1.糖質制限/カロリー制限の違いとは?
それぞれの食事管理方法の違いをダイエットの原則に沿って説明していきます。
1-1. ダイエットの原則について
まず、糖質制限/カロリー制限の説明をする前にダイエットの原則を説明致します。
ダイエット期においては、エネルギー(=カロリー)の収支をマイナスにするカロリーバランスが大切です。
カロリーがマイナスの分、体脂肪が燃焼されるメカニズムになります。
食べ物などから摂るカロリーを摂取カロリーと言います。
1日の生活や運動の中で使用するカロリーを消費カロリーと言います。
ダイエットの原則として、カロリーバランスを摂取 < 消費 にする必要があります。
次に意識すべきは食事の内容になり、主に三大栄養素のバランス(=PFCバランス)を意識しましょう。
三大栄養素はタンパク質、脂質、糖質の3つになり、それぞれの栄養素は身体で作用する働きやカロリーを持っています。
正しいPFCバランスでダイエットすると、筋肉ではなく体脂肪を減少させる正しいダイエットができます。
参考文献:
以下2つの論文で、ダイエットは摂取する食事の量(=摂取カロリー)と質(PFCバランスなど)の2つの改善が必要だと説明されています。
Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion: The DIETFITS Randomized Clinical Trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29466592
Comparison of weight loss among named diet programs in overweight and obese adults: a meta-analysis.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25182101
1-2. 糖質制限とカロリー制限との違いについて
では、糖質制限とカロリー制限は何が違うのでしょうか?
結論を言うと糖質制限はカロリー制限の手段の一つになります。
先ほどダイエットの原則として 摂取<消費の状態にすることが大切だと説明しました。
三大栄養素の中でもタンパク質は身体にとって最も重要な栄養素です。
ダイエット期においてもタンパク質の摂取量は絶対に減らしません、むしろ摂取量を増やすこともあります。
そうなると、タンパク質以外の栄養素である脂質と糖質のどちらか片方の栄養素をダイエット期には控えることになるのです。
ただし、両方とも控えてしまうと糖新生(タンパク質を糖に変換してエネルギー化する現象)が活発になり、筋肉ばかり落ちてしまう“筋肉ダイエット状態”になってしまいますのでそれは絶対に避けましょう!
カロリー制限の際に、1gあたり9Kcalとカロリーの高い脂質(タンパク質と糖質は1gあたり4Kcal)の摂取量を制限することが効率的だと考えたのが脂質制限です。
一般的には糖質制限と区別して、カロリー制限=脂質制限だと認識されることが多いです。
糖質は1日の総摂取カロリーの半分近くを占める栄養素です。
その主食等を抜いて、糖質を制限することでカロリー制限をするのが糖質制限となります。
ただし、先ほど説明した通り脂質と糖質の両方は制限しないため、糖質制限時の脂質摂取は積極的に行います。
糖質制限をしているので、ある程度多く脂質を摂取していてもカロリー制限状態にはなりやすいからです。
2.糖質制限/カロリー制限のメリットとデメリットについて
それぞれの食事管理方法のメリット/デメリットを、メカニズムと実際に取り入れた際に起きる悩みを元に説明していきます。
2-1. 糖質制限のメリットとデメリット
やはり主食を抜くだけという手軽さがウリです。
そして、糖質を抜いていると肝グリコーゲンが枯渇して体脂肪が燃焼されやすい状態になるのが大きなメリット※になります。
※筑波大学肝臓内グリコーゲン量の検知システムを発見~脂肪燃焼との関係を解明、肥満治療へ一歩前進~
