えなくてはならないのです。

参考:不妊治療は年齢リスクを超えることができたのか?
http://ameblo.jp/kyusan0225/entry-12009939261.html

現在の生殖医療・これからの生殖医療

現在の不妊治療では、卵子と精子を受精させる方法として、体外受精や顕微受精を行っています。しかしながら上の項で説明した様に、例えこれらの技術を使っても卵子の老化の問題を乗り越えることは未だに不可能です。

そのため現在の医療では、なるべく若い年齢で採卵することが重要視されています。例えば子宮筋腫が妊娠の邪魔をしていて、その手術をすることで不妊治療の開始が遅れてしまうことが予想される場合に、手術前に卵子を採取し保存しておいて手術後にその卵子を使うといったように、卵子を計画的に管理するのです。さらに卵子保存の極論化として、最近ではアップルやfacebook社といった企業や日本でも、一部の自治体が若い女性の卵子凍結保存に対して助成を行う試みが始まってきています。

確かに若い年齢で卵子を保存しておくことができるので魅力的ですが、そもそも凍結卵子による妊娠は、どうしても成功率が落ちてしまう面もありますし、妊娠したは良いものの、高齢に伴う妊娠合併症や出産リスクについて自体は減少する訳では無く、今後も様々な議論が必要です。

また未来の話ではありますが、自分の細胞から様々な細胞に分化させることができるiPS細胞から、生殖細胞が作られる時代も近いと思います(すでに動物レベルでは成功しています)。将来的には、卵子の老化という問題は科学の発展によって、乗り越えることができるかもしれません。

男性生殖細胞:精子

男性の生殖細胞は、女性とは打って変わって連日精巣内で大量に作り出されています。その数は1日に数千万匹から一億匹ともいわれています。精巣は精細管という管をグチャグチャに丸めたような形を取っており、その精細管の中でベルトコンベアーの様に精子が絶えず作られています。卵子とは異なり、男性の生殖細胞は数の質よりも数の戦略を取っているのです。

精子の老化?

最近いくつかの情報媒体で、精子の老化という言葉が散見される様になりました。しかし先ほど説明した様に精子は卵子と異なり、日々新しい細胞が作られているので、卵子の老化とは全く意味合いが異なります。もともと精子の質を評価する上で、精液量・精子数・運動率・奇形率などがよく使われますが、食生活やストレス、喫煙などの生活習慣により精子の質が落ちてしまうことを精子の老化と表現している様です。

もちろん精子を作る大もとである男性自身の年齢が上がる事も、精子の質が落ちてしまう原因の一端ではありますが、それでも卵子の老化と同列に表現するのは、いささか疑問が残るところでもあります。何れにしても男性側も生活習慣に注意して、なるべく早い年齢で妊娠を考えた方が良いのは事実です。

まとめ

卵子や精子の違いを中心に解説をしました。特に女性の卵子の老化については、これまで以上に周知されるべきだと思いますし、卵子の老化を見越した上で妊娠に対する計画を立てることが重要です。