登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の薬剤師
優しくて、おだやかな性格

★山本 雄太
山本 雄太(やまもと ゆうた) 48歳
緑内障
最近、ゆきさん薬局の近所に引っ越してきた

目薬を冷蔵庫に保存しなくても良いの?

見慣れない男性の患者さんが「処方箋お願いします」と言いながらゆきさん薬局に入ってこられました。
ゆきさんは処方箋を受け取り、確認しながら「山本さん、中井眼科の処方箋ですね。うちの薬局は初めてですか?」と話しかけました。
いつもは、パソコンの画面を見て初めての患者さんか確認するのですが、「ここでもお薬もらえるのかな」という雰囲気できょろきょろして入ってきたので、ゆきさんはその確認作業を省きました。

山本さん
「ええ、最近こちらに引っ越してきて、中井眼科で今までもらっていたお薬をお願いしました」
中井眼科の先生は、ゆきさん薬局にご自身の処方箋をお持ちになるので、時々お会いして話していました。中井先生は娘さんの洋服を共有して利用するほど、とても気の若い先生です。
ゆきさん
「そうですか。中井眼科の先生、とても若そうに見える女医さんだったでしょ!」

山本さん、「えー本当に、年齢不詳の先生でしたよ。しかもちゃきちゃきしていて、何とも言えない良い感じでしたよ」と笑いながら答えました。

中井眼科では、一般名処方で処方箋を記載しています。一般名処方とは成分名(一般名)を記載することです。患者さんの同意のもと、薬局でどの銘柄の医薬品でも出せるようになっています。
今までは処方箋には商品名が書かれることが多かったのですが、政府のジェネリック推進の一環として、一般名処方を医療機関に推奨しています。

ゆきさん、『【般】ラタノプロスト』と一般名処方で記載されいている処方箋を見て、山本さんに質問しました。「今までの目薬は、冷蔵庫に保存していましたか?」

ラタノプロストの先発品は「キサラタン」と言いますが、先発品をはじめ、いくつかのジェネリックは使用開始まで冷蔵庫保存する必要があります。一方ジェネリックメーカーによっては室温保存で構わないものがあります。

山本さん
「今まで使っていた目薬はキサラタンで、冷蔵庫に保存するように言われていました。今までと同じ目薬を処方してくれると聞いていたんだけど、何かあるのですか?」

ゆきさん
「今日の処方箋は、商品名では無く一般名処方になっています。山本さんがお薬手帳をお持ちになっていれば、どこのメーカーの薬を使っていたのかは、わかるのですが、それをお持ちになっていなかったから、質問しました」

山本さん
「そうか、いつも決まっている薬だから、お薬手帳は断っていたのですが、私たちが知らないところまで、薬剤師さんは気を配ってくれていたのですね」山本さんは感心したように言ったあと、
「ところで、冷蔵庫に保存する必要が無い目薬なんてあるんですか?」と興味深げに尋ねました。

ゆきさん
「そうなんです。メーカーによって、冷蔵庫に保存する必要が無いものもあるんですよ」

山本さん
「そうなんですか!それは助かる。今まで冷蔵庫に保存していると、家内の目にとまり、家内が目薬を見るたびに、『あなた身体に気をつけてよ』と言われるんです。何だか元気なつもりでも、病気になった気がしていて参っていたんですよ」

ゆきさん
「キサラタンは冷蔵庫保存ですが、ジェネリックでは冷蔵庫保存しなくて済むものもあるので、今日はそちらにしてみましょうか」

山本さん
「それは助かります」

何でメーカーによって保存方法が違うの?

山本さん
「ところで、何でメーカーによって保存方法が違うのですか?」

ゆきさん
「そう、不思議ですよね。私もメーカーに確認してみました。そうしたら理由は実に単純で、『室温における3年間の安定性試験で、基準に達しなかったから』だそうです」

山本さん
「へー、何でそんな事が起こるんですか?」

ゆきさん
「先ほど、一般名処方の話をしたでしょ。先発品もジェネリックも有効成分は全て同じものを使っているのですが、薬を完成するにあたっての添加物とか、目薬の場合だと容器なんかがメーカーによって違うんです」

山本さん
「なるほど、だから安定性が変わるのですね」

ゆきさん
「ええ、その通りです。でも、添加物が違うことによって、どちらが良いとかは言えません。添加物にアレルギー反応が出る人もいれば、薬を持って帰るのに時間がかかるので、冷蔵庫保存では困ると言う人もいます。個人によって、ニーズが違いますからね」

「この間は、このラタノプロストで『冷蔵庫保存する必要が無くなりました』と案内があった会社もありました。きっと添加物を変えたのでしょう」

山本さん
「なるほど、面白い話を教えていただきました」

ゆきさん
「それでは、お薬を準備するので少しお待ちくださいね。他にもヒアルロン酸点眼が出ていますが、ジェネリック希望はどうされますか?」

山本さん
「おまかせします」

同時に点眼する時の方法と順番

ゆきさんは、山本さんがキサラタンを利用していて何の問題も起こしていなかったので、ヒアルロン酸点眼も防腐剤の入っている点眼剤を選びました。防腐剤でアレルギーを起こす場合は、容器に特長のあるPF点眼を取り寄せることがあります。ゆきさんは大丈夫だと判断しました。
ゆきさんは「お薬の準備できましたよ。」と山本さんをお呼びしました。
「山本さん、目が乾燥するのですか?」

山本さん
「最近、パソコンを使うことが多くて、ドライアイになってきたみたいです」

ゆきさん
「今日出ているヒアルロン酸は、目に潤いを与える目薬です。1日5~6回利用ください」

山本さん
「まあ、まめに点眼するということですね」

ゆきさん
「はい、また同時に点眼するときは、5分はあけて下さい」

山本さん
「でも、何で5分間あけるのですか?」

ゆきさん
「同時に点眼すると前の目薬が、後の目薬で流されてしまって意味が無くなってしまいます。だから5分あけてほしいんです」

山本さん
「じゃあ、5分あければ、順番は気にしなくても大丈夫ですね」

ゆきさん
「そうは言われているんですが、せっかく点眼するので、一応順番のアドバイスもさせていただいています」

山本さん
「また、面白い話を聞かせてもらえるのですね」

ゆきさん、うれしそうに話し始めました。
「点眼をする順番で気にすることは、大きく3つです。1つ目、重要な目薬は
後に点眼する。これは、先にした目薬の方が流されやすいからです。2つ目は、
懸濁している目薬は後に点眼する。これも先にすると流されやすくなるからです。3つ目は、粘性のある目薬を後に点眼する。これは、先に点眼すると後の目薬が浸透しにくくなるからです」

※懸濁とは
液中に粒子が分散しており、濁っているようにみえます。
通常、お薬を渡された際に、よく振ってお使い下さいと指示がある目薬です。


山本さん
「じゃ、今回の場合は、どの順がよいのですか?」

ゆきさん
「ラタノプロストはご存知の通り、緑内障の目薬です。緑内障は失明に至る怖い病気です。だから、今回の場合はヒアルロン酸を利用して充分に時間をあけてから、ラタノプロストを利用するようにして下さい」

山本さん「ご親切に、説明ありがとうございました」と言って、うれしそうに帰っていきました。

ゆきさんも「楽しく聞いていただき、ありがとうございました」と言って、丁寧に挨拶をしてお見送りをしました。

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです。