目次:たむしとは?たむしに効果がある市販薬の選び方

・たむしと水虫。原因は同じ真菌
・たむし・水虫の市販薬を使う前に
・たむし・水虫に効く市販薬は、水虫治療薬と同じ?成分について
・たむし・水虫の治療:塗り薬で対処が難しい場合は皮膚科を受診する
・たむし・水虫の薬:塗り薬のタイプ
・たむし・水虫の市販薬使用期間
・まとめ
・参考文献

たむしと水虫。原因は同じ真菌

最初に結論を言えば、たむしと水虫は、どちらも同じ種類の「真菌」が身体にとりついて起こる病気です (1)。真菌とは、「カビ」が属する生物の中の一グループを指す言葉です。他の真菌の例としては、各種キノコや、パンを作るときに役立つ酵母などがあります。真菌は、細菌やウイルスなどと同じ微生物の一種ですが、これらとは明らかに異なる特徴を持っているので、別のグループ分けがなされます。

たむしと水虫の原因となるのは、「皮膚糸状菌 (ひふしじょうきん)」と呼ばれる真菌です。中でも白癬菌(はくせんきん)が有名です。 皮膚糸状菌はその名の通り、顕微鏡で観察すると糸のような形をしており、なおかつ皮膚に取り付くという特徴を持っています。皮膚糸状菌には、いくつかの種類の真菌が含まれますが、その基本的な性質は共通しています。

皮膚糸状菌は、身体の様々な部位の皮膚にとりついて病気を起こします。この皮膚糸状菌によって起こる病気をまとめて「白癬」と呼びます。白癬はよく見られる病気であることから、俗称が存在します。具体的な対応関係は、以下の通りです (2)。

皮膚糸状菌によって起こる病気の俗称

頭部白癬:しらくも
体部白癬:ぜにたむし
股部白癬:いんきんたむし
足白癬:水虫

まとめると、「たむしと水虫は、同じ皮膚糸状菌が原因で生じる病気で、どこに症状が出たかによって呼び名が変わる」ということです。

たむし・水虫 の市販薬を使う前に

水虫の治療に使う薬には、飲み薬のほかに、クリームや液などの塗り薬があります。これらの薬は、基本的に皮膚糸状菌を退治する効果を共通して持っていますから、同じ真菌が原因で起こるたむしにも基本的に有効です。

水虫およびたむしに効果のある市販薬もたくさんありますので、疑わしい症状がある場合にはすぐにでもそれを買って・・・と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。後で詳しく述べますが、こうした場合にすぐに市販薬を使うことは基本的におススメしません。

例えば、体部白癬 (ぜにたむし) は、典型的には丸形で赤みとかゆみを伴う、うろこ状の湿疹を生じます (3)。このように、多くの病気にはある程度決まった症状の現れ方のパターンがあるものです。昨今いろいろな病気の症状などについて書かれたウェブサイトも増えたことから、どの病気がどのような症状を起こすことが多いか、知ることが比較的簡単になっています。

しかし、自分の症状をこれらサイトの情報と突き合わせて、「たむしのように思える」ことをもってすぐに自己判断することは好ましくありません。

なぜなら、皮膚糸状菌がいなくても似たような皮膚の症状を起こす場合もあるからです。その皮膚症状がたむしによるものであることを確定するためには、皮膚組織を顕微鏡で見て、白癬菌を発見するのがもっとも有効です (4)。
もし、皮膚科を受診せずに市販薬で治療をしても、すぐによくなれば結果的に大きな問題はありません。しかしこの場合、良くならなかったときが厄介になります。というのも、もし白癬菌が原因だったとしても、薬の影響で菌が減っており、顕微鏡で調べても発見しにくくなるからです。

つまり、いきなり市販薬を使ってしまうと、病気が長引いたとき、きちんと診察を受けたとしても原因が分からないことがあるのです。

これは水虫やたむしの市販薬に限ったことではありませんが、一般に市販薬を使うメリットとして、病院に受診する時間や手間を省けることが挙げられます。また、症状やそれが起きている部位によっては、診察を受けること自体に心理的な抵抗があるケースも考えられ、こうした場合に市販薬という選択肢があれば、治療開始への障壁が多少緩和されるでしょう。

