目次

・そもそもHPVとは?
・HPVワクチンとは?
・日本におけるHPVワクチン
・世界におけるHPVワクチン
・さいごに

そもそもHPVとは?

ヒトパピローマウィルス(HPV)が正式名称で、性交渉により非常に高い確率で感染を引き起こします。ほとんどのHPVは、体の免疫作用で自然に排泄されますが、稀に持続感染してしまった時に、徐々に細胞の癌化を引き起こし、若い女性の死亡原因の多くを占める子宮頸がんを発症します。

子宮頸がんは生殖年齢の若い年齢に発症し、発見が遅れると治療が非常に困難であり、マザーキラーなどと呼ばれています。さて、一口にHPVといっても、200種類以上の様々な種類が判明していて、個々に番号が振られています。中でも15種類ほどのHPVがハイリスク型と呼ばれ、子宮頸がん発症の95%以上にこれらのハイリスク型HPVが存在することがわかっています。

HPVワクチンとは?

子宮頸がんの原因となるHPVの感染を抑えることにより、子宮頸がんとその前癌病変である子宮頸部異形成を減少させようというのがHPVワクチンの狙いです。と言っても全てのHPVの感染を予防できる訳では無く、予防できるHPVの型は限られています。

最初に発売されたのは、子宮頸がん全体の約7割を占める16型・18型という、一番リスクの高いウィルスの感染を抑えるサーバリックス®とガーダシル®という2種類の製品で、2006年に承認されました。前者は16/18型のみの感染を予防する2価ワクチン、後者は16/18型に加え子宮頸がん発症にはあまり関連しない2種類のHPV感染を予防する4価ワクチンです。

HPVワクチンは、全部で3回の接種が必要で、すでに感染してしまったHPVを除外する効果は無いため、性交渉を経験するよりも前の接種が勧められています。

さて、HPVワクチンはこれまで若い世代の死亡原因となる子宮頸がんの原因ウィルスの蔓延を防ぐ可能性を持つワクチンという事でWHOも積極的な接種を後押しし、オーストラリアをはじめとして、ヨーロッパ各国、アメリカ、カナダなど、発売以来様々な国がHPVワクチン接種に対する助成を開始しました。そして日本でも2010年から市町村による助成が、そして2013年4月からは定期接種として全額公費負担が始まったのです。

日本におけるHPVワクチン

定期接種が始まってからわずか数ヶ月後、HPVワクチンの定期接種は中止となり、積極的な接種の呼びかけをやめるように方針が突然変わってしまいました。

その理由は皆さんも一度はテレビや新聞で目にしたことがある、接種後の原因不明の疼痛を訴えるケースがセンセーショナルに報道されたためです。病名は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)や体位性起立性頻拍症候群(POTS)と呼ばれるものですが、その症状は様々で発症時期もかなり幅があるため、現在までにワクチンとの因果関係は証明されるまでには至ってはいません。

しかし連日HPVワクチン副作用報道が流された影響も少なからずあり、公費負担が始まった時に65%程度であった接種率は、日本では現在0に近い状態まで激減しました。HPVワクチンの副作用について十分な議論がされないまま、日本ではHPVワクチンの話題については完全に蓋をしてしまった形となってしまいましたし、データがない以上この先建設的な議論は難しい状況となりました。
注)CRPSやPOTSの発生については、HPVワクチンを接種する・しないに関連せずに一定確率で発生することが大規模な試験で証明され、WHOからも正式な声明が発せられています。さらにWHOは2015年に、「日本だけが、HPVワクチンの接種勧告を中止していることにより、若い女性が本来避けられるはずのHPVの脅威に暴露されている」と、異例とも言える1国のみに対する非難を行っています。

http://www.who.int/vaccine_safety/committee/topics/hpv/130619HPV_VaccineGACVSstatement.pdf

これを受けて日本産婦人科学会も2015年「接種の推奨再開を求める声明」を表明しています。

http://www.jsog.or.jp/statement/statement_150829.html

また厚生労働省と信州大学(池田斑)における子宮頸がんワクチン調査班において、「HPVワクチン接種後にマウスの脳に自己抗体が沈着する」という発表を行い、これまた大体的に報道されましたが、この報告については主要なデータの一部に捏造が行われたという疑いが寄せられ、現在信州大学において捏造行為に対する調査委員会が設置されています。この件も、日本におけるHPVワクチン副作用についての真実を解明するにあたり、大変大きな後退とならざるを得ない出来事となっています。

池田斑の報道については、ブログでも取り上げているので是非読んでください。
http://ameblo.jp/kyusan0225/entry-12174342374.html

世界におけるHPVワクチン

前述したように、HPVワクチンはオーストラリアをはじめとして、様々な国で公費負担され、定期接種が行われています。

ワクチンの最終的な効果目標は、もちろん子宮頸がんの発症率を抑えるということですが、子宮頸がんを発症するまでには、①HPVの持続感染→②前癌病変(子宮頸部異形成)→③子宮頸がんというプロセスを経て、実際に癌を発症するまでには10年前後の時間を要すると考えられています。

そのためワクチンの効果判定を行う際も、①HPVの感染率の低下→②子宮頸部異形成の低下→③子宮頸がんの低下を段階的に証明する必要があります。①については、様々な国からすでに報告が上がっていて、HPV16/18型については7〜8割の感染を抑える結果となり、ワクチンのHPV感染予防効果は確かなものであるということが証明されています。

さらに興味深いことに、ワクチンにより対象以外のHPV型についても感染をある程度抑制することがわかってきました。さて、②の段階についても、HPVワクチン接種を真っ先に始めたオーストラリアから、ついに報告がされました。HPV16/18型が原因である子宮頸部異形成を93〜98%も予防するという結果でした。

おそらく今後様々な国からこれに類似した報告が続々とされると考えられます。また近い将来、最終的な目標である子宮頸がんの発症率予防効果についても詳細な報告が上がってくるものと思われます。

現在HPVワクチンは「安全かつ効果が高い」というのが、世界的なコンセンサスであり、定期接種を行っている国では接種率が80%を超えています。さらに現在では9種類のHPVの感染を予防する9価ワクチンが承認され、このワクチンによりこれまでの子宮頸がんの発症を9割以上抑制する可能性が示唆されていて、先進国ではまさに子宮頸がんを根絶しようという流れができています。

さいごに

HPVワクチンについては、残念ながら日本は完全に世界の流れから取り残されてしまったと言わざるを得ません。

詳細な事実検証をせずに、連日様々な報道を大々的に行ったメディアにも責任があると思います。医療の世界では常に世界のトップレベルを維持している日本ですが、実は感染症予防の分野では私達の国は完全に後進国と世界から認識されています。

これまでもワクチン事業の選択を誤ったことにより、未だ風疹・麻疹が流行する日本。本来防げたはずの先天性風疹症候群の赤ちゃんがいまだ出生している現状や、つい最近も「麻疹(はしか)輸出大国日本」という、大変不名誉なレッテルを貼られてしまった事も記憶に新しい出来事です。

HPVワクチン接種率がほぼ0%の現状では、子宮頸がんについても将来日本だけが世界と異なる状況になる事が危惧されるように思えます。もちろんHPVワクチン接種によって、日本人だけが特有の副作用を呈する可能性も否定はできませんが、今後接種する人が増えないのであれば、それすらもきちんと議論することが出来ないのが現状です。

今後HPVワクチンの効果や副作用については、継続して世界から情報提供がされると思いますので、それらの情報をきちんと吟味して、接種する・しないを判断しましょう。