1はじめに
「お薬手帳はお持ちですか」―病院や調剤薬局の窓口で、持っているかどうかを尋ねられるお薬手帳。身近なものではありますが、何のためにあるどんなものなのか詳しく知っていますか。本来どのように活用すべきものなのか、詳しくみていきましょう。2お薬手帳を薬局に持参することで変わる「薬剤服用歴管理指導料」
病院や薬局での支払う医療費は報酬制度によって決まっていますが、お薬手帳を持参するかしないかで医療費の負担する金額お薬代に差が生まれる場合があります。小さな差額であっても、塵も積もれば山となります。お薬手帳を上手に活用してお薬代医療費を削減しませんか。2-1保険薬局の制度改定(診療報酬改定)
保険薬局でのお薬代は「診療報酬点数」として公定価格が定められており、2年に1度制度改定が行われます。2016年の改定でお薬手帳の価値が見直され、国民にお薬手帳の持参を心がけてもらうため、お薬代が安くなる条件の1つに“お薬手帳の持参”が加えられました。(※2018年12月現在)2-2薬剤服用歴管理指導料とは
“お薬手帳の持参”は、薬学管理料に含まれる「薬剤服用歴管理指導料*1」が安くなる条件の1つになっています。条件には薬局の条件と患者の条件があります。かかりつけの薬局をつくり、お薬手帳でお薬の管理をしていると仮定できる人はお薬代が安くなる仕組みになっています。自己負担額が3割の場合、安くなるかならないかで40円の差額が生じます。*1薬剤師が患者に対し、薬の説明や指導をする行為(服薬指導)と、薬剤服用歴を記入する行為に対して発生する料金(報酬)
2-2-1患者の条件
患者は、“同一の薬局へ処方箋を持参した“かかりつけ薬局をもつする者”かつ“お薬手帳を持参した者”が条件になっています。注意すべきなのは、初めて訪れる薬局の場合と、6ヶ月ぶりに薬局を利用した場合には“かかりつけ同一の薬局”であっても安くならないという点です。2-2-2薬局の条件
薬局には、立地や処方箋受付回数などをを基に調剤基本料という点数(評価)がつけられています。この調剤基本料のうち、調剤基本料1を算定する薬局としては、「特定の医療機関の敷地内中や目の前に位置しない薬局」などがが条件とになっています。利用した薬局がどの基本料を算定しているのかは、調剤明細書に明記されています。
2-2-3薬剤服用歴管理指導料の差額
80歳を最高齢として月に1回3割負担(※)で調剤を受けた場合の差額(40円)の総額はいくらになるでしょうか。
加齢に伴い眼科や皮膚科など複数の診療をある程度定期的に受けることになることを考慮すると、この差額の総額は更に大きくなっていきます。
※医療費の負担割合は、年齢、所得などにより個々に違いがあります。
2-3緊急時のメリット
速やかに処方することができるかかりつけ以外の病院に搬送された時には、普段の健康状態や服用歴が非常に重要な情報となります。お薬手帳があれば、このような情報を正しく伝えることが出来ます。また、後にかかりつけの病院や薬局を利用した際に、緊急時にどのような処方がなされたかを共有することも可能です。
震災など緊急時に処方箋なしで調剤することも熊本地震の被災地では、例外措置として緊急対応の例外措置として、処方箋なしで調剤が可能になりました。
2-4健康管理のメリット
介護時の助けになる服用する薬の種類が多く複雑であるなど、介護を受ける人が自分でお薬の管理が困難な場合があります。お薬手帳に薬や健康に関する情報がまとまっていると、薬を服用する本人でなくてもお薬情報を把握管理することが出来ます。
子供の記録になる誕生から成長の過程で病気になった際にどのような治療がなされ、どのような薬が処方されてきたかを正確に記録しておくことができます。将来、子供が成長した時に、お薬手帳の情報から今までの病歴、服用したお薬の情報などが把握できると病院で治療を受ける際の手がかりとなります。
3何を書く?何を見る?
3-1プロフィール欄
プロフィールでは、何かあったときのために連絡がとりやすいように基本的な情報を記載します。また、既往歴やアレルギー情報、今まで飲んだお薬の中での副作用情報を記載しておくことで、新しいお薬が処方された時に安全に服用するための手がかりとなります。
3-2薬局で発行されるシールを貼る欄
薬局では、お薬手帳を預かると、その日に処方されたお薬の内容が分かるシールを手帳に貼ります。服用方法をはじめ、服用する上での注意事項なども記載されているため、お薬の内容でわからないことがあった場合には確認することができます。
3-3自由記入欄
お薬手帳は、何か気づいたことがあった場合には、自ら書き込むようにしましょう。薬を服用していて日頃気になったことを記載しても良いですし、医師や薬剤師に言われたことを忘れないようにメモとして残しておくことも大切です。 4誰が何のために見るの?
お薬手帳は、患者本人だけでなく医療従事者が直接内容を確認することで、様々な情報を得ることが出来ます。
5お薬手帳の歴史
お薬手帳には、平成に起きた悲しい事件や災害を経て重要性が認められてきた歴史があります。5-1お薬手帳の重要性が説かれるようになった―1993年「ソリブジン事件」
医薬品併用による重篤な副作用により、わずか40日で15人もの人が命を落とす悲しい事故がありました。帯状疱疹の治療薬として発売された「ソリブジン」と、抗がん薬「5-フルオロウラシル」を併用していたがん患者が、相次いで亡くなったのです。この事故をきっかけに、飲み合わせや副作用に対する意識が高まるようになりました。5-2自由記入欄
未曾有の大災害となった阪神淡路大震災では、「お薬手帳があれば処方箋なしで薬を受け取ることができる場合がある」という特例が適用されました。詳細な薬歴を持つ人と持たない人で提供可能な薬に差が出たことから、災害時の備えとしてのお薬手帳が広く認知されるようになりました。5-3お薬手帳が制度化される―2000年「厚生労働省 診療報酬改定」
90年代の動向を受け、2000年の制度改定からはお薬手帳が制度化されました。お薬手帳に調剤結果を記入することを希望する患者から、薬剤情報提供料を毎回算定出来るようになり*、徐々にその利用度が向上していた。*現在の制度とは異なります。
5-4大災害により再びお薬手帳が注目される―2011年「東日本大震災」
津波による被害が甚大だった東日本大震災では、カルテや薬歴の紛失が相次ぎました。これにより、医療機関側で病歴や服用歴を確認することが難しく、患者の持つ情報に頼るしかありませんでした。阪神淡路大震災の時と同様に、お薬手帳を持っていた人は、比較的迅速に処置・処方をしてもらうことが出来ました。