咳止めの種類

一口に咳止めと言っても、その種類は星の数ほど存在します。いや、さすがにそれは言い過ぎか。市販されている咳止めのほとんどは、去痰薬や解熱鎮痛薬と一緒に配合されており、純粋な咳止めなんてまず売られていません。

しかし、私たち医師が処方する薬剤には咳止めに特化した薬剤がいくつもあります。
咳止めには大きく分けて中枢性鎮咳薬末梢性鎮咳薬の2種類あります。中枢性というのは、脳の咳中枢をブロックしてしまう薬のことで、末梢性というのは咳中枢ではなく気管や気管支に作用して咳を止める薬のことです。当然ながら、前者の方が効果が高いとされています。
効果の高い中枢性鎮咳薬には、麻薬性と非麻薬性のものがあります。「麻薬ってアレでしょ、モルヒネとかヘロインとか、危ないヤツでしょ。覚せい剤でこの間誰かが逮捕されたじゃない」。そんなことを患者さんからよく指摘されますが、これらはあくまで医療用麻薬でして、さほどコワイものではありません。また、咳止めとして麻薬を用いる場合、極端に量を減らして使うので、麻薬の副作用が出ることはほとんどありません。日常臨床で経験する副作用は、せいぜい便秘くらいでしょうか。
効果の高い順に並べると、「中枢性麻薬性鎮咳薬>中枢性非麻薬性鎮咳薬>末梢性鎮咳薬」 になります。

最も効果の高い咳止め

私たち医師が処方する咳止めで最も効果が高いとされているのは、デキストロメトルファン(メジコン®)とリン酸コデイン(リンコデ)です。メジコン®は錠剤で、リンコデは粉薬です。

正直申し上げると、これら2つの薬が非常に効果が高いというよりも、これ以外の咳止めの効果が低すぎて、やむなくこれらをトップ2に位置づけた、という感じなのです。そのため、メジコン®やリンコデでもなかなか咳が止まらない患者さんは多いです。

メジコン®には麻薬は含まれていませんが、リンコデにはコデインという麻薬が含まれています。実は、麻薬として良く知られているモルヒネも咳に効果があることが知られており、リンコデでいまいち効果が出ない場合には、少量のモルヒネを処方することがあります。「モルヒネってがんの痛みに使うんじゃないの?」と言われそうですが、実は少量であれば「激しい咳」に対しても保険適用されるのです。しかも、一般的に懸念されているモルヒネの依存性はまず出現しません。

咳を抑える!?シロップやハチミツ

意外に効果が高いとされているのが、シロップやハチミツです。詳しいことは分かっていませんが、どうやら甘みを感じる神経は、咳を抑えるはたらきと関連しているようです。
肺がんの患者さんの咳というのはまことに頑固で、なかなか咳止めが効かないのですが、実はこんな咳に対してシロップが有効であるというアメリカのガイドラインが存在します1)
また、特に子どもの咳に対して就寝前のスプーン1杯のハチミツが非常に有効だという報告もあります2) 。大人の場合、コーヒーにハチミツを入れると咳止めとして有効という論文もあります3) 。コーヒーにも気管支を広げる作用があるので、ハチミツと組み合わせれば効果的ということです。
どうしても咳が止まらないという人には、私も就寝前のスプーン1杯程度のハチミツをおすすめしています。
私も一度ためしてみたことがあるのですが、ハチミツだけ飲むと結構クセが強いのでご注意を。

長期に咳があるからといって毎日シロップやハチミツをなめていると身体によくないので、あまりに咳が続くときは受診してください。

大事なのは咳の原因

長々と咳止めについて書いてきましたが、大事なのは咳の原因です。喘息によって咳が出ているのに、メジコン®を飲んでハチミツコーヒーをガブガブ飲んでも治りません。ちゃんと吸入薬で気管支を広げてあげないといけません。

かぜをひいた後でも2~3週間くらい咳が続くことがありますが、それを超えて咳が続くときは一度受診して下さい。とくに、4~8週間以上咳が続くときは、何か慢性的な病気が隠れている可能性が高いです。

咳があまりよくならないな、咳止めを飲もうか、と迷ったときは一度内科医に診てもらいましょう。
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