1.『低温やけど』って!?

1-1. 「低温やけど」とは?

『低温やけど』は、熱源が高温な通常のやけどと異なり、熱源が低温なため、長時間触れていても熱さや痛みを感じにくい特徴があります。

 

1-2. 「低温やけど」の症状とは?

熱源が低いため、気付きにくいのが難点です。「低温やけど」に気付いた時には「皮膚が赤く腫れる」、「水ぶくれが出来る」などの比較的軽症な症状だけでなく、「皮膚深部(皮下組織)が壊れる」くらい重症の「やけど」になってしまうこともあります。

 

<やけどの症状>

Ⅰ度: 赤み<痛みあり>

Ⅱ度: 水ぶくれ(水泡)<強い痛みあり>

Ⅲ度: 壊死、炭化。<痛みなし>

 

2.「低温」なのにナゼ「やけど」をする!?

普通、直接火に触れたり、熱湯がかかれば、ほんの一瞬で「熱い!」と反応し、すぐ熱源から離れる為、皮膚の奥まで「やけど」が及ぶ事は少ないと言えます。

体温より少し高く、触れていて「暖かくて気持ちが良い」位の温度でも、その熱源に長時間触れ続け、皮膚の深い部分にまで熱の影響を受け、見た目よりも重症なのが『低温やけど』です。

 

『低温やけど』は、ステーキに似ている!? ☆

十分に熱したフライパンにステーキ肉を入れると、短時間で表面は良く焼けますが、中は「レア」で肉汁が残ります。一方、温度が低いまままのフライパンで、じっくり焼くと、表面が焼ける頃には、中の深い部分も、十分に火が通る「ウェルダン」になります。

低い温度でもじっくり時間をかけて熱が加わる「低温やけど」は、「ステーキの”ウェルダン”」によく似ています。

 

3.「低温やけど」がおきる温度と時間!?

「一般的なヤケド」は、熱源の温度が70℃であれば、約1秒で起きてしまいます。

ところが、『低温ヤケド』は『44℃では3~4時間、46℃では30分~1時間、50℃では2~3分』でゆっくりじっくり起きます。「お風呂のお湯」より少し高い温度でも十分に注意する必要があります。

 

4.こんな時は、特に「低温やけど」に要注意!

疲れが貯まって、眠り込んだり、お酒を飲み過ぎて居眠りする時は、熱さに対しての反応が鈍くなります。また、持病で糖尿病を患っている方も、足の神経などが鈍くなっているため、「低温やけど」に注意する必要があります。

 

5.『低温やけど』に注意する必要があるモノは?

通常、『低温やけど』は、熱さ(温度差)を感じにくい「高齢者」や「小児」に多い傾向があります。ところが、冬の屋外などでは、外気が寒く厚着をしている上、(外気にさらされる)顔や頭部に注意が行きやすく、足や腰、お尻などの「局所の熱さ(低温やけど)」に気付きにくい傾向があります。

 

さらに防寒用に「(使い捨て)カイロ」や「湯たんぽ、あんか」などを使う機会も増える季節ですが、特に気を付けたい点をご説明します。

 

・「貼るタイプ カイロ」

必ず衣類の上に貼り、同じ箇所に長時間当てないこと。湿布の上から貼ると気持ちが良いという人がいますが、張った部分の肌がデリケートになっているため、重ねることは避けましょう。貼ったまま寝てしまうのも注意です。

 

・「靴下用 カイロ」

「靴下用カイロ」は、酸素が少ない靴の中でも使えるように作られています。ただし、靴を脱いだ状態や身体の他の部位に使うと、過剰に「酸化反応(発熱)」が起き、高温になる危険性があります。開封後放置すると温度が高くなりやすいので、使用直前に開封することが良いでしょう。

 

・「湯たんぽ、あんか」

厚手のカバー等に包んでも、「低温やけど」を起こすことがあります。寝る前に寝具に入れて温めておき、寝る際には出すことが望ましいです。

 

・「ホットカーペット、温水(加温)機能付き便座」

  「ホットカーペット」や「温水(加温)機能付き便座」にお酒を飲んだ後など、長時間、横になったり、寝たり、座ったままの状態でいると「低温やけど」になりやすいです。

 

・「携帯電話などの充電器」

  寝る時に、枕元で動画などを見る方も多いでしょう。本体や充電器が熱くなって、「低温やけど」につながる危険があります。

 

6.『低温やけど』になったらどうする?対処法

「低温やけど」は見た目に異常が少なく、大した無いと思えても、実際には皮膚の深い部分が「やけど」を起こしていることがあります。ただし、やけど跡や傷跡で残る可能性もありますので、原則的には皮膚科や形成外科など医療機関を受診し、治療を受けることをお勧めします。

 

医療機関に行く前には、

・ゴシゴシ「擦ったり」せず、『ワセリン』等で保護すること。

・「水ぶくれ(水泡)」は、自分でつぶさないこと。

・アロエや油、味噌などを塗ったりしないこと。

 

以上の点を守って頂きたいです。

 

7.おわりに

 今回は、一見軽く考えてしまいがちな「低温やけど」についてご説明すると共に、日常生活の中で注意が必要な点などをご説明させて頂きました。

「やけど跡」が残ってしまうこともありますので、自分で色々と対処するよりは、皮膚科や形成外科など医療機関を受診し、適切な治療を受けることが望ましいと思います。