「カルシウムパラドックス」という言葉を聞いたことはありますか?

カルシウムが不足すると血液中のカルシウムが増えるという、不思議な現象のことです。

なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。

 

カルシウムパラドックスのメカニズム

カルシウムが足りなくなると、からだは骨からカルシウムを溶かし出します。

そして溶け出した過剰なカルシウムは血管に入り、細胞に運ばれ、細胞内のカルシウムが増えるという現象が起こります。

その結果、骨のカルシウムは足りないのに、細胞内のカルシウムが増えてしまうという現象が起こります。

これを「カルシウムパラドックス」といいます。

 

 

起こるとどうなる?

骨粗鬆症:カルシウムの摂取不足によって、骨から過剰にカルシウムが溶け出されることで起こります。

動脈硬化症:骨から溶け出したカルシウムが血管壁にたまることも原因の一つです。

高血圧症:カルシウムが溶け出して血管が硬くなることにより、血液が流れにくくなるため、引き起こしやすくなります。

尿路結石:カルシウムが尿路でシュウ酸やリン酸などと結びつくことによって、結石が出来ることも原因の一つです。

イライラ症状:カルシウム不足は、脳の血液中のカルシウム濃度も高めます。それにより脳の神経細胞の働きがうまくコントロールできなくなり、イライラ症状が起こります。

認知機能低下:脳の血液中のカルシウム濃度が高くなると、起こることもあります。

 

※こうした様々な生活習慣病などの原因となる「カルシウムパラドックス」は、カルシウムの摂取不足が原因で起こります。

 

食事で気をつけたいポイント

☆カルシウム

・カルシウムを多く含む食品は、牛乳、乳製品、小魚、豆腐、海草類、緑黄色野菜などです。

 特に牛乳や乳製品のカルシウムは他の食品に含まれるものより、体内に吸収されやすいです。

☆ビタミンD

・腎臓、肝臓で活性化されたビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進します。

・魚や肉のレバー、バター、卵黄、しめじ、干ししいたけに多く含まれますが、日に当たることによって皮膚でも作られます。

 

☆たんぱく質

・たんぱく質はカルシウムの吸収を高めますが、摂り過ぎるとカルシウムの排泄量を増やしてしまいます。1日3回毎食、適量の魚・肉・卵・大豆製品のどれかをメインとして使ったおかずを一品摂りましょう。

 

☆ビタミンK・マグネシウム

・ビタミンKは骨からカルシウムが溶け出すのを防ぎ、骨を健康に保つ働きをします。

 納豆、野菜、海草などに多く含まれます。

・マグネシウムは、カルシウムとのバランスが重要で、カルシウム2に対してマグネシウムは1くらいがちょうど良いとされています。海草、魚介類、野菜、ナッツ類に多く含まれます。

 

食事の塩分が濃いと、尿と一緒に出るカルシウムが増えるので薄味にしましょう。

骨ごと食べられる小魚も、塩分が多いので注意が必要です。(高血圧や動脈硬化予防のためにも減塩を心がけましょう。)

 

おすすめ一品料理

小松菜と桜えびのチヂミ

 

<1人分>

エネルギー 230kcal

たんぱく質 10.1g

カルシウム 204mg

塩分 1.0g

 

 

作り方

①小松菜は2~3cmの長さに、にんじんはせん切りにする。

②混ぜ合わせたAに、①と桜えびを入れて混ぜる。

③フライパンにサラダ油を入れて熱し、②を流し入れ平たく伸ばし、中火で両面をこんがりと焼く。

④Bを合わせて、たれを作る。

⑤③を食べやすい大きさに切って皿に盛り、たれをつけていただく。

 

★ポイント

小松菜、桜えび、ごまにはカルシウムが多く含まれています。たれに、にんにくやコチュジャンをお好みで加えても美味しくいただけます。

 

 

厚揚げときのこの甘辛炒め

 

<1人分>

エネルギー 199kcal

たんぱく質 10.1g

カルシウム 203mg

塩分 0.9g

 

 

作り方

①厚揚げは熱湯をかけて油抜きをし、2cm角に切り、薄力粉をまぶす。

②しめじは石づきを取ってほぐし、しいたけも石づきを取って薄切りにする。

③糸こんにゃくは熱湯につけてあくを抜き、ざるにあげて食べやすい長さに切る。

④フライパンにごま油を入れて熱し、①をこんがり焼いて、取り出しておく。

⑤フライパンに②を入れて炒め、しんなりしたら④を戻し入れ、③とAを加えて炒め合わせて皿に盛る。

 

★ポイント

厚揚げにはカルシウムが多く含まれています。またしめじには、カルシウムの吸収を助ける、ビタミンDが多く含まれているので一緒にとると効果的です。

 

 

薬剤師からのミニ情報~骨粗鬆症の薬について~

最近では、継続しやすいように投与間隔や剤型(薬の形)に配慮したものがあり、治療薬は作用により大きく 3つに分けることができます。

①骨を壊す働きを抑える薬

・女性ホルモン製剤(エストロゲン):エストリールRなど

女性ホルモンが原因の骨粗鬆症に有効です。

・選択的エストロゲン受容体モジュレ―ター(SERM):エビスタR、ビビアントRなど

エストロゲンと似た作用で骨密度を増加させますが、骨以外の臓器(乳房や子宮など)への影響は少ない考えられています。

・ビスフォスフォネート製剤:アクトネルR、ボノテオRなど

経口剤、注射剤、点滴があります。経口剤には1日1回、週 1回、月1回などの種類があります。起床時(空腹時)に服用する必要があり、食道での副作用を防止するために、服用後決められた時間は上体を起こしておかなければなりません。

・ヒト型RANKLモノクローナル抗体:プラリアR

6ヶ月に1回の皮下注射のため、継続しやすいというメリットがあります。

・カルシトニン製剤:エルシトニンR、カルシトランR

骨のカルシウムが溶け出すのを防ぐ働きに加え、背中や腰の痛みを抑える働きもあります。

②骨を作る働きを高める薬

・副甲状腺ホルモン薬:フォルテオR、テリボンR

1日1回または週に1回の注射剤です。骨折が複数ある人や骨密度が極めて低い人に使用されます。

 

③骨に足りない栄養素を補う薬

・活性型ビタミンD3製剤:エディロールR、ワンアルファRなど

食事で摂取したカルシウムの腸管からの吸収を増す働きと骨を壊す作用を抑えます。

・ビタミンK2製剤:グラケーRなど

ビタミンK2は骨の代謝を整える栄養素です。食後に服用する必要があり、ワーファリンを服用している方には禁忌です。

・カルシウム製剤:アスパラ-CARなど

単独での作用が弱いため、他の骨粗鬆症治療薬と併用します。

※骨粗鬆症の治療は、薬物治療と並行した生活習慣(食事や運動など)の改善も大切です。

 薬、食事のことでわからないことがありましたら、薬剤師、栄養士にご相談ください。