1.不眠症の基礎知識

1-1. 不眠症のタイプ

不眠症は大きく分けて、「寝つきが悪い場合」と「夜中に何度も目覚める場合」があります。双方があることもあります。

後者には、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、寝付くことができても、早朝に目が覚め、その後睡眠に戻ることができない「早朝覚醒」、熟睡感がない、起床時にすっきりしない「熟眠障害」などがあります。

 

1-2. 不眠症のタイプで選ぶ睡眠薬

睡眠薬には、様々な作用時間のものが揃っており、作用時間により「超短時間作用型」「短時間作用型」「中時間作用型」「長時間作用型」に分けられます。

作用時間は、半減期といって、服用した薬の濃度が半分になるまでの時間を目安としています。

超短時間型は2~4時間、短時間型は半減期が6~10時間、中時間型は半減期が12~24時間、長時間型は半減期が24時間以上のものです。
レンドルミンは短時間型、マイスリー、ハルシオンは超短時間型になりますので、3種類の薬はみな作用が短い方の睡眠薬の部類にはいるといってよいでしょう。

睡眠薬のうちでも作用時間が短いものは、「睡眠導入剤」と呼ばれます。寝つきを主に助けるためです。一方で、作用時間の長いものは、眠っている途中で目覚めるのを防いでくれます。

従って、
入眠障害
→短時間型、短時間作用型など作用時間の短い睡眠薬


中途覚醒
→作用の短い超短時間、短時間型、あるいは作用時間が長めの中間型、長時間型、の両方の睡眠薬


早朝覚醒、熟眠障害

→作用の長い中間型、長時間型の睡眠薬
が使われることが一般的です。

1-3. 睡眠薬の種類についてと最近の動向

今、最もよく用いられている睡眠薬は、「ベンゾジアゼピン系」あるいは「非ベンゾジアゼピン系」と言われるものです。

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は「ベンゾジアゼピン骨格」という構造をもった分子構造をしているので、このように呼ばれるのですが、脳のベンゾジアゼピン受容体(ω1, ω2の二つがあります)に結合して作用するタイプの薬剤です。

GABAという脳内の抑制性の神経伝達物質の働きを助けることによって鎮静・傾眠作用を表します。
非ベンゾジアゼピン系のマイスリーはベンゾジアゼピン骨格をもっていません。やはりベンゾジアゼピン受容体に結合して作用しますが、ω2受容体には作用せず、ω1受容体のみに作用するので、作用がややマイルドで、筋弛緩作用などの副作用が少ないといわれています。

かつてはバルビツール酸系といわれる薬が睡眠薬としてよく用いられていましたが、副作用が強いため、今はベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の薬が主に用いられるようになっています。
多くの睡眠薬は抗不安薬や精神安定剤としての作用をあわせ持っているものが多く、不安を和らげ、精神を安定させる作用もあります。ふらつき、筋弛緩作用などをもつものもあります。

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睡眠薬の作用に強い、弱いはある?

睡眠薬は軽いもの、中等度のもの、強いものに大まかに分けられますが、薬同志の効果の強さの比較は、実際はなかなか難しいです。
ベンゾジアゼピン系はかつてよく用いられていたバルビツール酸系より作用がやや弱いですが、まずまず強い作用をもっているものが多いです。ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の薬はどれも強さに大きな差はないと考えてよいです。むしろどのような使い方をするかは作用時間によります。

 

2.睡眠薬レンドルミン、マイスリー、ハルシオンの違い

2-1. レンドルミンの成分と特徴

レンドルミンは、「ブロチゾラム」を主成分とするベンゾジアゼピン系の短時間型の睡眠薬です。
効果と安全性の高さのバランスですぐれているといわれています。服用して15~30分も経てば眠気が出始め、入眠障害にも効果がある一方で、マイスリー、ハルシオンよりも作用時間が長く、夜間を通して効果が持続するため、中途覚醒にも使えます。ただ翌朝に眠気の持ち越しがある場合もあります。

2-2. マイスリーの成分と特徴

マイスリーは、「ゾルピデム」が主成分の、超短時間作用の睡眠薬です。
近年は日本国内で一番処方されている薬です。入眠障害に効果があり、寝つきの悪いタイプの人に適しています。服用15-20分で効果がでます。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比較して、ふらつきやそれによる転倒やせん妄、筋弛緩作用が少なく、依存性も少ないので、安全性が高いと言われています。

2-3. ハルシオンの成分と特徴

ハルシオンは、「トリアゾラム」を主成分とする超短時間作用のベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。
マイスリーと同様、寝つきの悪いタイプの人に適しています。服用後、平均10~30分以内には睡眠作用があらわれます。翌日に効果を持ち越すことも少ないです。即効性がある反面、超短時間作用のため耐性、依存が起こりやすい特徴があります。副作用として、せん妄状態や健忘を起こすことがあります。また反跳性不眠や脱抑制による興奮がおきることもあるので、第一選択薬では用いず、他の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬などで十分な効果が得られない人で使われることが多いです。

2-4. 3種の作用・持続時間の比較

レンドルミンの作用時間は6-8時間で、短時間作用の睡眠薬になります。マイスリーの作用時間は1~2時間、ハルシオンは3時間程度で超短時間作用の薬です。従って、マイスリー、ハルシオンは睡眠導入に、レンドルミンは睡眠導入、中途覚醒の両方に用いられます。

2-5. 3種の価格・ジェネリック医薬品有無の比較

先発品とジェネリックは基本的には同じ効果があるとされています。しかし、成分以外の添加物などに微妙な差があり、これが薬の吸収や作用に若干の影響を及ぼす場合もあります。

