専門医とは

私も日本感染症学会の感染症専門医と、日本呼吸器学会の呼吸器専門医の2つを保有しています。「専門医」には、たくさんの種類があります。星の数ほど、というのは言い過ぎですが、日本専門医制評価・認定機構が公表している加盟学会の専門医数の一覧表によれば、専門医は全部で83種類あります1) 。平均的には医師1人につき1つの専門医、といったところでしょう。多くても3つか4つくらいが限度です。それ以上持っていると、更新が大変です。
さて、私たち医師はどのようにして専門医を取得するのでしょうか。医師免許を取る時点から順を追って説明しましょう。

まず、医師を志す人間は、6年間の医学部での勉強を終えた後、医師国家試験を受験します。どのくらいの合格率か知っていますか?10%?30%?いえいえ、なんと合格率90%以上です。医学をしっかり学んでいる人にとって、実は医師国家試験とは極めて簡単な試験なのです(もっと難しくしなさい!という意見もあります)。医師国家試験に合格すると、晴れて医師免許がもらえますが、最初の肩書は「臨床研修医」です。つまり、修行中のヒヨコドクターということです。

研修医という肩書きがどこまで続くかは、病院によって異なります。後期研修医という枠を設けて、医師免許取得後5年程度までは研修医の身分になっている病院もあります。

私たち医師は、医師免許以外にも資格を取得することができます。上述した研修医時代が終わると、「認定医」や「専門医」を取得する医師が増えてきます。その道の専門家として修練を積んだことを証明するために取得することが多いですが、先輩からすすめられてなんとなく取得している医師も少なくありません。

どのように認定医・専門医を取得するのか?

認定医や専門医の受験資格を得ると、当該学会に受験申し込みをします。その後、筆記試験などの受験を受けて合格すれば資格が授与されます。医師国家試験とは異なり、合格率は少し低めに設定している学会が多いようです。私の持っている呼吸器専門医や感染症専門医は合格率60~70%程度とされています。 試験の内容はおおむねその専門分野に対する知識の深さをみるものです。実は、どれだけその道に詳しくない人間でも、短期間集中的に勉強すれば合格することが可能なのです。また、専門医には更新試験がありません。一度でも取得すれば、更新するだけで一生涯専門医を名乗れるのです。もちろん、学会費を払わなかったり規約違反を犯したりすれば資格を剥奪されることはありますが。
各学会は、総会や地方会を開催しており、これら学会に参加すると資格維持に必要な単位が取得できます。そう、専門医の更新はポイント制でもあるのです。そのため、私たち専門医は各種学会に積極的に参加して専門医維持に必要な単位を取得します。専門誌に学術論文を投稿することで単位が取得できる学会もあります。

専門医には更新試験がない

更新試験がないということは、今存在する専門医の質が必ずしも保証されているわけではないということを意味します。たとえば、30歳の頃にある専門医を取得して、学会だけ頑張って参加して専門医を維持している40歳の医師だっています。ひどい場合、学会の入り口で参加費と専門医維持のための単位を取得して、そのまま学会会場にすら入らずにクルリと引き返して帰宅する医師だっています。「専門医さえ維持できればよい」という考えです。

現行のシステムではこういった専門医を維持するだけの行為も許容されていますが、一口に「専門医」といっても、一度試験に通っただけの「なんちゃって専門医」から、その道の論文をいっぱい書いている「エキスパート専門医」までピンキリなのです。

なお、医師免許にも更新試験はありません。一度受かってしまえば、たとえ医師をリタイアしたとしても医師免許を持ち続けることができるのです。実際、医師免許を持ちながら医業に携わっていない人はたくさんいます。

テレビで目にする専門医という肩書き

テレビで専門医という肩書きを持っている人が登場しても、専門医試験に合格した後資格を維持しているということは分かりますが、誰しもが認める“真の専門家”かどうかというのはちょっとグレーゾーンかもしれません。

専門医は「免許」ではなく、「証」だと思います。どうも、ただの「免許」のように思っている医師が少なからずいる。「免許」というのは、運転免許と同じで「その行為が許可される資格」のことです。しかし、専門医というのは、患者さんが享受する医療の質を担保してくれる証明書であるべきです。それは、患者さんに提供する医療の保障も加味されるものですから、「免許」よりも重たいものです。

患者さんは専門医を選ぶべき?

現在、国は専門医制度を見直している最中です。
近い将来、簡単には資格が取れない時代がやって来ると思います。

とはいえ、どのような専門医更新ルールを作ったとしても、合格した全員を一生涯エキスパートと保証することはできません。そのため、患者さんが医師を選ぶ際に重視すべきなのは、専門医を持っているか否かより、患者さん同士の口コミ・評判なのだと思います。

参考資料

14 件