1. 尿酸値が高くなる原因

高尿酸血症は、血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えるものと定義されています。

 

通常、体内では、毎日、一定量の尿酸が作られ、一定量が腎臓をとおして尿中に排泄されます。

尿酸は古い細胞が死んでこわれたときに、その老廃物として細胞の中の遺伝子を構成していたプリン体が放出、分解され、尿酸がつくられるのです。

またさまざまな身体活動を行うとき、そのエネルギー源として体内にある「ATP」という物質がつかわれますが、このATPもプリン体を含んでいますのでATPが分解されたときにも尿酸が作られます。

この尿酸が作られる量(産生量)と排泄される量(排泄量)のバランスが崩れることによって、血液中の尿酸の量が増え、高尿酸血症となります。
(ちなみに、高尿酸血症のタイプとしては3つに分類され、尿酸が過剰に作られるタイプを「尿酸産生過剰型」、尿酸の排泄が低下するタイプを「尿酸排泄低下型」、両者が混在するタイプを「混在型」といいます。)

産生と排泄のバランスが崩れる原因としては、まだはっきりと解明されているわけではないですが、生まれつきの体質(遺伝的背景)、食生活や飲酒、肥満、ストレスなどの生活習慣の影響、他の病気や薬などが原因で起こる二次的なものなどが挙げられます。

メタボリック症候群を伴いやすいことも多く、動脈硬化の危険因子でもあることが明らかになっています。

 

尿酸値が高いことで起こりやすい「痛風症状」を贅沢病(ぜいたくびょう)と言われることもありますが、単に生活習慣が影響しているわけではなく、生まれつきの体質もあるため、その考慮が必要です。

スポーツ選手などのアスリートであっても尿酸値が高いケースもあるのです。

2. 尿酸値が高いことで起こる合併症

血液中の尿酸の量が過剰になると、尿酸が溶けきれなくなり、針状に結晶化します。この尿酸の結晶が関節など体のあちこちに沈着することによって、様々な合併症を起こします。

・痛風症状(痛風関節炎・痛風結節)
・腎障害
・尿路結石
・メタボリックシンドローム
など

高尿酸血症では、脂質異常症、高血圧、耐糖能異常、肥満などのメタボリックシンドロームが高率に合併することが知られており、こうした合併症が原因で、心筋梗塞、脳梗塞などの深刻な病気になるリスクを高くしていることが推察されています。

高尿酸血症が続いて、関節に炎症が起こり激痛や腫れが生じたもの(急性関節炎)を痛風発作といいます。

 

尿酸値が高いというと、足の親指の付け根に激痛を起こす痛風症状のイメージが強いのですが、実は痛風症状だけではなく、

透析につながるような腎障害を発症したり、心筋梗塞、脳梗塞などの深刻な病気になるリスクを高める可能性がある全身疾患です。

 

そのため、痛風症状がおさまっているから問題無い、もう病院に行かなくて良いと安心するのではなく、しっかりと尿酸値を一定値に下げておくことが大切です。

 

尿路結石が尿管という腎臓と膀胱をつなぐ管につまると、やはり激痛が起こります。尿酸を下げることで、尿酸結晶による尿路結石も予防することができます。痛風の発作も尿路結石も一度経験すると、二度と味わいたくないと思うほどの痛みです。

3. 尿酸値を下げるお薬

参考として、尿酸値を下げるお薬による治療がはじまる基準としては次のものがあります。

 

・コルヒチンは痛風発作の特効薬で、発作の前兆期に飲むと発作の痛みを和らげることができます。痛風発作を起こしている場合には、尿酸値を下げるお薬を使用すると発作を増悪させる可能性があるので、原則、新規投与を開始しません。

・尿酸値が7.0mg/dLより高く、痛風発作を発症したことがある場合

・尿酸値が8.0mg/dL以上で合併症(腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなど)を伴う場合

・合併症がなくても、尿酸値が9.0mg/dLを超えている場合

・痛風発作の再発を防止するためには、尿酸値を下げる目標値は6.0mg/dL以下

 

尿酸値を下げるお薬としては、主に「尿酸生成抑制薬(尿酸が作られる量を減らす)」と「尿酸排泄促進薬(尿酸の排泄を増やす)」の2つのタイプがあります。

(1) 尿酸生成抑制薬:尿酸が過剰に作られている方

体内で、プリン体から尿酸ができる過程の代謝を阻害することによって、尿酸が作られるのを妨げるお薬です。
代表的なお薬は3つあります。

 

・ザイロリック(一般名:アロプリノール)
・フェブリク(一般名:フェブキソスタット)
・ウリアデック、トピロリック(一般名:トピロキソスタット)

 

(2) 尿酸排泄促進薬:尿酸の排泄が低下している方

腎臓にはたらき、尿中に排泄する尿酸の量を増やします。

具体的には、尿細管といわれる部位で、尿酸の再吸収を阻害することによって、尿中に排泄する尿酸の量を増やし、血中の尿酸の量を下げる作用があります。

代表的なお薬(3つ):

・ユリノーム(一般名:ベンズブロマロン)
・ベネシッド(一般名:プロベネシド)
・パラミヂン(一般名:ブコローム)

 

また、尿酸排泄促進薬を服用中は、尿中の尿酸の量が増加して、尿路結石を発症させやすいことがあります。

そのため、尿路結石を防ぐために、次のような尿アルカリ化薬を併用することがあります。水をやや多めに飲むようにすることも大事です。

 

<尿アルカリ化薬>
尿が酸性であるほど、尿酸は結晶化しやすいため、尿をアルカリ性にし、尿酸を溶けやすくして尿路結石を予防します。

代表的なお薬:

