1.中耳炎ってどんな病気?

中耳炎は子どもに多く見られますが、大人が感染することもあり、全ての年代で罹患する可能性のある病気です。非常にありふれた病気であり、誰でも一度は罹患した経験があるのではないでしょうか。

しかし、中耳炎についての正しい知識を持っている人は意外と少ないのが現状です。中耳炎とはどのような病気なのかを詳しく見てみましょう。

 

1-1. 中耳炎は「中耳」の炎症

私たちの耳は、外耳・中耳・内耳の3つの部位に分かれています。外耳は耳の穴から鼓膜までの外耳道の部位を指し、音を鼓膜に伝える働きがあります、一方、中耳は鼓膜から内耳までの部位のことで、「鼓室(こしつ)」と呼ばれる空間になっています。鼓室には耳小骨と呼ばれる3つの骨が連なっており、鼓膜から伝わった音の刺激を内耳の「蝸牛(かぎゅう)」に伝える働きがあります。

 

蝸牛には、音を感知するための細胞があり、蝸牛に音の刺激が伝わって始めて、私たちは「音」を認識できるのです。このように、中耳は音の刺激を蝸牛に伝えるための重要な役割をする部位であるといえます。

 

中耳炎は、この中耳の部位に細菌やウイルスが侵入することで炎症を起こす病気です。炎症を起こした中耳の粘膜からは分泌物や膿などが多量に分泌され、発熱や耳の痛み、耳垂れなどの症状が現れます。

 

1-2. 中耳炎にはどんなタイプがあるの?

中耳炎は中耳に細菌やウイルスが感染することによって生じますが、症状の経過によっていくつかのタイプに分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。

 

①急性中耳炎

中耳炎と言えば急性中耳炎を指すことがほとんどです。

 

本来、中耳は鼓膜によって外界と隔てられているため、ほぼ無菌の状態となっています。しかし、中耳には鼓膜と耳小骨の他にも、中耳内の圧と外気圧を同程度に保つための耳管という構造があります。

 

耳管は中耳と咽頭をつなぐ細い管で、普段は閉じていますが唾を飲み込んだり鼻をかんだりするときに開いて、圧を一定に保つ働きをします。中耳内はほぼ無菌状態ですが、咽頭部には様々な細菌やウイルスがいるため、耳管を通って中耳内に病原体が侵入すると急性中耳炎を発症するのです。風邪をひいた後に中耳炎を発症しやすいのは、咽頭部で大量に増殖した病原体が耳管に入り込みやすいためです。

 

中耳炎は子どもに多い病気ですが、子どもは耳管が短いため、大人よりも中耳炎を発症しやすいと考えられています。しかし、大人でも鼻すすりを頻繁にする癖がある人や、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎がある人は急性中耳炎を発症することがあります。

 

②滲出性中耳炎

急性中耳炎が治りきらずに、中耳内の炎症が慢性化すると滲出性(しんしゅつせい)中耳炎を発症することがあります。滲出性中耳炎は、慢性的な炎症によって中耳の粘膜から分泌された滲出液が中耳内にたまり、鼓膜を内側から圧迫するタイプの中耳炎です。炎症の程度は軽度なため、急性中耳炎のように発熱や耳の痛みは伴いません。しかし、鼓膜の振動が障害され、徐々に難聴が進行します。

 

子どもの場合では、難聴を自覚することができず、発見が遅れるケースも多々あります。

 

③慢性中耳炎

滲出性中耳炎が更に悪化し、溜まった滲出液によって鼓膜が破れると慢性中耳炎に進行することがあります。通常、破れた鼓膜は自然に修復され、後遺症を遺すことはほとんどありません。しかし、中耳に慢性的な炎症が生じ、滲出液の排出が続いている状態では鼓膜が正常に修復されず、常に穴が開いた状態となることがあります。このような状態の中耳炎を慢性中耳炎と呼びます。

 

慢性中耳炎では、さらに中耳内に組織が球状にかたまった「真珠腫」を形成することがあり、このようなタイプの中耳炎を真珠腫性中耳炎と呼びます。真珠腫性中耳炎は、中耳の構造だけでなく、耳周辺の骨や神経を破壊しながら増大するため、難聴やめまい、耳鳴り、顔面神経障害などの後遺症を遺すことがあります。

 

2.中耳炎ってどうやって治療するの?