その一方で、市販薬を使うデメリットとして、さきほど述べた、症状が長引いた場合に正確な診断がしにくくなることが挙げられます。今回取り上げている、水虫やたむしの薬の場合、その後の診断や治療に影響を与える可能性が高いので、市販薬の使用にはより慎重な姿勢が求められるのです。

そのため、過去にたむしになったことのない方が、症状だけから判断して市販薬を使うのはおススメできないのです。最初は皮膚科でしっかりと、確定診断をつけてもらいましょう。

一方、過去に何度かたむしになったことのある方で、かつその再発と思われる場合には、市販薬を使って対処することには、ある程度合理性があると思います。

たむし・水虫に効く市販薬は、水虫治療薬と同じ?成分について

たむしの原因は水虫と同じ皮膚糸状菌ですので、「水虫治療薬」と表示されている市販薬は、たむしにも効果があります。実際、「効能・効果」を見ると、ひっそりと「たむし」とも書かれているはずです。水虫やたむしに効果のある市販薬は、現在ではどれも塗り薬です。

市販薬に含まれている成分は、皮膚糸状菌を退治する成分と、それ以外の成分に分けられます。

皮膚糸状菌を退治する成分には、いろいろな種類があります。具体的には、次のようなものが挙げられます。

●ブテナフィン
●ネチコナゾール
●ビホナゾール
●ラノコナゾール
●ミコナゾール

このようにたくさんの種類があると、どれを使ったらよいのか迷うかもしれません。しかし、成分によって効果が大きく異なることは知られていないので、あまりこだわって選ぶ必要はないでしょう (4)。

そうなると、市販薬を選ぶ上でより参考にすべきは、それ以外の成分ということになります。これらの成分は、病気の原因となる皮膚糸状菌を直接どうにかするわけではありませんが、水虫やたむしによって起こる症状の一部をやわらげる効果などがあります。つまり、薬全体でいえばオマケという位置づけです。あくまでもオマケなのですが、それぞれの製品を特徴づけるうえで比較的強い影響を持つという意味で重要になります。以下に、これらの成分の一例を紹介します。(5)。

皮膚糸状菌を退治する以外の成分

抗ヒスタミン剤

●ジフェンヒドラミン
●クロルフェニラミン
など

その名の通り、「ヒスタミン」という物質のはたらきを抑制する成分です。水虫やたむしに関していえば、ヒスタミンは患部のかゆみや腫れを起こすので、そうした症状を改善する目的で配合されるものです。

局所麻酔成分

●リドカイン
●ジブカイン
など

これも上の抗ヒスタミン剤と同様に、かゆみを抑えることを目的としたものです。両者はどう違うかといえば、作用メカニズムが異なります。局所麻酔成分は、かゆみを伝える神経を一時的に麻痺させることで、かゆみを感じにくくします。かゆみを電気に例えるなら、抗ヒスタミン剤は発電所での発電量を減らす効果、局所麻酔成分は送電に使う電線を切る効果、と表現できます。お分かりのように、完全に対症療法のための成分です。

殺菌成分

●イソプロピルメチルフェノール
●ベンザルコニウム
など

これは、細菌による感染を防ぐものです。すでに何度も述べたように、白癬の原因になるのは皮膚糸状菌という真菌です。そして、これは細菌とは異なります。では、なぜ殺菌成分が含まれているかといえば、主な目的は患部にできた傷などにあとから細菌が入り込むのを防ぐためです。こうしたものを「二次感染」と呼びます。

要するに、殺菌成分はすでに水虫やたむしで弱った皮膚に、別の病原体がつかないようにする、予防目的で配合されているものです。

抗炎症成分

●グリチルレチン酸
など

炎症とは、簡単にいえば赤みや腫れ、痛みを伴った状態です。水虫やたむしの患部も、赤みを持っているケースがありますが、そうした症状を鎮めるための成分です。


このように、いろいろな成分がありますが、ここで注意したいのは、たくさん成分が入っている方がよい、というわけではないことです。たむしによって荒れた皮膚には、これらの成分は刺激となる場合もあり、逆にデメリットにもなるのです。そのため、かゆみといった自覚症状が少ないケースなどでは、皮膚糸状菌を退治する成分のみを含んだ製品の方が好ましいと考えられます。

