1.お薬は、処方箋を持参し代理人が受け取っても良い?

医師法20条で、原則、自ら診察しないで治療を行い、診断書や処方箋を交付することは禁止されているため、病院には、代理人ではなく本人でなくてはいけません。

 

一方、薬局においては、ご本人が薬局に行くことが適切です。しかし、小さなお子さんやご高齢の方、感染症や症状がひどい方など様々な理由でご本人の来局が困難な場合があるかと思います。そのような場合には、代理人が薬局に処方箋を持参し、お薬を受け取ることについては、問題ありません。

但し、代理人が処方箋を持参する場合には、次のことを気をつけてください。

 

2.処方箋持参時に、代理人が注意すべきこと

2-1. 持っておくべきもの・持っておくと良いもの

・処方箋の原本

こちらは必ず必要になります。もし、事前にFAXやスマホ(写メ)などで情報を送っている場合でも、お薬の受け渡しには原本が必要ですのでご注意下さい。また、処方箋には、交付日を含めて4日以内という期限がありますので、ご注意下さい。

 

・保険証

保険薬局では、通常、医療保険を利用したサービスですので、ご本人の保険証の掲示が必要となります。また、公費負担で医療を受けられている方の場合は、その受給者証等も掲示する必要があります。

一般的には、初診のときは必須で、その他、保険証が変更になったときに掲示が求められ る場合が多いです。但し、基本的には必要なものですので、毎回、持参するようにしましょう。

 

・お薬手帳・管理手帳など

お薬手帳は、今まで飲んでいるお薬や他の医療機関で処方されたお薬、又、アレルギー情報や体質などを把握するために必要です。また、その日に処方されたお薬の情報の記載や、薬剤師が気づいたことをメモすることもあります。

お薬手帳の提出は必須ではありませんが、より適切に、安全にお薬を飲んでいただくための薬剤師の判断材料となりますので、できれば毎回、薬局に持参するようにしましょう。

 

また、血圧手帳や糖尿病手帳などで日常の数値を管理している場合には、その手帳も持参するようにしましょう。

 

2-2. 状態を伝えられる

代理人の方ができるだけご本人の病状やお薬の服用状況などを把握しており、本人に代わって状態を伝えられることが大切です。初診の場合には、住所や電話番号などの情報に加えて、より安全にお薬を服用していただくために、アレルギー情報や既往歴、その他、体質など、問診票の記載を求められることが一般的です。

 

又、処方箋の内容のことで薬剤師から代理人の方に確認をとる場合もありますし、状態をヒアリングすることで、今後のお薬の飲み方など相談することもあります。

 

そのため、代理人の方は、ご本人の状態をある程度把握していることが重要です。

 

2-3. 服薬指導を受け把握できる

お薬は、薬剤師が処方箋の内容を確認し、問題ないと判断した場合、お薬をお渡しします。その際に、正しいお薬の飲み方や注意点等を説明(服薬指導)します。

又、新しいお薬が処方されたり、変更があった場合なども、代理人の方は、その旨を把握し、ご本人に正しく伝え、お薬を服用してもらわなければなりません。

いざ代理人の方が、ご本人にお薬を渡す際に、全く何も把握していない、となると適切にお薬が服用できない可能性があります。

 

そのため、代理人の方は、服薬指導をご本人に代わって聞き、把握できなければなりません。把握が難しい場合には、あらためて薬局にご連絡いただくか、ご本人に再度来局が必要となる場合があります。

 

2-4. こんなサービスも活用できる

病院に付き添い、その後、時間がないために一度ご自宅に帰宅する、また、お子さんが風邪など症状がつらくて家で休養させたいなど、すぐに薬局に行かない場合もあるかと思います。

 

その場合は、事前に処方箋を薬局に渡して受付し、後でお薬をとりにいく方法の他、

・事前にFAXで薬局に処方せんを送っておく

・処方せんネット受付サービスを利用する(スマホ等で処方せんを撮影して送る)  

 などの方法を活用することもできます。

事前に処方せんの内容を薬局に掲示することによって、お薬の準備が済んだ後で薬局にとりにいけるため、ほとんど待たずにお薬を受け取ることができます。

 

3.ご本人が来局困難な場合、こんな選択肢も(在宅医療)

薬局では、薬剤師がご自宅に訪問し、お薬のお届け・管理を行い、患者さまの状態に合わせたお薬を見直すなどの訪問サービス(在宅医療)を行う場合があります。

ご自宅でお薬を管理しきれず正しく飲めていなかったなどあれば、飲み忘れないような工夫(一包化、お薬カレンダー、お薬BOX)やお薬自体の調整などの提案も行います。

 

この薬局の訪問サービス(在宅医療)は一般的には、

・要介護認定を受けている場合→介護保険(居宅療養管理指導

・要介護認定を受けていない等それ以外の場合→医療保険(在宅患者訪問薬剤管理指導

を利用したサービスです。

条件としては、身体機能や認知機能が低下等で、自立した通院が困難な場合に医師の在宅訪問指示により、利用することができます。

 

ご家族がご本人の代わりにお薬をとりにきている場合も適応ですので、ご自宅のお薬の管理でお困りのことがあれば、薬局で一度相談してみてください。

4.身近で相談できる窓口(介護など)

自立した通院が困難な場合の理由として、ご本人が寝たきりで介護の必要性があったり、認知症の悪化で正しい判断が難しいなどがあり、ご家族やご近所の方がサポートしている場合もあるかと思います。

 

そのような場合で、どうしようかとお悩みを抱えているときに身近で相談できる窓口としては、「地域包括支援センター」があります。地域包括支援センターは、社会福祉士、保健師、ケアマネージャーの方などが常駐し、介護をはじめ、福祉、健康、医療さまざまな分野で相談に乗れる地域の窓口的な存在です。

 

市区町村にある地域包括支援センターを是非とも、ご活用ください。

 

また、最近では、薬局が相談の窓口となり、ご相談に応じて、連携している事業所などをご紹介するサービスを行うことも増えてきました。そのため、困っていることや気になっていることなどあれば、薬局でまずは相談してみるというのも良いでしょう。

 

5.おわりに

今回は、代理の方が薬局でお薬を受け取る場合の注意点や知っておくとよいこと、又、在宅医療や介護についても説明しました。

薬局では、できれば本人がお越しになれればよいですが、代理人が薬局に処方箋を持参し、お薬を受け取ることについては、問題ありません。但し、ご本人に代わって、状態を伝えることや服薬指導を受け、お薬のことを把握することが大切です。

薬局では、自立した来局が困難の場合、介護保険や医療保険を利用した薬剤師がご自宅に訪問してお薬を管理するサービス(在宅医療)なども行っています。

是非とも、困っていることや気になっていることなどあれば、薬局でまずは相談してみてください。