このように、中耳炎には3つのタイプがあり、急性中耳炎から発症して発熱や耳の痛みなどの症状が改善したと感じても、滲出性中耳炎や慢性中耳炎に進行している可能性も否定できません。

では、中耳炎になった場合にはどのような治療が行われるのでしょうか?詳しく見てみましょう。

 

2-1. 急性中耳炎の治療

急性中耳炎は病原体が中耳内に侵入することで発症しますが、ウイルスよりも細菌が原因であることが多いとされています。特に注意すべき細菌は、肺炎球菌とインフルエンザ菌です。肺炎球菌とインフルエンザ菌にはワクチンがあり、これらは現在乳児の定期接種に指定されています。そのため、予防接種を受けた子どもは以前よりも重度な中耳炎にかからなくなっているとの報告もあります。しかし、予防接種を受けたからといって中耳炎を完全に予防することはできず、発症した場合には治療が必要となります。

 

かつて重度の急性中耳炎では、鼓膜を切開して、中耳内に溜まった膿や滲出液を排出する治療が広く行われていました。しかし、溜まった膿や滲出液は2~4週間程度で自然に耳管から排出されるため、現在では鼓膜切開はほとんど行われなくなっています。

 

急性中耳炎の治療は主に薬物療法であり、耳の痛みに対する鎮痛薬や抗アレルギー薬などが使用されます。また、細菌感染によることが多いため。抗生剤が使用されることも少なくありません。が、抗生剤の使用には賛否があり、医師によって使用の有無は異なります。特に、中耳内に液体貯留がない軽度~中等度の中耳炎では抗生剤は使用されずに自然によくなるのを待つことがすすめられています。

 

2-2. 滲出性中耳炎の治療

滲出性中耳炎は中耳に軽度な炎症が続いている状態ですが、3か月ほどで自然によくなることが多いとされています。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などが原因で滲出性中耳炎へ進行した場合にはそれらに対する治療が行われますが、多くは定期的に鼓膜の状態や聴力を検査して自然に治るのを待つこととなります。

 

しかし、3か月以上症状が改善しない場合や、著しい聴力の低下があるケースでは、抗生剤の投与や鼓膜切開・鼓膜チューブ留置などの治療が行われることもあります。

 

2-3. 慢性中耳炎の治療

慢性中耳炎は、鼓膜に穴が開いた状態となるため、ウイルスや細菌が中耳内に侵入しやすい状態となり、感染を繰り返します。その結果、膿性の耳垂れが繰り返され、徐々に症状が悪化していきます。

 

慢性中耳炎にまで進行すると、抗生剤入り点耳薬の使用や鼓膜を修復するための手術、真珠腫の切除が必要となります。

 


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3.中耳炎の多くは自然に治る!でも慢性化にはご注意を

中耳炎の多くは、特別な治療をせずに自然に治ることが多いです。しかし、中には急性中耳炎が慢性化し、滲出性中耳炎や慢性中耳炎に進行する場合があります。

では、どのような症状がある場合に注意が必要なのでしょうか?詳しく見てみましょう。

 

3-1. 注意すべき症状

滲出性中耳炎や慢性中耳炎では、発熱や耳の痛みなどの症状が見られないため、発見が遅れる傾向にあります。特に中耳炎を発症しやすい小さな子どもでは症状を自覚することができず、深刻な状態になるまで発見されないこともあります。

 

耳の聞こえの悪さ、日中の注意散漫、言語習得の遅れ、長引く鼻汁や咳などの風邪症状が見られる場合には、早めに耳鼻科を受診して検査を受けるようにしましょう。

 

3-2. 慢性化への対策

急性中耳炎の多くは自然に治りますが、完全に治りきらない状態が続くと滲出性中耳炎や慢性中耳炎に進行します。

 

このため、急性中耳炎が疑われる症状が現れた場合には、耳鼻科を受診して、鼓膜や中耳内の液体貯留などの状態を観察しながら経過を慎重に診ていく必要があります。発熱や耳の痛みなどの症状が改善しても、中耳炎が引き続いていることもありますので、症状がなくなったからといって自己判断で経過観察を止めるのは危険です。滲出性中耳炎や慢性中耳炎への進行を防ぐためにも、医師の許可が出るまでは耳鼻科での経過観察を続けることを心がけましょう。

 

4.まとめ

中耳炎は特別な治療を行わなくても自然に治るケースが多いです。しかし、完全に治りきらない状態が続くと滲出性中耳炎や慢性中耳炎などのように、深刻な後遺症を遺す中耳炎に進行する可能性もあります。このため、急性中耳炎を発症した場合には、完全に治るまでは定期的に検査を受け、慢性化の予防を行うことが大切なのです