デメリットとしては、糖質は世の中にありふれている栄養素ですので、付き合いや無意識のうちについつい糖質を食べてしまうことです。
これは、糖質のある食材をしっかりと把握することと、万が一糖質制限中に糖質を摂取したら運動(特に糖質を消費しやすい筋トレ=無酸素運動)を実施すると良いでしょう。
また、長期的な糖質制限は代謝の低下(FOXO活性化など)、筋肉量の低下(糖新生による)、耐糖能(糖質に対する耐性)の低下などが発生して、糖質摂取時のリバウンドや体脂肪減少の停滞のリスクが上がります。
ゆるい糖質制限を実施する分にはそのような弊害はなくなります。
そのような、糖質制限のリスクを考えると完全糖質制限は2~3ヶ月と短期集中で実施し、その後は緩い糖質制限か脂質制限を実施すると良いでしょう。
参考文献:
骨格筋機能と FOXO タンパク質
http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2013/11/80-11-04.pdf
2012 年度 修士論文 長期的な無糖質食摂取がラットの糖代謝能に及ぼす影響
http://www.waseda.jp/sports/supoken/research/2012_2/5011A049.pdf
また、糖質制限時はどうしても食物繊維や水分が不足して、便秘や腸内環境が悪くなりがちになります。
これらは、葉物野菜や海藻類を多く摂取する、水を多く摂取(女性は1.5L以上、男性は2.0L以上が目安)するなどの対処方法がありますが、腸内細菌のビフィズス菌は糖質をエサにしていることもあり※糖質摂取を再開すると改善することがよくあります。
2-2. カロリー制限のメリットとデメリット
カロリー制限(=脂質制限)のメリットとしては、まず主食を食べられるところです。
脂質を控えるのでおかずは制約されがちですが、必須脂肪酸の特にオメガ3(DHA/EPAやαリノレン酸など)は摂取するので、おかずとして魚介類を食べられるところはメリットと言えるでしょう。
また、糖質制限のデメリットである体重、体脂肪減少の停滞やリバウンドは起きにくく、長く緩やかに落ちていきます。
デメリットとしては、脂質を控えるので食べられるおかずの種類が限られるところです。
肉類ならば脂身の少ない鶏胸肉、ささみ、牛肉赤身になります。
揚げ物、洋菓子、一部の乳製品(チーズやバター、生クリーム)、脂の多いスープなどは避けていきます。
あとは、糖質制限ダイエットのような初期の大幅な体重減少(糖質+水分が抜ける分)が無いため、始めのうちはあまりダイエットの実感が沸かないところです。
3.あなたに合ったダイエット方法を提案!
主食を抜くだけで簡単、短期集中型で体重や体脂肪を落としたい方は糖質制限ダイエットを。
主食を抜くのが難しい方、糖質制限で体調やダイエットの調子が良くない方、停滞なく長期的に落としたい方は余分な脂質を控えるカロリー制限をオススメ致します。
また、導入で2〜3ヶ月間の糖質制限ダイエットを実施した場合、更に落としたい、もしくはリバウンドなく食事を元に戻したい方は脂質制限のカロリー制限食を1〜2ヶ月間くらい挟むと良いでしょう。
更にダイエットする際はそこから糖質制限を開始して、普通食に戻す際はカロリー制限食を挟んだ後はそのまま普通食に戻します。
糖質制限食からいきなり普通食に戻すと、代謝/耐糖能が低下している場合はリバウンドする可能性があります。
糖質摂取時は、脂質制限を実施したカロリー制限を挟むことでリバウンドリスクを下げることが出来るのです。
4.終わりに
ダイエットは摂取 < 消費 にするカロリーコントロールが大切です。
摂取するカロリー制限の手段として、三大栄養素のタンパク質を除いた脂質や糖質のどちらかを控えることになります。
カロリー制限の手段として糖質制限と脂質制限の2つあります。
世間一般的にはカロリー制限=脂質制限と認識されることが多いです。
また、一定のサイクルで2つの食事管理方法を回して、長期的に大きく体脂肪を落とす方法もあります。
それぞれの食事管理方法のメリット/デメリットを加味して、自分のライフスタイルに合った食事管理方法を取り入れていきましょう。