1.免疫力ってどんな「力」?
免疫力とは、ウイルスや細菌、カビなど様々な病原体から身体を守り、病気の発症や重症化を防ぐ「防御機能」のことです。健康な方であれば、免疫力は本来生まれつき身体に備わっているもの。実は私たちの周りには目に見えない数多くの病原体が潜んでいます。普段、その病原体の影響を受けずに健康的な生活を送ることができるのは免疫力のおかげなのです。
2.免疫力を担う「細胞」とは?
私たちの免疫力を担うのは、主に血液中の「白血球」と呼ばれる細胞です。白血球には様々な種類があり、身体を病原体から守るためそれぞれ異なる役割を果たしています。
白血球は「病原体を直接食べる」・「抗体(病原体を攻撃するタンパク質)を作る」・「病原体が感染した細胞などを攻撃する」という3つの方法で病原体による感染症から私たちの身体を守ってくれる血液細胞です。
つまり、簡単に言えば私たちには、鼻や口から体内に侵入した病原体が悪さをする前に病原体自体を殺してしまう仕組み、特定の病原体が侵入したときに「武器(抗体)」を作り出して徹底的に病原体を攻撃する仕組み、運悪く病原体が感染した細胞を殺すことで更なる病原体の増殖を防ぐ仕組みが備わっているのです。このような3つの仕組みを備えることで、様々なケースの感染症の発症・悪化予防を可能にすると考えられます。
生まれつき備わっている免疫と後からゲットする免疫がある?
免疫は、「生まれつき備わっている働きのもの」と「生まれてから生活していく中で新たに備わっていくもの」があります。
上述した通り、免疫力は血液中の白血球が担っています。白血球の種類は「顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)」・「マクロファージ」・「樹状細胞」・「リンパ球」などさまざま。それぞれが異なる働きを担うことで色々なシチュエーションでの病原体の攻撃から身体を守っているのです。
では、白血球はどのような働きで免疫を維持しているのか詳しく見てみましょう。
①「生まれつき備わっている免疫」=「自然免疫」
生まれつき備わっている免疫のことを「自然免疫」と呼びます。自然免疫は、上で述べた免疫の3つの仕組みの内、「病原体を直接食べる」ことによって成り立っています。
私たちの身体に侵入して悪さをする病原体の表面には、一定の共通した特徴があります。白血球の中のマクロファージや好中球などはこうした特徴を素早く察知すると、病原体が悪さをする前に同色する働きを担うもの…。マクロファージや好中球などは生まれつき私たちの血液中に存在する細胞です。そのため、「病原体を直接食べる」ことによる免疫は生まれつき備わっている力と言えるのです。
②「生活していく中で備わっていく免疫」=「獲得免疫」
生まれた時点では備わっていないものの、生活して様々な病原体に晒されていく中で備わる免疫のことを「獲得免疫」と呼びます。
獲得免疫は、自然免疫の力だけではカバーできない病原体から身体を守る力…と言えるもの。一度体内に侵入した病原体の特徴を覚え、次にその病原体が侵入した際に病原体を強力に攻撃する「抗体」を産生して一斉退治すること、さらにはそれらの病原体が感染した細胞を攻撃することを指します。
この獲得免疫を担うのは、「樹状細胞」と「リンパ球」。樹状細胞は、一度体内に侵入した病原体の情報を覚える細胞であり、リンパ球は抗体を作ったり、病原体が感染した細胞を直接攻撃したりする細胞のことです。
予防接種はこの獲得免疫の仕組みを応用し、感染症を予防する効果を期待するものです。
予防接種で用いられる「ワクチン」は、死滅した病原体の成分や病原性を極めて低くした病原体そのものが含まれた薬剤。これを体内に注入することで、身体にほとんど害を及ぼすことなく樹状細胞が病原体の特徴を覚えることができるように…。その結果、次に病原体が侵入した際に抗体が産生されるため、感染症の発症や重症化を予防することができるのです。
一方、新型コロナウイルスのワクチン開発は現在、世界各国で行われているところです。試験的に予防接種を開始した国も多く、世界的な終息に向けいち早く有効なワクチンが開発されることが望まれています。ですが、もし開発が進んだとしても世界的に普及するまでには1~1年半はかかるとする見解が一般的です。
3.免疫力をアップする身体の仕組みとは?
私たちを病原体から守り、健康な身体を維持するのは様々な種類の白血球です。白血球は免疫力の立役者と言ってよいでしょう。
その一方で、私たちの身体には白血球以外にも病原体の侵入を予防するさまざま仕組みが備わっています。どのような仕組みがあるのか詳しく見てみましょう。
3-1. 鼻やのどを覆う「線毛」がゲートキーパー
私たちの鼻やのどの粘膜には「線毛」と呼ばれる細かい毛のような構造物が密生しています。
線毛の表面は粘液で覆われ、鼻やのどから侵入した病原体をキャッチする働きがあります。そして、キャッチした病原体を粘液でカバーし、密生した線毛がくねくねと「線毛運動」を繰り返すことで咳やくしゃみなどと共に体外へ押し出すのです。
線毛はいわば「ゲートキーパー」。鼻やのどから侵入した病原体がマクロファージなどの攻撃を受ける前に押し出すことで、感染を未然に予防しています。
ですが、線毛の働きは粘膜が乾燥すると悪化することが分かっています。そのため、空気が乾燥しやすい冬場や空調の影響を受けやすい夏場のオフィスなどでは鼻やのどの奥へ病原体が侵入しやすくなり、感染症にかかるリスクが上昇するのです。
3-2. 腸内環境が免疫を左右する?
私たちの腸の中には100兆以上の細菌が生息していると考えられています。これらの細菌は大きく分けると善玉菌・悪玉菌の2種類が一定の構成比をキープしながら存在しています。簡単に言えば、善玉菌が多いと腸の調子はよく、悪玉菌が多くなると便秘や下痢などの便通異常を引き起こしやすくなるのです。
一方で、近年の研究では、腸には免疫に関わる細胞の成熟や機能維持を担う働きがあり、腸内の状態は免疫力を左右することが分かってきました。
免疫力を高めるには、腸内環境を整えることが大切とするのが今の考え方の一つです。
4.まとめ
新型コロナウイルスが世間を騒がせているなか、感染対策に注意している方がほとんどでしょう。ですが、感染症を予防するには、徹底した感染対策はもちろんのこと、身体を病原体から守る「免疫力」の高さも重要となります。
今回は、私たちの身体がどのような仕組みで病原体から守られているかについて詳しく解説しました。鼻の乾燥を防ぐ、腸内環境を整える…といった日常生活の注意によって免疫力を正常にキープすることができます。ぜひ参考にしてください。