2017.9時点
《マイスリー》
マイスリー錠5mg 40.6円
マイスリー錠10mg 65.0円

(ジェネリック医薬品GE 有り)
マイスリー錠5mgのGE およそ10.7円〜21.7円
マイスリー錠10mgのGE およそ18.7円〜36.6円

 

《レンドルミン》
レンドルミン錠0.25mg 24.3円
レンドルミンD錠0.25mg 24.3円

(ジェネリック医薬品GE 有り)
およそ8.5円〜9.9円

 

《ハルシオン》
ハルシオン錠0.125mg 9.5円
ハルシオン錠0.25mg 13.8円

(ジェネリック医薬品GE 有り)
ハルシオン錠0.125mgのGE 5.6円
ハルシオン錠0.25mgのGE 5.8円

 

2-6. 3種の医師が処方できる日数制限

マイスリー、レンドルミン、ハルシオンとも30日以上の処方はできません。

 

2-7. 3種の副作用の比較と注意すべき副作用

マイスリーは、転倒やせん妄、筋弛緩作用が少なく、安全性が高いと言われています。転倒が少ないので、高齢者に比較的使いやすい薬剤です。

ハルシオンは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中では特に超短時間作用のため耐性、依存性形成が起きやすいとされています。ですから短時間作用の睡眠薬だからといって安易な使い方はしないように注意することが大切です。

レンドルミンは夜間を通じて効果が続くので、睡眠の持続には効果的で、中途覚醒にも効果があります。しかし翌日の作用の持越しがある場合があり、より短時間作用のものに変える必要がある場合があります。

3.睡眠薬服用の疑問

3-1. 眠れない場合は量を多く飲んでも良い?

睡眠薬の効果が足りない場合は、薬の種類を変えるのではなく一般的にはまずは量を変えます。効果が不十分のときにむやみに薬の種類を増やしたり量を増やしても、あまり効果が期待できないばかりか、副作用が出たり耐性が出現してしまうこともあるため注意が必要です。また、短時間作用型の睡眠を沢山服用すると健忘などの副作用が出ることもあります。量をかえる際も医師とよく相談しましょう。

3-2. いずれも効かない場合はどうすれば良い?

中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害などに対しては少し作用時間の長めの薬のほうがよいことがあります。同じ作用・効果の薬を併用すると耐性が形成されるもとになることがあるので医師ともよく相談して、環境調整や、他の効果の薬の併用などを考えたほうがよい場合もあります。

 

また、お酒と一緒に飲むことは控えてください。お酒と睡眠薬は、お互いの作用を増強したり、お互いに影響を与えてしまうということがあります。また睡眠薬をお酒と一緒に服用すると、ひどいふらつき、一時的な記憶障害(健忘)などが出現することもあります。寝つきをよくするためとはいえ、お酒を飲むと眠りが浅くなり、利尿作用もあるため、ますます夜中に起きやすくなります。お酒を飲むことは睡眠には基本的にはマイナスになると考えておいたほうがよいでしょう。

 

  睡眠薬の依存性について

かつてよく用いられていたバルビタール系の睡眠薬では、繰り返し使用することにより薬に対して体が慣れてしまい効果が減弱する耐性、止められなくなりやすくなる依存性(いやゆる”くせになる”状態)が出やすいとされていました。

しかし、ここでお話ししているベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系薬剤では依存性や耐性の形成はそれほど強くないとされています。とはいえ全くないというわけでもありません。例えば、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は非ベンゾジアゼピン系に比較して、耐性、反跳性不眠が生じやすいとされています。またベンゾジアゼピン系睡眠薬の中では特に超短時間作用のものほど耐性、依存性が形成されやすいとされています。ですから短時間作用の睡眠薬だからといって安易な使い方はしないようにすることが大切なのです。

3-3. やめたい場合は、服用を突然辞めても大丈夫?

睡眠薬が効いて眠れるようになったからといって、急にとめることはおすすめできません。というのは薬を急にやめると、リバウンドで今度は全然眠れなくなるようになること(反跳性不眠)もあるからです。
また、長期に服用していた後に急に睡眠薬をやめると、不安感・焦燥などの離脱症状が出現することがあります。

 

そこで、ゆっくり薬を減らしていくことでほとんど離脱症状を出さずに薬をやめていくことができます。この場合、不眠の症状が軽快したのを確かめた上、1〜2週間かけてゆっくり減らしていくことが大切です。自己判断で中止せず、止めたり減量する場合には必ず医師に相談しましょう。

 

睡眠薬を飲み始めたときには、いつまでも漫然と内服を続けないようにすることも大切です。離脱症状はとくに長期に睡眠薬を飲んでいた人が急にやめたときに起きやすいといわれています。
ある程度長く服用していている場合には、睡眠薬を止めるときには、自己判断で決めずに必ず医師に相談するようにしましょう。

4.おわりに

レンドルミン、マイスリー、ハルシオンは超短時間あるいは短時間作用の睡眠薬で速効性もあり、医師の指導のもとで適切に使えば、比較的安全に使うことができる睡眠薬です。


副作用なども比較的少なく、癖になることを恐れて、睡眠薬を服用しないことより、服用して十分な睡眠をとることが大切なことも多いです。 その一方で、安易に自己判断で開始したり、中止したりすることで、かえって全く眠れなくなることなどがありますので注意が必要です。短時間作用のものを漫然と内服したり、飲んだりやめたりを繰り返すのはやめましょう。

 

睡眠薬を飲んでよく効いていたがしだいに眠れなくなってきたという方は、医師ともよく相談して対応することが大切です。