1.ノロウイルスとは?

1-1. ノロウイルスの原因

ノロウイルスは、ウイルスが原因でおこる感染性胃腸炎のひとつです。感染性胃腸炎の原因となるウイルスは、他に、ロタウイルス、腸管アデノウイルス、アストロウイルス、アイチウルスなどがあります。その他に細菌や寄生虫が原因となることもあります。

特に、ノロウイルスによる食中毒の状況は多く、平成27年の食中毒発生状況によると、食中毒の患者数の割合で、約65%を占めています。
ノロウイルスは1年を通して発生しますが、一般的には、秋から冬にかけて流行します。小さなお子さんだけではなく、成人、ご高齢の方など全年齢にみられます。

感染経路としては、ウイルスに汚染されている食品(カキなど)を摂取することで感染する「経口感染」の他に、感染者の嘔吐物や便などに接触し、ウイルスが付着した手で口に触れることなどで感染する「接触感染」などがあります。
ノロウイルスの感染力は強く、症状が治まってもしばらくは便中にウイルスを出し続けるため、接触により二次感染が拡がり、学校や保育園、幼稚園などで集団感染が起こることもあります。嘔吐物からもうつることがあります。そのため、二次感染を起こさないような予防対策をとることが重要です。

1-2. ノロウイルスの症状

ノロウイルスは、経口で感染すると、ヒトの腸管で増殖します。
嘔吐を繰り返す」「下痢が続く」「腹痛」「発熱」などの症状が現れます。又、下痢や嘔吐が続くと「脱水症状」を起こす可能性があります。
感染しても症状が出ない場合や軽症で済む場合もある一方で、体力が弱っている小さなお子さん、ご高齢の方の場合は、重症化するおそれもあるため、注意が必要です。
感染すると、24〜48時間ほどで発症し、症状は1〜3日程度続き、軽快する場合が多いです。一般的には、病気は治癒し、後遺症が起こるようなことはほとんどありません。

予防ワクチンはある?
現状ですと、ノロウイルスを事前に予防できるような有効なワクチンはありません。ただ、医療は進歩しており、ノロウイルスに有効なワクチンの開発が国内メーカー(武田薬品など)でも臨床試験の段階で進んでいますので、いずれは販売される可能性はあります。
近い将来、流行する季節に、感染、重症のリスクが高い小さなお子さんやご高齢の方、妊婦の方などが事前にワクチン摂取をすることで予防できるようになるかもしれません。

2.ノロウイルスの治療

2-1.ノロウイルスに特効薬はある?

インフルエンザはウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬がありますが、ノロウイルスには、直接有効な抗ウイルス剤というものはありません。
また、抗生物質は菌に対して作用するものなので、ノロウイルスに対しては効果がなく、一般的に処方されることはありません。
そのため、特効薬というものはなく、あくまでも吐き気や腹痛、下痢などの症状をおさえる対症療法が基本です。

2-2. ノロウイルスに処方されるお薬(対症療法)

症状を和らげるための病院から処方されるようなお薬には次のようなものがあります。飲み薬や、小さなお子さんや嘔吐が激しい場合には、「坐薬」など、年齢や症状によってお薬のタイプは変わってきます。

<解熱剤>
熱が高い場合に頓服などで処方されることがあります。お子さんの場合は、平熱が高いこともあり、通常はある程度体温が高くても、ご本人の顔色が良く元気そうでしたら、使用する必要はありません。ご本人の顔色が悪い、ぐったりしている場合には、医師の指示に従って、使用するようにしましょう。

<吐き気止め>
嘔吐がひどいと飲み薬だとうまく飲めない場合もあるため、坐薬で処方されることも多くあります。嘔吐をひどく繰り返す場合には、脱水症状の危険性が高くなるため、医師の指示に従って、使用するようにしましょう。

<整腸剤>
腸内細菌の環境を整えることによって、下痢症状を和らげたりとお腹の不調を整えます。もともとヒトの腸内に住んでいる乳酸菌のお薬なので、安全性は高く、小さなお子さんからご高齢の方まで安心して服用することができます。又、妊娠中や授乳中でも服用することが可能です。

<下痢止め>
下痢が続き、脱水症状の危険性が考えられるときは、医師の判断で処方されることもあります。その場合は指示に従って、服用するようにしましょう。

下痢止めは飲まないほうが良いって本当?

