C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」とは?

まずは、「ハーボニー配合錠」について簡単に説明します。
ハーボニー配合錠(成分名「レジパスビル・ソホスブビル配合剤」)は、2015年9月にギリアド・サイエンシズ株式会社から発売されたC型肝炎の治療薬です。C型肝炎には、いくつかの遺伝子多型(ジェノタイプ)があるのですが、その中でもジェノタイプ1型のC型肝炎に効果を示す抗ウイルス剤です。

C型肝炎では、従来は複数のお薬を用いて治療を行うことが一般的でしたが、ハーボニー配合錠は、1日1回1錠の経口投与を12週間続けることで効果を期待することができます。

ハーボニー配合錠の薬価は、1錠54796.9円です。一般の方からみると高いと思われるかもしれませんが、医療ニーズが十分に満たされていない分野での画期的なお薬であるため、このような価格となります。

「ハーボニー配合錠」の偽薬がみつかった経緯

今回の問題を整理してみます。

今回の問題は、奈良県に本社を置く薬局チェーンで、ハーボニー配合錠を購入した患者さんが、正規品と錠剤の色が違うことに気がつき、薬局に申し出たことによって発覚したとのことです。おそらくこの患者さんは、以前からハーボニー配合錠を飲まれており、いつもと錠剤が違うことになんとなく違和感があったのでしょう。現時点では、健康被害がでたという報告はありません。

ハーボニー配合錠の容器は正規品で、中に違う錠剤が入っており、現在、偽造品の成分については調査中のようです。

見つかったハーボニーの偽造品は、薬局が正規取引先以外から入手したもので、同店舗の在庫からもう1個、本部の在庫から2個、別店舗の在庫から1個の計5個の偽造品が確認されました。

「ハーボニー配合錠」の偽造品問題。4つのポイント

今回、起きてしまったハーボニーの偽造品の問題は、個人的に以下の4つの考えるべきポイントがあると考えます。

・薬剤師が確認することで事前に防ぐことはできたのか?
・製造から流通に至る過程のどこで偽造品にすり替えられた?
・本来入っているはずの正規品はどこにいった?
・もし、偽造品が正規品と似ている形状だったら?

順番に説明していきます。

1.薬剤師が確認することで事前に防ぐことはできたのか?

今回問題となった、ハーボニー配合錠は、ボトル容器に入っていて(1ボトル28錠)、開封後の期限が短いことから、通常患者さんにお渡しする際に開封せずにお渡しします。
薬剤師の頭の中に、ボトルの中身が偽薬であるという疑いがない限り、事前に中身を確認するという手順を踏むことはないと考えられます。それゆえ、今回、薬剤師の事前確認により防ぐことは難しかったと思われます。

2.製造から流通に至るどこで偽造品にすり替えられた?

今回の事件では、薬局チェーンが販売会社ギリアド・サイエンシズ株式会社の「正規取引先以外」から入手したとのことです。薬局にお薬が届くまでのルートとしては、大まかに『原材料供給会社→製薬会社→医薬品卸→薬局』という流れがあります。

流通に関しては、法で厳しく規制されています。医薬品卸によっては出庫してから薬局に届くまで、開封していないことを証明するために、梱包箱を帯で縛っていることもあります。
流通経路のどこで正規品が偽造品にすり替えられてしまったのかを究明することが、今後同様の事件を引き起こさないためにも、非常に重要だと考えます。ニュースを見る限り、正規取引先以外からの入手という部分が引っかかるところです。このあたりについても、しっかりとした調査を行う必要性があるでしょう。

3.本来入っているはずの正規品はどこにいった?

何のために正規品の中身を取り出して、別の錠剤にすりかえたのか、その目的が気になるところです。
ひとつの推測として、ハーボニー配合錠の価格が1錠、約5万5千円と高価であるため、正規品である中身を別のルートで販売する転売目的であることが考えられます。

ハーボニー配合錠において、偽薬がでてきた理由としては、PTP包装(1錠ずつ取り出せるようにした包装)ではなく、中身を確認することができないボトルタイプであり、中身をすりかえやすかったことなどが挙げられるのかもしれません。

4.もし、偽造品が正規品と似ている形状だったら?

今回、個人的に大きな問題だと考えているのが、もし偽造品が正規品に似ている形状だった場合、気づくことがなかった可能性があるのでは、という点です。今回はたまたま、正規品と明らかに形状が異なったため、患者さん自身が気づくことができました。また、健康被害がなかったとのことなので、悪質な物質が含まれていたというわけでもないようですが、もし悪質な物質が偽造品であった場合には命にかかわる問題になりかねません。今後、お薬を飲んでいても効果が現れない場合や症状が悪化している場合には、お薬が偽造品でないかと疑うことも必要となってきます。

今後求められるリスク管理とは?

薬局

現在ハーボニー配合錠を服用されている方がいる場合には、すべての方に健康状態の確認をとり、回収、又はお薬自体を確認する必要があります。また、正規取引先以外から仕入れを行っている場合、お薬の仕入れ先をより信頼がおけるところに見直す必要があります。
また、徹底した確認作業が重要となり、患者さんにお薬をお渡しする前に、ボトルを開封し、中身を確認することが必要となるでしょう。

個人

普段飲んでいるお薬で、いつもと形状が違う、味が何か違う場合には、薬局にすぐ申し出ることが重要です。「いつもと違う気がするけど、まあ、良いか」と思って服用するのではなく、医師・薬剤師にすぐに相談するようにし、健康被害を防ぎましょう。

製造販売元

今回の問題を機に、販売会社であるギリアド・サイエンシズ株式会社は、ボトル包装からPTPシート包装に切り替える方針とのことです。但し、ボトル包装となっている医薬品は他にもあります。ボトル包装は、デメリットはありますがメリットもありますので、単純に包装を変えればいいという問題ではないと考えます。

まずは、薬局による一層のリスク管理が必要となってくると考えます。

おわりに

今回は、偽薬問題から考えるリスク管理について個人的な意見を述べさせていただきました。
C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽薬が出てきたことは、医療関係者にとっても、一般の方にとっても大変ショックな出来事であったと思います。今回の問題の中で調査中とされている部分もありますが、調査結果を待ちながら、同様のことが起きないように、どのように対策をたてていくべきか、引き続き考えていきたいと思います。