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目次
①ベピオゲルについて
◆ベピオゲル発売の経緯
◆ベピオゲルの効果
◆ベピオゲルの副作用
◆ベピオゲルの使用上の注意
②ベピオゲルと他薬との比較
◆ダラシンTとの比較
◆ディフェリンゲルとの比較
③にきび治療の今後
④まとめ
①ベピオゲルについて
ベピオゲル発売の経緯
ベピオゲルの主成分「過酸化ベンゾイル」は、海外では以前から長くニキビ治療に使用されてきた成分です。しかしこの過酸化ベンゾイルは刺激感が強く、肌が弱い人の多い日本人には向かないだろうということで、これまでは日本での使用が許可されてきませんでした。それがようやく、多くの皮膚科医の要望もあり2015年4月から日本でも処方することが可能になりました。
ベピオゲルの効果
抗菌作用
主成分の過酸化ベンゾイルには酸化作用があり、それによって、ニキビの原因であるアクネ菌を殺菌します。アクネ菌が死滅すると、ニキビ内で発生していた炎症が治まりニキビの腫れも無くなります。
角質剥離作用
ピーリング作用ともいうのですが、過酸化ベンゾイルには増幅して厚くなった角質を剥がし、毛穴の詰まりを解消する作用があります。この作用によって、アクネ菌が増殖して炎症を起こす前段階で治療をすることができます。
ベピオゲルの副作用
ベピオゲルは副作用が比較的多い薬で、約45%の人に副作用が現れます。
主な副作用としては、「皮膚の表皮が剥がれる」・「粉をふく」が18.6%、「刺激感」・「ヒリヒリ感」が14.0%、「赤くなる」が13.8%、「乾燥する」が7.4%です。
また、2.8%ですが「接触性皮膚炎」も起こる可能性があります。使用する場所が顔ということで、接触性皮膚炎を起こすと目や口が大きく腫れてしまうこともあります。そうなると生活にも支障がでてしまいますので、早めに病院を受診しましょう。
副作用の予防法
医師によっては、先に保湿剤を使用してからベピオゲルを上から塗るように指示することがあります。実際にそうすることで、「刺激感」や「ヒリヒリ感」といった副作用が生じにくくなるという報告もあります。肌が弱い方などは、事前に相談してみると良いかもしれません。
副作用の対処法
「刺激感」や「ヒリヒリ感」といった副作用は、もし起きても数日から1週間程度で治まってくることがあります。もし「刺激感」や「ヒリヒリ感」といった副作用があっても、すぐには使用を中止せずに様子を見てみると良いでしょう。もちろん、そういった副作用でも症状が酷い場合には、遠慮せず医師や薬剤師に早めに相談してください。
ベピオゲルの使用上の注意
ベピオゲルには漂白作用があり、衣服に付着すると色が落ちたり、髪に付着すると脱色することがあります。髪や衣服に付着しないように気をつけましょう。
②ベピオゲルと他薬との比較
ダラシンTとの比較
ダラシンTは、ニキビに対してよく使用される抗生物質の塗り薬です。
アクネ菌に対して殺菌的に働く
抗生物質には、静菌的(菌の増殖を抑え、自分の免疫が菌を殺してくれるのを待つ)に働くものと、殺菌的(直接菌を殺す)に働くものがあります。ダラシンTはアクネ菌に対して静菌的に働きますが、このベピオゲルはアクネ菌に対して殺菌的に働きます。
耐性菌が生じにくい
ダラシンTなどの抗生物質は、使用を続けているうちにだんだんと耐性菌(抗生物質が効かない菌)が生じ、効き目が無くなってくるという問題がありました。しかしこのベピオゲルの主成分である過酸化ベンゾイルは、抗生物質とは異なり酸化作用によってアクネ菌を殺すため、長期間継続して使用しても耐性菌が生じないのです。
ディフェリンゲルとの比較
他にニキビによく使われる塗り薬にディフェリンゲルがあります。ディフェリンゲルは、前述のピーリング作用(角質剥離作用)でニキビを治療する薬です。
ディフェリンゲルよりも副作用が少ない
ベピオゲルは副作用が約45%ということで非常に高いように思いますが、ディフェリンゲルは薬79%もの確率で副作用が発生します。やはり、毛穴の詰まり原因とはいえ、本来は皮膚のバリアーにもなっている角質を剥離してしまうことは、副作用を生じやすくしているようです。
妊婦にも使用できる
ディフェリンゲルは妊婦への使用が禁止されているのですが、ベピオゲルは禁止されていません。
③にきび治療の今後
2008年にディフェリンゲルが発売されて以来、7年ぶりに昨年ベピオゲルが発売されました。また、2015年7月にはクリンダマイシン(ダラシンTの主成分)と過酸化ベンゾイル(べピオゲルの主成分)が混合されたデュアック配合ゲルが発売され、さらにアダパレン(ディフェリンゲルの主成分)と過酸化ベンゾイル(ベピオゲルの主成分)が混合されたエピデュオゲルも近々発売予定です。
海外の研究ですが、ディフェリンゲルとベピオゲルの併用が、ニキビ治療の中では一番効果があるというデータがあります。
ベピオゲルが発売されてまだ1年と少ししか経っていないため医師も探り探り使っている状況ですが、今後はベピオゲルを積極的に使っていく医師も増えて、日本でもベピオゲルを中心としたニキビ治療が進んでいきそうです。
④まとめ
2015年4月にベピオゲルが日本でも発売され、これでようやく日本も海外と同じレベルでニキビ治療を行えるようになりました。
ベピオゲルはこれまでに日本で発売されていたニキビ治療薬よりも強い薬で、今までニキビ治療薬を使ってもなかなか良くならずに途中で挫折してしまっていた方でも、効果が出る可能性があります。効果が強い分、副作用も約45%の確率で起こりますので、医師や薬剤師の注意をしっかり聞いて使用法を守って使用してください。