1.溶連菌とは
溶連菌は、溶血性連鎖球菌の「溶」「連」「菌」を取り出した略語です。
名前の通り、血液を含む菌を育てるためのシャーレ(培地)では、溶連菌の増殖とともに周りが白くなって、血液の赤さがなくなり、いかにも血が溶けたようになります。
顕微鏡で菌を観察すると、球状の菌で鎖のように連なった状態になります。この溶連菌には多くの種類があり、A, B, C, G群などに分けられます。
新生児で髄膜炎や菌血症を起こすのがB群で、乳幼児から大人の多くで感染するのがA群溶連菌です。血清型と言って、細菌の表面の種類は100以上あります。そのため、何度も感染してしまう、症状が異なって起きてしまうことがあります。
2.溶連菌感染症にはどんな病気があるの?
主に咳、くしゃみなどの飛沫感染や傷などの接触感染で感染しますので、のど、中耳、副鼻腔、気管支、肺、皮膚などに感染症を起こします。
感染から症状が出るまでの潜伏期間は、約2~5日と言われています。
咽頭炎…
3歳までの幼児では症状は出ないことが多く、5~15歳の幼児および学童期に多いです。
のどの痛み、発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、全身倦怠感などの症状が主な症状です。
もし、のどを見ることができたら、のどが真っ赤で、扁桃が赤くて腫れていて、時に白い膿のようなものがついていることもあります。首のリンパ節が腫れることもあります。溶連菌感染の病気として多くを占めています。
猩紅熱(しょうこうねつ)…
発熱と発疹が出ます。発疹は顔や体に見られ、特に、関節の部分で悪化します。発疹が治まる時に、皮膚が一部はがれてくる症状も出てきます。のどの痛み、発熱も見られますが、発疹が特徴的です。舌が真っ赤になることで、イチゴのような舌になります。
蜂窩織炎(蜂巣炎)…
皮膚からの感染で見られ、感染した場所で皮膚が赤くなり、皮膚の下が腫れて、痛みがあります。
膿痂疹(とびひ、飛び火)…
蜂窩織炎より皮膚の近い部分で感染が起こり、水を持った発疹、盛り上がった発疹、黄色の浸出液が出ているような発疹が見られます。良くなっていくと、瘡蓋(かさぶた)で覆われます。
壊死性筋膜炎…
筋肉の周りにある筋膜に感染し、発熱、感染部位の激しい痛いが見られます。
症状が進行するのが早く、ショック状態になったり、腎臓などの臓器の機能が低下したりして、早期に治療しないと命に関わる病気です。
この病気が年々増えていて、溶連菌の関与で死に至ることがあることを知っておいた方がよいでしょう。
3.溶連菌によって起こる病気とその症状
溶連菌の感染後に起こってくる病気があります。
主に、溶連菌に対する免疫反応の結果として起こっている病気で、急性糸球体腎炎、アレルギー性紫斑病(血管性紫斑病)、リウマチ熱などがあります。
急性糸球体腎炎…
腎臓の尿を出す能力が急に低下して、尿が少なくなったり、蛋白尿、血尿と呼ばれる異常な尿になったり、身体がむくんだり、血圧が上がる病気です。
急性で1か月以内に良くなることが多いのですが、安静で塩分制限をしないと高血圧などによる体の異常が起こってしまいます。
アレルギー性紫斑病…
主に足に打ってもいないのに赤い斑点のような発疹が出てきます。発疹を押さえても消えない紫斑、いわゆる青あざのようなものです。
関節が腫れたり、関節の痛み、腹痛が見られることもあります。腹痛は激しく、虫垂炎と間違われることもありました。血管に炎症が起こったことが原因です。
リウマチ熱…
リウマチのような症状が出るために、リウマチ熱と呼ばれています。溶連菌の成分の一部が関節、心臓、皮膚、脳などの組織に似ている部分があるために、免疫細胞が自分の組織を攻撃する自己免疫疾患の1つです。
関節炎、心炎、心臓の内部にある弁膜の炎症、皮下にしこりができる皮下結節、踊るような動作が出てくる舞踏病があります。
こうした溶連菌によって起こす病気を防ぐ意味では、治療と予防が大切ですし、何より、溶連菌感染の診断が重要です。
4.溶連菌感染症の診断は
溶連菌感染症でもっとも多い咽頭炎は、のどをぬぐった綿棒を使って、溶連菌そのものがいないかどうか検査する迅速検査で診断することが多いです。
15分程度で診断することができます。さらに、のどをぬぐった綿棒から培養検査を行い、溶連菌が増えてくるかどうかを見ることもありますが、数日かかりますので、今では、迅速検査が使われることが多いです。
抗菌薬などが既に服用されていると迅速検査では陰性になりますので、血液検査で、溶連菌に対する免疫反応の結果として体内で作られるタンパク質であるASLOやASKを測定します。
ともに高値であれば、溶連菌感染症があったことが判ります。
5.溶連菌感染症の治療
溶連菌は細菌ですので、抗菌薬の効果があります。
ペニシリン系およびセフェム系と呼ばれる抗菌薬を服用します。ペニシリン系抗菌薬の方がセフェム系抗菌薬より長めに服用します。
生活スタイル、薬の飲みやすさなどで抗菌薬は変わってくるかもしれませんが、確実に服用することが肝心です。
ペニシリン系、セフェム系の抗菌薬によるアレルギーのある人は、マクロライド系抗菌薬が使用されます。しかし、マクロライド系抗菌薬の効果が悪い溶連菌も報告されています。
発熱などの症状は抗菌薬を使用後2~3日以内は治まってくることが多いです。
早い人では翌日には解熱します。
逆に言えば、4~5日以上、発熱が続く場合は、もう一度医療機関を受診した方が良いでしょう。
猩紅熱のかゆみには、かゆみ止めを使用することもあります。
溶連菌による急性糸球体腎炎であれば、安静と水分制限と塩分制限が治療の1つになります。
アレルギー性紫斑病は、その症状に応じた治療になりますし、血管の炎症ですので、炎症を抑えるステロイド薬が使われることもあります。
リウマチ熱では、抗菌薬に加えて、炎症を抑える薬として、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬などが使用されます。
しかし、溶連菌によって引き起こされる病気は、溶連菌の感染を防ぐことで予防もできます。
6.溶連菌感染症の対策は?
溶連菌感染症は、乳児ではみられず、幼児から見られます。
感染経路は飛沫感染ですので、人混み、集団生活の中で、感染することが多いです。
溶連菌感染をしている人は早期に診断し、早期治療が大切ですが、人に感染させないためには、マスクが有効です。
自分が感染しないためには、手洗いとうがいが大切で、十分に手洗いすることで感染を防ぐことができます。周りの流行にも注意しましょう。保育園、幼稚園、学校などで流行していると、感染する危険性が高くなります。
大人でも感染しますが、子どもの頃にかかっていれば、溶連菌感染症になることは少ないです。大人の溶連菌による咽頭炎は子どもから感染することがあるので、周りの子ども、自分の子どもの発熱した病気にかかっていないかどうか、その発熱の原因が溶連菌ではないかと知っておきましょう。
溶連菌感染症では、抗菌薬内服後24時間が経過すると、感染力がほぼなくなりますので、学校保健安全法での登校・登園基準は抗菌薬内服後24~48時間経過していることとなっています。
大人でもこれに準じて、抗菌薬内服すれば、1日の休みで仕事に行くことが可能になります。
溶連菌は抗菌薬という特効薬がありますので、疑われたら、医療機関に受診し、検査診断するのが望ましいと言えます。