皮膚糸状菌を退治する成分単独の市販薬

皮膚糸状菌を退治する成分単独の市販薬の例は、以下の通りです (6-8)。最近では、こうした商品は減少傾向にあります。

●ラミシールATクリーム
●ラマストンクリーム
●ブテナロックLスプレー

たむし・水虫の治療:塗り薬で対処が難しい場合は皮膚科を受診する

繰り返しになりますが、市販されているのは、いずれもクリームや液などの塗り薬です。体部白癬や股部白癬なら、外用剤だけでも何とかなるケースが多いといえます (3)。一方で、頭部白癬の場合は、髪の毛が生えている関係上、塗り薬が使用しにくいのが特徴です。また、水虫のうち足の爪にできたもの、俗にいう「爪の水虫」にも塗り薬は効果が低いケースが多いです (4)。というのも、基本的に爪には塗り薬の有効成分が浸透しにくいからです。

このように、同じ白癬でも部位によっても治療方針が異なってきます。塗り薬が効きにくいタイプの場合は、飲み薬による治療が行われることがよくあります (9)。皮膚や爪の上から直接薬を塗ることが難しくても、飲み薬なら血液を介して全身に有効成分を行き渡らせることができるからです。これらの飲み薬に含まれる成分は、基本的に塗り薬と同じような皮膚糸状菌を退治するものです。しかし、飲み薬は市販されている物がないので、市販の塗り薬だけでは対処が難しい場合は皮膚科を受診することをおススメします。

たむし・水虫の薬:塗り薬のタイプ

塗り薬には、以下のようにいくつかのタイプがあります。

●軟膏
●クリーム
●液
●ゲル
●スプレー
●パウダー

種類が豊富なので、いざ市販薬を購入する段階になって、どのタイプがよいのか判断に迷うかもしれません。基本的にはクリームタイプがもっとも無難といえます。その理由は、患部の状態にあまり関係なく使用可能で、べたつきも少なく使用感の観点からも優れているからです。迷った場合は、とりあえずクリームタイプを選択すればよいでしょう。

たむし・水虫の市販薬使用期間

一般に、水虫は自覚症状がなくなっても、皮膚糸状菌を退治しきるにはかなり時間がかかります。これと比較すると、たむしは短い期間で落ち着く傾向にあります (4)。それでも、症状がなくなるまで、2週間くらいは薬を続けてみてください。

ただし、これは市販薬を使用してみて、症状が改善している実感がある場合の話です。しばらく続けてもどうも効果がないように感じる場合には、その症状の原因がたむしであるという推測そのものが誤っている可能性が高いので、早めに皮膚科で本当の原因を探った方がよいでしょう。

まとめ

■たむしと水虫は、どちらも皮膚糸状菌が原因である
■皮膚糸状菌がとりついた場所によって、病気の呼び名が変わる
■たむしや水虫の薬を使うのが初めての場合、皮膚科を受診して確定診断をつけた方がよい
■たむしは部位によっては塗り薬だけでも治療可能である
■たむしの塗り薬は、2週間程度は続けて様子を見るのがよい
■市販の塗り薬で効果がない場合には、すみやかに皮膚科を受診する

参考文献

(1) 東匡伸・小熊惠二 シンプル微生物学改定第5版  南江堂
(2) 山口徹・北原光夫 今日の治療指針2017 医学書院
(3) Ely JW, et al. Am Fam Physician. 2014 Nov 15;90(10):702-10. PMID: 25403034
(4) 渡辺 晋一 他 皮膚真菌症診断・治療ガイドライン 日皮会誌:119(5), 851-862, 2009
(5) 米山博史 OTC医薬品販売のエッセンス じほう
(6) ラミシールATクリーム 添付文書 グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社
(7) ラマストンクリーム 添付文書 佐藤製薬株式会社
(8) ブテナロックLスプレー 添付文書 久光製薬株式会社
(9) Ferrari J, BMJ Clin Evid. 2011 Aug 16;2011. pii: 1715. PMID: 21846413