塗り薬と言えば、皮膚に使用するものというイメージがあることでしょう。ところが、目に使用する特殊な塗り薬、「眼軟膏」というものもあるのです。あまりなじみがない方も多いことと思いますので、この記事で眼軟膏について解説いたします。

普通の塗り薬との違いは?

まずは、皮膚に使用する一般的な塗り薬 (軟膏) と、眼軟膏の違いについて述べておきます。

これらの違いは、一言で言えば「目に入れても良いかどうか」にあります。もちろん、眼軟膏が目に入れてよいもの、通常の軟膏はそれができないもの、と言うことです。

なぜこのような違いがあるのか、と言えば、眼軟膏は雑菌が入らないように製造された、無菌の製剤だからです。

腕や体幹などは、皮膚でおおわれており、雑菌が体内に入らないようにするバリアとして働いています。一方、目にはこうしたバリアがなく、粘膜がむき出しになっています。そのため、目に使用する目薬や眼軟膏は、製造過程で雑菌が入らないように注意して作る必要があるのです。

眼軟膏の11成分と代表的な商品名

上記のような特徴を持つ眼軟膏ですが、それほどたくさんの種類があるわけではありません。2016年7月現在、日本で販売されている眼軟膏は、以下の11成分です (参考文献2:医薬品医療機器総合機構ホームページの医療用医薬品の添付文書情報検索ページにて調査)。

●有効成分名:代表的な商品名

感染症治療に使う薬
●アシクロビル:ゾビラックス眼軟膏0.03%など
●エリスロマイシン・コリスチン:エコリシン眼軟膏など
●オフロキサシン:タリビッド眼軟膏0.3%など
●バンコマイシン:バンコマイシン眼軟膏
●ベタメタゾン・フラジオマイシン:眼・耳科用リンデロンA軟膏
●フラジオマイシン・メチルプレドニゾロン:ネオメドロールEE軟膏
●ピマリシン:ピマリシン眼軟膏1%「センジュ」

炎症に使う薬
●プレドニゾロン酢酸エステル:プレドニン眼軟膏など
●デキサメタゾン:D・E・X眼軟膏0.1%など

ビタミン剤
●フラビンアデニンジヌクレオチド:フラビタン眼軟膏0.1%

眼軟膏の基本的な使い方

「眼軟膏を病院でもらったはいいが、使い方が分からない・・・」という方は案外多いものです。そこで、一般的な眼軟膏の使い方を、以下に紹介します。

1. まず手を洗う
2. 眼軟膏のキャップを外し、鏡を見ながら下まぶたを引く
3. キャップの先が目に触れないように注意しながら、下まぶた内側に適量 (1cm程度) を注入する
4. 目を閉じてしばらく待つ (軟膏が体温で柔らかくなって、全体に広がる)
5. 目からあふれた眼軟膏は、ティッシュや布でふき取る

以上が、オーソドックスな使い方です。

しかし私の経験上、この方法でなかなか上手くいかない方が、結構な割合でいらっしゃいます。そこで、次善策としての使い方をいくつか紹介します。

チューブから直接塗ることができない場合

もっともつまずきやすいのが、まぶたの中に眼軟膏を注入する過程です。先のとがった金属が目に迫ってくるので、本能的に恐怖を感じやすく、特に子供は嫌がるケースが多いです。

この場合、綿棒などに一度眼軟膏をとって塗るようにするのがよいでしょう。使用する綿棒は100円ショップなどで普通に売っているもので問題ありません。もちろん、綿棒は使い捨てにするようにしてください。

ただし、繊維がケバ立った綿棒の場合、はがれた繊維が軟膏に付着し、目に入りやすいので、できるだけ表面のなめらかなものを選ぶのが好ましいでしょう。

綿棒を使っても塗りにくい場合

「綿棒を使って塗るのもちょっと・・・」という場合は、最終手段として指で塗る、という方法もあります。

この場合、指に直接軟膏を絞ると、チューブの中に雑菌が入りやすくなります。そのため、一度きれいな布などに絞っておいて、それを指にとるとよいでしょう。もちろん、眼軟膏をとる前に手をしっかり洗うことを忘れないようにしてください。

この方法では、当然ながら指に付着した雑菌が目に入ることになります (いくら丁寧に手を洗っても、すべての菌を除去することは原理上不可能です)。しかし冷静に考えてみれば、我々は日常的に指で目をこすっているわけですが、それでも通常大きな目のトラブルなく過ごせています。

こうしたことから、好ましい方法ではありませんが、指で眼軟膏を塗っても、大きな問題につながることはまずないと考えられます。事実、私はこの方法をたくさんの患者さんに行ってもらっていますが、それにより状態が悪化したケースは、今のところ経験していません。

もっとも、他の方法がどうしても上手くいかない場合に限って、例外的行う方法ということは押さえておいてください。

目薬と一緒に使う場合の順番

眼科に受診したときに、目薬と眼軟膏を一緒にもらうケースもあると思います。両者の使うタイミングが同じ場合、順番をどうするのか、よく質問されます。

この場合、目薬→眼軟膏の順番に使用するのが望ましいです。

なぜなら、先に眼軟膏を塗ると、目薬が入らなくなるためです。というのも、眼軟膏は油分を豊富に含むので、これを塗ると目薬がはじかれてしまうからです。

眼軟膏を皮膚に塗っても大丈夫?

「眼軟膏」という名称から誤解されがちですが、目にしか使えないということはなく、皮膚に使っても問題ありません。

例えば、麦粒腫 (いわゆる「ものもらい・めばちこ」) という病気があります。これは、まぶたにある構造に菌が入り込んで生じる、感染症の一種です。そのため、原因の菌を除去する治療を行いますが、その際に眼軟膏が使用されるケースがあります。

なぜこのときに、普通の軟膏を使わないのか?といえば、まぶたに塗った軟膏が目に入るおそれがあるためです。そのため、無菌に作られた眼軟膏の方が、通常の軟膏より適任と言えます。

こうしたことから、眼軟膏は「目やその周辺の皮膚に使用するもの」と思っておいた方が、より適切と言えるでしょう。

眼軟膏の市販薬はある?

2016年7月現在、眼軟膏で市販されているものはありません。そのため、眼軟膏を使用する場合は、眼科などを受診する必要があります。

まとめ

■ 眼軟膏は目に入れられるように無菌にした塗り薬である
■ 感染症・炎症などの治療に使われることが多い
■ 塗るときには、雑菌がチューブに入らないように注意する
■ 現在、市販されているものはない

参考文献

(1) 瀬崎仁他 編集 薬剤学第4版 廣川書店
(2) 医薬品医療機器総合機構ホームページ 医療用医薬品の添付文書情報検索ページ http://www.info.pmda.go.jp/psearch/html/menu_tenpu_base.html
2016.7.6 access