・ウラリット(一般名:クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム水和物)

痛風発作に対するお薬

痛風発作に対するお薬としては、「コルヒチン」「鎮痛薬NSAIDs(非ステロイド生抗炎症薬)」「副腎皮質ステロイド」などが用いられます。

<コルヒチン:前兆を感じたときに服用>
痛風発作の前兆(患部に違和感、鈍い痛み、ピリピリなど)を感じた時に服用することで、発作を抑えることができます。

痛風発作がおきるのは、痛風結節のところに白血球が集まってきて、炎症が起きるためと考えられています。

コルヒチンは、それ自体には消炎・鎮痛作用はないとされていますが、炎症を起こす要因となる白血球のはたらきを弱めることで発作を抑え、結果的には痛みを抑える作用があります。

<鎮痛剤NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):発作時の炎症を抑える>
痛風発作による炎症を抑える作用がある、いわゆる痛み止め(消炎鎮痛剤)です。痛風発作が起こってしまったらまず用いられる薬です。

体内の炎症を引き起こす原因となるプロスタグランジンが作られるのを抑えることによって、炎症を和らげる作用があります。

NSAIDsとしては、ロキソニンなどが有名ですが、実は、実際に痛風に保険適用があるNSAIDsは限られています。

代表的なお薬:

・インテバン(一般名;インドメタシン)
・ナイキサン(一般名:ナプロキセン)
・アルボ(一般名:オキサプロジン)
・ニフラン(一般名:プラノプロフェン)

<副腎皮質ステロイド:NSAIDsが無効だったときに>
鎮痛剤NSAIDsが使用できない場合や、無効だった場合、または、多発性に関節炎を生じているような場合には、副腎皮質ステロイドを服用することがあります。

代表的なお薬:

・プレドニゾロン
など

4. お薬は一生飲み続けないといけないのか?

尿酸を下げるお薬が処方された場合、お薬は一生飲み続けないといけないのか?という不安があることでしょう。

実際には、いったん薬をやめると尿酸値が再上昇することも多いので、薬をすぐにやめることはできなこともあります。

 

しかし、2年間はくらい薬を飲み続けて、それをやめても尿酸値が上がらないようであれば、薬を減量したり、中止できる可能性がみえてきます。

 

痛風発作が起きないよう治療の目標値である6.0mg/dL以下となり、長期に渡って管理できそうだと医師が判断した場合には、お薬の減量をはかったり、服用する必要がなくなる可能性はあります。

尿酸が高くなる原因として、生まれつきの体質(遺伝的背景)はあるものの、やはり生活上の習慣を正すことや減量することにより、尿酸値が下がることも多く、また、脂質異常症、高血圧、耐糖能異常、肥満などのメタボリックシンドロームの改善にもつながります。

 

次に、どのようなことに気をつけたほうが良いかを解説します。

(1) 食事療法

厳密にプリン体を摂らない食事を毎日続けることは難しいため、プリン体を多く含む食事を極力控えることが大切です。

 

プリン体を多く含む食品としては、レバー等の動物の内臓、干し椎茸等の乾物、マイワシ、サンマなどの魚の干物などがあります。

 

また、尿酸の排泄を促すためや、尿中の尿酸濃度を低下させるために、水分は多めに摂るようにしましょう。

 

また、過剰なカロリー摂取は、肥満の原因です。肥満傾向のある方の場合は、摂取カロリーを適正化し、減量することが大切です。

(2) 飲酒制限

アルコール飲料は、プリン体を多く含む含まないかとは無関係に、その代謝に関係し、血液中の尿酸値を上昇させるとされています。

そのため、過剰なアルコール飲料の摂取は控えるようにしましょう。

 

また、ご存知の方も多いと思いますが、ビールはプリン体を多く含み、他の酒類と比較すると高カロリーのため、肥満につながる可能性もあります。

お酒を飲む機会が多い方や、多量に飲む習慣がある方は、意識して、飲酒を控えるようにしましょう。

(3) 運動の推奨

運動は、肥満の解消(減量)につながることはもちろんのこと、それに伴い尿酸値にも好影響で、また、メタボリックシンドロームの改善にもつながりなど様々な効果を期待することができます。

 

過度の負荷がかかる運動や無酸素運動は、尿酸値を上昇させる可能性があるため控えるようにしましょう。1日30分以上のウォーキングなどの有酸素運動を定期的に続けることをお勧めします。

 

代表的な有酸素運動としては、早歩き、ゆっくりジョギング、サイクリング、水泳などがあります。

 

例えば、朝に散歩をする、1駅前で降りて歩いていく、できるだけ階段を使うようにする、など、日常生活の中に自然に運動を取り入れることが、続けるためのコツです。まずは、無理のない範囲で、運動する習慣をつけるようにしましょう。

 

医師との相談の上、無理のない範囲で少しずつ行っていくようにしましょう。

5. おわりに

今回は、尿酸値が高くなる原因について解説するとともに、尿酸値を下げるお薬の種類と、お薬だけに頼らない生活習慣の改善法について解説しました。

尿酸が高くなる原因としては、生まれつきの体質(遺伝的背景)はあるものの、それとともに、生活習慣(食事、飲酒、運動)などが影響していることがあります。

 

尿酸を下げるお薬は、説明のとおり何種類かあり、その方のタイプに合わせて適したお薬が処方されます。

また、お薬による治療をはじめるとともに、食事や運動などの生活習慣の改善も心がけていくようにしましょう。

参考:
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版