1.亜鉛の役割とは?
亜鉛は人間が食事から必ず摂取しなければいけない必須ミネラルの一つです。人間の体内では様々な化学反応が起きています。これを代謝と言います。代謝をすることで人間はエネルギーを作り出したり、新しい細胞を作り出したりします。代謝をする上で重要になるのが「酵素」と呼ばれるものです。
酵素は化学反応のスピードを速める触媒の働きをする物質です。人間の体内には数千を超える種類の酵素が存在していると考えられています。亜鉛は多くの酵素の構成成分となるため、全身の代謝を支えている栄養素と言っても過言ではないでしょう。
亜鉛の働きには以下のようなものがあります。
- 細胞分裂を正常に行い、発育や新陳代謝を助ける
- 肌や髪の毛、粘膜の健康を保つ
- 性機能を維持する
- 味覚を維持する
- 免疫力を保つ
亜鉛は積極的に摂取したい栄養素です。普段の食事の中で亜鉛が多く含まれる牛肉や牡蠣、納豆などを食べるように心がけましょう。
2.日本人と亜鉛の摂取状況
日本人の亜鉛摂取の推奨量は成人男性で10mg、成人女性で8mgとされています。しかし日本人の亜鉛の摂取量の平均は9mg、若い女性では6-7mgほどであると考えられています。
ほんの少し足りない程度、と思うかもしれませんが、亜鉛は吸収率が10-30%ほどとあまり良くなく、加えて加工食品が多い現代の食生活ではさらに亜鉛の吸収率が悪くなっています。そのため多くの日本人で亜鉛の摂取量不足が続いていることでしょう。
日本人のそれぞれの年代での亜鉛の必要量は以下のようになっています。
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
0~5(月) | - | - | 2 | - | - | - | 2 | - |
6~11(月) | - | - | 3 | - | - | - | 3 | - |
1~2(歳) | 3 | 3 | - | - | 3 | 3 | - | - |
3~5(歳) | 3 | 4 | - | - | 3 | 4 | - | - |
6~7(歳) | 4 | 5 | - | - | 4 | 5 | - | - |
8~9(歳) | 5 | 6 | - | - | 5 | 5 | - | - |
10~11(歳) | 6 | 7 | - | - | 6 | 7 | - | - |
12~14(歳) | 8 | 9 | - | - | 7 | 8 | - | - |
15~17(歳) | 9 | 10 | - | - | 6 | 8 | - | - |
18~29(歳) | 8 | 10 | - | 40 | 6 | 8 | - | 35 |
30~49(歳) | 8 | 10 | - | 45 | 6 | 8 | - | 35 |
50~69(歳) | 8 | 10 | - | 45 | 6 | 8 | - | 35 |
70以上(歳) | 8 | 9 | - | 40 | 6 | 7 | - | 35 |
妊婦(付加量) | +1 | +2 | - | - | ||||
授乳婦(付加量) | +3 | +3 | - | - |
出典元:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-zn-cu.html
亜鉛が多く含まれる食品は牡蠣や牛肉、豚レバー、カニなど日常の食生活でなかなか毎日食べることが難しいものが多いです。日本人の食生活では不足しやすいので、サプリメントなどで補って摂取するのも有効です。
3.亜鉛が不足するとどんな症状が起こる?
亜鉛が不足すると子どもの場合、成長障害が現れます。亜鉛が不足することで細胞分裂が活発に進まず、体格の形成に支障が出ます。また第二次性徴期に亜鉛が不足すると性成熟がきちんと行われない可能性もあります。将来的な妊娠のしやすさなどにも影響が出る可能性があります。
大人と子どもに共通する症状として味覚の異常が挙げられます。亜鉛の欠乏症として最も現れやすいのはこれです。また皮膚炎や抜け毛なども亜鉛が不足することで生じます。
亜鉛は意識的に摂取しなければ不足しやすい栄養素です。しかし前述した通り、亜鉛の多い食品は牡蠣や牛肉、レバーなど日本人の食生活では毎日のように食べるものが少ないです。食事から摂取する亜鉛の量が不足していると思うのならば、サプリメントの利用がお手軽です。
亜鉛単体のサプリメントでもよいですが、マルチミネラルのサプリメントのほうがおすすめです。日本人は亜鉛だけではなく、カルシウムや鉄、銅などの微量ミネラルも不足しやすい傾向にあります。栄養素は1つだけ摂取してもあまり意味がありません。バランスよく摂取することが重要です。
4.こんな時は病院へ
亜鉛不足による欠乏症で最も特徴的なものが味覚の変化です。好きだったものをおいしく感じない、以前と味の感じ方が違う、何を食べてもおいしくない、味が薄く感じる、このような症状が現れたら念のため病院で診察を受けるとよいでしょう。
味覚の異常は亜鉛不足のためと早合点して、自己判断で亜鉛サプリメントを飲み治そうとするのはあまりよくありません。亜鉛不足は確かに味覚の異常を引き起こしますが、味覚の異常を引き起こす疾患は他にもあります。
病院で診察を受けて亜鉛欠乏症と診断されたら、健康保険を適用して治療することも可能です。経済的なメリットもあるので、味覚の異常を感じたら病院で診察を受けるようにしましょう。味覚の専門家は口腔外科ですが、かかりつけの内科クリニックがあるならばそこでも構いません。
5.まとめ
亜鉛は新陳代謝や発育に関わるミネラルです。全身で働く非常に重要な栄養素ですが、日本人の食生活では不足する傾向があります。
亜鉛の不足で最も特徴的な症状は味覚の異常です。以前と味の感じ方が変化したと感じたら、病院で診察を受けるようにしましょう。亜鉛は不足しやすく、同時に耐用上限量(1日に摂取して問題ない量)も大きい栄養素なので亜鉛不足にならないようにサプリメントを利用するのもおすすめです。