1.喘息(ぜんそく)は治療の継続が大切

1-1 喘息(ぜんそく)とは

喘息のひとつの特徴としては、胸に耳をあてると、「ヒューヒュー、セーゼーという音(喘鳴)」が聞こえることです。風邪をひき、咳がひどく長引いている、咳がひどくて寝付けない、明け方、苦しくて目が覚めるなど、このような場合には、喘息の可能性があるため、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

2014年の喘息の推定患者数(患者調査データ)では、約118万人となり、約4割が20歳未満と、若い人に多い疾患です。もちろん、成人後に発症するケースも多くあります。

厚生労働省人口動態調査によると、喘息による死亡数は、近年では1995年に7253人とピークを示したのち、徐々に減少しており、2015年には1551人となっています。2015年でいうと、死亡数1551人のうち、約9割は65歳以上の高齢の方です。

このように、喘息は重症の場合、命の危険につながることもありますが、喘息による死亡数が減少しているのは、医療が進歩し、ステロイド吸入薬など、治療薬が充実してきたためだと考えられます。喘息は、日常生活に支障がでないように、発作時の対応はもとより、合わせて長期に渡って、発作がでないように治療を継続していくことが大切です。

1-2 喘息(ぜんそく)に用いられる治療薬

喘息は、頻度や症状、現在の治療を考慮して、「重症度」とよばれる指標で判定されます。ここでは詳しく説明しませんが、重症度分類としては、「間欠型」「軽症持続型」「中等症持続型」「重症持続型」「最重症持続型」があります。お薬の治療方法として、治療ステップ1〜4というものがあり、この重症度に応じた治療ステップのお薬による治療が行われます。いずれにおいても、「吸入ステロイド薬」が治療の基本です。

主に、喘息に用いられる治療薬としては、発作がでないようにコントロールする「長期管理薬」と発作を鎮める「発作治療薬」があります。

 

<長期管理薬>

・吸入ステロイド薬(低用量〜高用量)
・長時間作用性β2刺激薬
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
・テオフィリン徐放製剤
・抗アレルギー薬
・抗コリン薬

 

<発作治療薬>

・短時間作用性β2刺激薬

今回は、この中でも、吸入薬について詳しく説明していきます。

2.喘息(ぜんそく)に用いられる吸入薬の種類

喘息に用いられる吸入薬には様々な種類のものがあり、吸入器にも色んなタイプのものがあります。

吸入薬の種類としては、主には、「ステロイド薬」「β2刺激薬(短時間/長時間)」、配合薬「ステロイド薬+β2刺激薬(長時間)」があり、その他にも数種類あります。まずは、これらについて説明していきます。

2-1 ステロイド薬

「ステロイド」とはホルモンの一種で、私たちの体の中にある副腎皮質とよばれる器官で作られています。体内において、様々なはたらきをもっており、私たちが生きていく上では欠かせない重要なホルモンです。このステロイドを治療に応用しようと、人工的に開発したものがステロイド薬です。

喘息の治療においては、ステロイド薬は、強い抗炎症作用を持っており、継続することによって、喘息の発作を起こりにくくします。発作がでないようにコントロールする「長期管理薬」です。

喘息の治療の基本は、ステロイド薬です。喘息の重症度に応じて、低用量〜高用量と量を調整し、コントロールしていきます。

吸入では、直接気道にとどき、局所に作用することと、含まれているステロイド量は微量ですので、全身への副作用の心配はほとんどありません。しっかりと指示されている量・使い方を守っていれば、安心して、使用することができます。

主なステロイド薬の吸入
・パルミコート(ブテソニド)
・フルタイド(フルチカゾン)
・オルベスコ(シクレソニド)
・キュバール(ベクロメタゾン)
・アズマネックス(モメタゾン) など

2-2 β2刺激薬(短時間/長時間)

β2刺激薬は、気管支を拡張し、喘息症状を和らげる作用があります。気管支に存在している、交感神経に関与するβ2受容体をお薬で刺激することで、気管支を拡げ、空気のとおりをよくするはたらきをもちます。

このお薬には、短時間作用タイプと長時間作用タイプがあります。

短時間作用タイプは、素早く気管支を拡げる作用があり、喘息発作時に症状を鎮める発作治療薬として使用されます。
長時間作用タイプは、長時間に渡って、気管支を拡げる作用があり、喘息の重症度に応じて、長期管理薬として使用されます。

 

主なβ2刺激薬(短時間)タイプの吸入
・メプチン(プロカテロール)
・サルタノール、ベネトリン、アイロミール(サルブタモール) など

 

主なβ2刺激薬(長時間)タイプの吸入
・セレベント(サルメテロール) など

2-3 配合薬 ステロイド薬+β2刺激薬(長時間)

配合薬は、気道の炎症を抑えるステロイド薬である「ステロイド薬」と、気管支を拡張する作用がある長時間作用タイプの「β2刺激薬」、2つの成分を含んでいます。

 

基本的には、発作がでないようコントロールする長期管理薬として用いられます。本来であれば、吸入薬を併用するには、2つの吸入を別々に行わなければいけない手間がありますが、配合薬では、2剤配合されているため、1つの吸入で済ませることが可能です。

 

配合薬であるシムビコートにおいては、長期管理薬として使用されるとともに、発作時に追加吸入することもあります。

 

主な配合薬 ステロイド薬+β2刺激薬(長時間)の吸入
・アドエア(サルメテロール/フルチカゾンプロピオン酸エステル)
・レルベア(ビランテロール/フルチカゾンフランカルボン酸エステル)
・シムビコート(ホルモテロール/ブテソニド) など

2-4 その他

その他にも、喘息に用いられる吸入薬としては次のようなタイプのお薬もあります。第一選択薬ではありませんが、症状に応じて、合わせて使用されることがあります。

 

