1.持続性ならメイラックス 即効性ならデパス

一般的には、強い不安を早く抑えたいのであれば、メイラックスよりもデパスを飲む傾向にあります。

メイラックスやデパスのようなお薬を抗不安薬といいます。精神安定剤と俗に呼ぶこともあります。

メイラックスもデパスも同じ種類の抗不安薬ですが、効果が出る時間、効果が消える時間が違います。

それに関連して副作用の出方も若干、違ってきます。

 

1-1. メイラックス

抗不安薬は作用時間の長さで4つに分類されています

●短時間型クラス(3~6時間)  デパス

○中時間型クラス(⒓~20時間)

○長時間型クラス(20~100時間)

●超長時間型クラス(100時間〜)  メイラックス

メイラックスは超長時間型クラスに分類されています。作用時間が100時間以上ですから、3〜4日以上も効いていることになります。

強い不安を早く抑えたいときなどは不向きなこともありますが、常に心の安定を維持できる土台を作るには適しているお薬です。

 

1-2. デパス

デパスは短時間型クラスに分類されています。効果は早いときで30分以内に。遅くても1時間以内には現れます。

ただ、効果は最初、強く出ても3~6時間で消失します。

メイラックスとデパスは同じ抗不安薬でありながら、効果の持続時間にかなり差がありますが、これは血液の中にあるメイラックスやデパスの濃度と関係しています。

 

○血液の中のメイラックスが半分の濃度になる時間(半減期)  122時間

○血液の中のデパスが半分の濃度になる時間(半減期)  6時間

 

医師はメイラックスとデパスの上記の半減期の違いをうまく活用し、患者さんの症状と照らしあわせながらお薬を選択、処方します。

時折、強い不安が出るのであれば、デパスで対処し、いつも不安がつきまとってしまう場合はメイラックスのような作用時間の長いお薬を処方します。

また、いつも不安を感じる中で時折、不安を強く感じることがあるというときは、メイラックスで様子を見ながら、強い不安のときに頓服としてデパスを飲むという方法もあります。

メイラックスもデパスも医師が処方するお薬なので、自分で選択することはありませんが、自分に合ったお薬を処方してもらうためにわかりやすく簡潔に医師に症状を伝えましょう。

 

2.デパスはメイラックスよりもふらつき、転倒という副作用が出やすい

抗不安薬には筋弛緩という作用があります。この筋弛緩作用は筋肉の緊張からくる肩こりなどの改善に効果を発揮します。ところが、筋弛緩作用が強く出てしまうと、脱力感やふらつきの原因になります。

デパスは筋弛緩作用がメイラックスよりも強く、とくにデパスを飲む高齢者はふらつきの症状がでやすく、筋力低下のため、転倒の原因になることが多いようです。。

 

3.デパスはメイラックスよりも眠気が強くでやすい

強い不安があってデパスを飲んだときは、眠気に気を取られてしまうことはあまりありませんが、不安が消えかかる頃に眠気を強く感じることがよくあります。

とはいえ、飲み慣れてくるにつれ、眠気を感じなくなる人もいます。眠気がQOL(生活の質)を低下させるようであれば、デパスの量を減らす、あるいは眠気の少ないメイラックスなど他のお薬に変更するという方法で対処します。

 

4.デパスはメイラックスよりも薬物依存になりやすい

メイラックスやデパス、それ以外の抗不安薬を飲まれている方は下記をチェックしてみてください。

  • 薬を2種類以上飲んでいる
  • 薬を6カ月以上継続して飲んでいる
  • 薬を飲み忘れた日にひどく眠れず、不安であった
  • 薬を手元に持っていないと不安である
  • 薬を飲まないと眠れないのではと不安になる
(引用)東京女子医科大学病院医薬品安全管理委員会 神経精神科 薬剤部 「睡眠薬や抗不安薬を飲んでいて次のようなことがあてはまりますか?」
 

いかがでしたか?

チェック欄の下部3つにチェックがつく方は、薬物依存の可能性があるかもしれません。医師に相談してみましょう。

 

東京女子以下大学病院 医薬品安全管理委員会 神経精神科薬剤部

 

薬物依存には身体依存と精神依存があります。

身体依存とはお薬を突然止めると、そのお薬特有の離脱症状が出現することです。。

一方の精神依存とはお薬がないと、不安になったり、あるいは良くなって減らしているにも拘らず、以前のようにお薬を求めてしまうなど、薬がなければ通常の精神でいられない状態のことをいいます。

医師はこのような依存がでないように、また、薬物依存を少しでも緩和するために服用中は常に観察し、中止するときはいきなり中止せず、計画的に少しずつお薬の量を減量していきます。

自分の判断で勝手に薬を止めたり、量を増やしたり減らしたりすることで、さらに具合が悪くなることがあるので、必ず医師の指示に従う必要があります。

 

以上がメイラックスとデパスの大きな違いです。

ところで、メイラックスやデパスなどの抗不安薬はどのような作用機序で不安をやわらげ、精神の安定を保持しようとするのでしょうか?

 

5.メイラックスやデパスなどの作用機序

メイラックスとデパスは作用の強弱などの違いはありますが、どちらもベンゾジアゼピン系抗不安薬というお薬に分類されています。これらの化学構造式の中にベンゼン環とジアゼピン環をもっていることにちなんで、ベンゾジアゼピン系抗不安薬と呼ばれています。

 

不安は脳で感じます。そのため、不安を抑えるためには腕に働きかける物質が必要になります。ベンゾジアゼピンはGABAと呼ばれる脳の神経伝達物質の働きを強める作用をもっています。

GABAの作用を強めると、不安などで過活動状態になっている脳の働きを鎮めてくれます。

GABAの効果

○抗不安作用

○筋弛緩作用

○催眠鎮静作用

○抗けいれん作用

 

ベンゾジアゼピンはとくに大脳辺縁系といわれる部位に作用しますが、この部位は感情の動きや記憶を司っています。

 

高齢者は痴ほう症と間違われやすい

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の作用機序は記憶系統も抑えるということから、デパスのように急に血中濃度が上昇し、効果が出るようなお薬は健忘症にもなりやすいといわれています。

超高齢者がデパスを飲んで健忘症のような症状が出た場合、お薬によるものか、痴ほう症からくる健忘症なのか見極める必要があります。

 

その他、上記でメイラックスとデパスの違いを述べましたが、その方の肝機能の状態によっても違ってきます。

肝機能が低下していれば、解毒能力も低下しています。

そのため、副作用が少ないといわれるメイラックスでも場合によっては、副作用が強く出てしまうことがあります。

 

6.まとめ

メイラックスとデパスの違いからどちらが良いお薬かというのではなく、それそれのメリットを活かした飲み方ができると考えれば、どちらも重要なお薬であるといえます。

とくに高齢者がこのようなお薬を飲む場合、本人任せにするにするのではなく、周囲の方もお薬の正しい特性を知って高齢者をサポートしていきましょう。