病院でも、下痢止めが処方されることはあまりありません。というのも、早くノロウイルスによる症状を改善させるためには、本来の体の防御反応であるウイルスを早く体外に排出させることが重要とされているためです。そのため、下痢止めを服用してしまうと治りが遅くなってしまう可能性もあります。

特別な理由で処方されることもありますので、その場合は医師の指示に従って服用するようにしましょう。


 

3.注意すべき脱水症状

ノロウイルスは、特効薬はないため、対症療法をしつつ、よく休養し、自然に治癒するのを待つしか手立てはありません。
注意すべきは、高熱、下痢や嘔吐が続いたときに起こりうる「脱水症状」です。小さなお子さんやご高齢の方の場合は、特に注意が必要です。
初期症状としては、おしっこが少ない・出ていない、のどが渇く、くちびるが乾いている、顔色が悪い、ぐったりしているなどがあります。ひどくなると、意識障害やけいれんを引き起こし、命に関わることもあります。

脱水症状の予防としては、こまめに電解質・水分を摂取することで、市販で販売されている経口補水液をおすすめします。

・オーエスワン 大塚製薬
・明治アクアサポート 明治
・Newからだ浸透補水液 アリナミン製薬
・経口補水液 日本調剤
・アクアソリタ 味の素
・アクアライトORS 和光堂

などの経口補水液が薬局・ドラッグストアなどで販売されています。

ただし、具合が悪く嘔吐がひどい場合などは、口から摂取することが難しいことがあります。そのため、脱水症状の初期症状を感じた時点で、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。適切な治療と輸液の点滴によって、電解質・水分を即座に補給する必要があります。

4.二次感染の予防・対策方法

ノロウイルスは、感染力が強く、感染者の便や嘔吐物などとの接触により、第三者に二次感染を引き起こす可能性があります。
そのため、感染者の便や嘔吐物の処理を行う必要がある場合には、注意が必要です。処理を行う場合には、マスク(飛沫を吸入する可能性)と手袋(接触を防ぐ)を装着します。使い捨てのタオル・布等で拭き取り、拭き取ったものは、ビニール袋などに密閉し、速やかに廃棄するようにしましょう。

 

処理した後は、ウイルスが残存している可能性があるため、しっかりと消毒を行う必要があります。アルコール消毒では効果がないため、塩素系の消毒薬が効果的です。家庭用の塩素系の漂白剤を薄めることで代用することができます。また、市販でも、ノロウイルスに効果がある消毒薬が販売されています。消毒した後は、しばらく時間をおき、水拭きするようにしてください。

 

ノロウイルスの感染力は強く、症状が治まっても、1週間以上、場合により約1ヶ月間は、便中にウイルスが出続けると言われているため、ご家族や身近な方で感染者がいる場合には、注意するようにしましょう。

5.おわりに

今回は、ノロウイルスの基礎知識、また、どのようなお薬が処方されるのかについて解説するとともに、感染時に注意すべき脱水症状や、二次感染対策について説明しました。
一般的には、冬に流行するノロウイルスですが、集団感染する可能性もあるため、二次感染を拡げないような対策が必要とされます。ごくわずかのウイルスがはいっただけで感染します。吐物などの処理も注意が必要です。
ワクチンや特効薬はなく、対症療法とともに、しっかりと休養することが大切です。脱水症状に注意して、電解質・水分をしっかり摂取するようにしましょう。症状がひどい場合には、早めに医療機関を受診するようにしましょう。