<抗アレルギー薬(化学伝達物質遊離抑制薬)>

アレルギー症状に関与している「ヒスタミン」や「ロイコトリエン」などの体内物質の作用をおさえることによって、喘息症状を改善する効果をもたらします。

主な抗アレルギー薬の吸入
・インタール(クロモグリク酸ナトリウム) など

 

<抗コリン薬>

・自律神経である副交感神経を亢進させるアセチルコリンのはたらきを抑える作用によって、気管支を拡げ、喘息の症状を和らげます。

 

主な抗コリン薬の吸入
・アトロベント(イブラトロピウム)
・テルシガン(オキシトロピウム)
・スピリーバ(チオトロピウム) など

3.喘息(ぜんそく)に用いられる吸入器の種類

喘息の治療の用いられる吸入器のタイプにも様々なものがあり、より使用しやすいように年々進歩しており、それぞれ特徴があります。患者さんに合わせて、適した吸入器を選ぶ必要があります。

主に、「ドライパウダータイプ」、「エアゾールタイプ」、「ネブライザータイプ」の3つのタイプの吸入器があります。

3-1 ドライパウダータイプ

代表例

・ディスカス
・ディスクへラー
・タービュヘイラー
・エリプタ
・ツイストへラー
・ハンディへラー など

使いやすさから、一般的に使用されることが多い吸入器タイプです。

粉末状の薬剤が吸入器に充填されています。簡単な操作で吸入ができる状態にセットし、マウスピース(吸入口)に口をつけ、自分のタイミングで息を吸い込み、薬剤を取り込みます。

お薬の量がごくわずかであるため、吸っている感じが得られないこともありますが、吸入後にマウスピース(吸入口)を下にして、トントンと叩いて、薬剤が出て来なければ、しっかり吸えています。

お薬の残量などは、カウンターがついており確認することができます。

メリットとしては、自分のタイミングで吸入することができます。一方で、吸う力がある程度必要であるため、小さなお子さんやご高齢の方だと使用が難しい場合があります。

3-2 エアゾールタイプ

薬剤が充填されており、缶を押すことによって、1回分が噴霧されます。メリットとしては、薬剤が噴霧されるため、発作時など吸い込む力が弱っている場合にも、吸入しやすいことがあります。一方で、うまく吸入するためには、薬剤の噴霧のタイミングと吸入するタイミングを合わせる必要があります。

タイミングを合わせるのが難しい小さなお子さんやご高齢の方が吸入しやすいように、「スペーサー」とよばれる吸入補助具を合わせて使用することがあります。

スペーサーは、筒状になっており、使用することで、噴霧された薬剤を一旦とどめて、自分のタイミングで一気に吸い込むことができます。

3-3 ネブライザータイプ

専用の機械(様々な機種あり)に薬剤である薬液(液体)をセットして利用します。機械で薬液を霧状にし、マスクやマウスピースを口に加えて吸入していきます。

特に、エアゾールタイプやドライパウダータイプではうまく吸入できないような小さなお子さんやご高齢の方でも確実に吸入することができます。

一方、持ち運びが大変なことや費用がかかること、 吸入に少し時間がかかるなどのデメリットもあります。

ネブライザーは、様々な機種が販売されており、ジェット式、メッシュ式、超音波式などのタイプがあります。

4.喘息(ぜんそく)治療時の吸入薬の注意点

4-1 吸入後は、必ずうがいをするようにしましょう。

特に、ステロイド薬を含む吸入薬においては、口の中やのどに薬剤が残ってしまうと、声がかすれる、イガイガする、又、口腔ガンジダ症(口の中に白いできもの)の副作用を引き起こす原因となることがあります。

そのため、吸入後は、必ず十分にうがいを行うようにしましょう。

4-2 指示どおりに正しい吸入方法で吸入しましょう。

まずは、医師の指示どおりに吸入を行うことが大切です。長期管理薬を発作治療薬のように使用したり、指示された回数以上に吸入を行ってしまうと、正しい効果が得られないばかりか、副作用のリスクが高まる危険性があります。

また、様々な吸入器がある中で、使用方法が曖昧なまま使用を続けたり、慣れてきて手順が雑になってしまったりすると、正しく使用していると自分では思っていても、実はしっかり吸入できていないということもあるかもしれません。

使用方法に少しでも不安がある場合や、吸入を続けていても、症状が改善されないような場合には、しっかりと吸入できていない可能性があります。早めに医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

4-3 自己判断で治療を中断しないようにしましょう。

発作が続いている際には、吸入薬など継続して使用できていたものの、発作がしばらく治まると自己判断で治療を中断してしまうという方も多くいらっしゃいます。

しかし、喘息の症状は、長期管理でしっかりと治療を継続することが大切です。自己判断で治療を中止していたところ、突如、発作が起こり、急激に症状が悪化してしまうということもあります。喘息発作は命の危険にもつながることがありますので、自己判断で治療を中断せず、お薬については、必ず主治医と相談するようにしましょう。

5. おわりに

今回は、喘息に治療に用いられる吸入薬・吸入器の種類について主に解説するとともに、吸入薬の使用にあたる注意点なども合わせて説明しました。

日々、喘息の治療薬は進歩しており、様々な種類が出てきています。また、より使いやすいように吸入器も工夫されています。それぞれ、患者さんの症状や背景に合わせて、適切な吸入薬が処方されますので、ご自身が抱えている不安や要望などは、主治医にしっかりと相談するようにしましょう。

喘息の発作は、ご本人、そしてご家族にとっても、非常に苦しく、つらいものです。今回の記事を参考にし、喘息発作に対する不安を少しでも和らげることができれば幸いです。