目次:市販で買える咳止め薬コデイン。薬物依存を防ぐには?

・コデインとは?
・コデインと他の咳止め薬の効果比較
・コデインの副作用
・オピオイドの3つの作用
・オピオイドの代表格「モルヒネ」
・語句の整理:薬物依存・乱用、とは?
・薬物依存を予防するには?専門家の指示に従うことが重要
・まとめ
・参考文献

コデインとは?

コデインは非常に古くから使用されている、咳止め成分の一種です。同じ「コデイン」がそのまま薬の商品名になっているほか、「○○コデ」とつく薬に配合されています (1)。

作用メカニズムとしては、脳において咳を起こす部位 (咳中枢) のはたらきを直接抑えることです (2)。

主に、錠剤と粉薬の形で使用され (1)、特に粉薬は量の調整が簡単なことから、こどもの咳止めとしてもよく使われます。

咳止め薬コデインと他の咳止め薬の効果比較

近年使用されている咳止めは、大まかに分類すると、コデインなどを含む「オピオイド」というグループと、それ以外に分けられます。

「それ以外」の代表格は、「デキストロメトルファン (商品名メジコン)」ですが、これとコデインなどオピオイドの咳に対する効果はあまり変わりがないようです (3, 4)。

咳止め薬コデインの副作用

コデインを含めたオピオイドの副作用のプロフィールは、ほとんど共通しています。
ただし、ものによって程度や頻度が異なります。

具体的な副作用の例は、次の通りです (5)。

●呼吸抑制
●便秘
●薬物依存
●眠気

ところで、副作用として「便秘」を挙げましたが、これは他の薬でよくある「一応、能書には書いてある」便秘とは意味合いが異なります。つまり、この便秘は明らかに薬によるものだということです。

これは、オピオイドに腸の運動を抑制する作用があるためですが (2)、これを逆手に取れば、下痢止めとして使えます。

オピオイドの3つの作用

こうしたわけで、コデインには下痢止めとしての効果もあります。また、オピオイドには痛み止めとしての効果もあるので、コデインが使用されるのは、次の3通りになります (5)。

●咳止め
●痛み止め
●激しい下痢の改善

オピオイドの代表格「モルヒネ」

実は、オピオイドにはもっと有名な薬があります。
それは、いわずと知れた「モルヒネ」です。

「モルヒネって確か麻薬じゃなかったっけ?」と思うかもしれませんが、その通りです。モルヒネをはじめとした麻薬には、ご存知の通り依存性が知られています (6)。さきほど、コデインの副作用として「薬物依存」を挙げたのは、こうした理由からです。

そして、コデインも麻薬の一つに数えられますが、実はこれには例外があります。具体的には、粉薬で濃度が1%以下のものは「家庭麻薬」という分類になり、麻薬としての規制の対象外となります。家庭「麻薬」とありますが、普通の麻薬とは明確に区別されています。

化学構造を見ると、モルヒネとコデインは大変よく似ており、その違いはわずかです (2)。しかし、このわずかな違いが、モルヒネとコデインの効果・副作用の違いとなります。

具体的には、コデインはモルヒネに比べて、痛み止めとしての効果は1/6、眠気は1/4程度とされています (5)。一方で、咳止めとしての効果はモルヒネより強いほか、依存を生じる可能性も低いため、低濃度のものは特別な規制がされていないのです。事実、コデインは市販の咳止めにも入っている成分です。

語句の整理:薬物依存・乱用、とは?

ここで、「薬物依存」や「乱用」など、この記事の中心的テーマとなる語句の整理をします。

乱用 (Abuse)

乱用の定義は、「薬物を社会的許容から逸脱した目的や方法で自己使用すること」です (7)。

つまり、違法薬物の使用などはもちろん、治療目的でもらった薬を意図的にたくさん飲むことなども、乱用にあたります。「依存」との違いは、乱用は「行為」を指す言葉だということです。

薬物依存 (Drug Dependence)

これに対し、「依存」とは「自己コントロールできずに、やめられない状態」をいいます (7)。「状態」であることに注目してください。依存には、「精神依存」と「身体依存」があります。

精神依存

精神依存とは、薬が非常に欲しくなり、自分では抑制が効かなくなった状態をいいます (7)。精神依存だけならば、薬が切れても身体的な症状は通常見られません。

身体依存

一方の身体依存は、長年薬物を摂取した結果、身体が薬のある状態を普通と見なすようになって、薬がなくなったときに何らかの身体症状を起こすようになった状態です (7)。
薬が切れたときには、「離脱症状 (かつては禁断症状とも呼ばれた)」を起こします。具体的には、手の震えや幻覚、意識障害などです。

精神依存と身体依存がそれぞれどの程度かは、薬物の種類によって異なり、例えば精神依存は顕著でも、身体依存はほとんどないと考えられているものもあります (6)。

では、オピオイドはどうかといえば、精神依存・身体依存ともに顕著に生じます (6)。ですから、ここではっきりとお伝えします。「コデインは、依存性のある薬」です。

薬物依存を予防するには?専門家の指示に従うことが重要

ただし、だからといって、コデインやモルヒネが一概に危険である、とは評価できません。
薬の評価は、効果と副作用のバランスで評価すべきものです。これは、オピオイドとて例外ではありません。

確かに、依存性をはじめとした副作用はありますが、コデインは咳止めとして有用なことは先ほども紹介した通りです。また、モルヒネは優れた痛み止めとして、緩和医療などの分野で活躍していることも事実です (8)。

また、がんに対する痛みに対して使っている限り、モルヒネの依存性が問題になることが通常ないのは、医学・薬学の常識となっています (8)。

したがって、結局のところは程度問題であり、ケースバイケースです。こういうと、ずいぶんと投げやりな印象を持つかもしれませんが、だからこそ、担当の専門家 (医師・薬剤師など) の指示に従うことが重要だということです。

薬物依存は予防できます

コデインは、市販薬にも含まれる成分だと書きましたが、それゆえに薬局やドラッグストアで乱用目的に購入するケースが問題になっています (9)。

しかし、これらも用法用量を守って使用している限り、薬物依存を生じることは通常ありません。つまり、適切に使用していれば、薬物依存は予防できます。ですから、もう一度繰り返しますが、専門家の指示に従うことが大切です。

薬のことなら、薬剤師が助けになれます。
ぜひ、身近で頼れる専門家を探してください。

まとめ

■コデインは咳止め・痛み止め・下痢止めの効果を持つ
■コデインは「モルヒネ」などと同じ「オピオイド」に属する
■市販のものは「家庭麻薬」にあたり、麻薬としての規制は受けない
■専門家の指示にしたがって使う限り、通常大きな問題はない
■薬物依存は、予防することができる

参考文献

(1) 龍原徹・澤田康文 ポケット医薬品集2016年版 白文舎
(2) 赤池昭紀 他 疾患別薬理学第4版 廣川書店
(3) Yancy WS Jr, et al. Chest. 2013 Dec;144(6):1827-38. PMID: 23928798
(4) McCrory DC, et al. Assessment and Management of Chronic Cough. PMID: 23367526
(5) コデインリン酸塩散1%「タケダ」 武田薬品工業株式会社
(6) World Health Organization. A Manual on drug dependence.
(7) 厚生労働省 ご家族の薬物問題でお困りの方へ 
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/dl/yakubutu_kazoku.pdf
(8) 日本緩和医療学会 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン
(9) Cooper RJ, et al. BMJ Open. 2013 Jun 20;3(6). pii: e002913. PMID: 23794565