1.禁煙補助剤でなぜニコチン依存症になってしまうのか

「禁煙をサポートするはずの禁煙補助剤でニコチン依存症になってしまう。」これだけ聞くと本末転倒のような気がしますが、実はけっして不思議なことではないのです。

これを理解するためには、まずニコレットを始めとする市販の禁煙補助剤による禁煙治療の仕組みを知らなくてはなりません。

1-1. ニコレットによる禁煙治療の仕組み

市販のニコチンガムやニコチンパッチによる禁煙治療は、「ニコチン置換療法」と呼ばれる治療方法です。

 

ニコチン置換療法とは、ニコチン不足から生じる「タバコを吸いたい」という気持ちを喫煙以外の方法でおさえ、その後徐々にニコチン量を減らしていく方法です。ニコチンパッチの場合は1日中一定の濃度で体にニコチンを供給し、禁煙時の離脱症状(喫煙欲求やイライラ、頭痛などの症状)をやわらげます。一方でニコチンガムの場合は、喫煙欲求が生じた場合にガムを使用し、離脱症状をやわらげます。

 

なお、ニコチン依存症には、ニコチン不足になった時に体がニコチンを求める「身体的依存」と、喫煙が生活の一部(起床時の一服、食後の一服など)となっているために喫煙習慣をやめられない「心理的依存」という2つの側面があります。ニコチン置換療法では、ニコチンの摂取量を適切にコントロールして身体的依存からの離脱をサポートします。また、喫煙行動を断つことで、習慣化した行為、つまり心理的依存からの脱却もサポートします。

 

このような仕組みでニコチンガムやニコチンパッチは禁煙をサポートしますが、残念ながらタバコを嫌いにさせる効果はありません。また、ニコチンガムについては、タバコの代わりに簡単に口にできること、離脱症状が緩和されること、口寂しさがまぎれることなどからなかなか量を減らせず、ニコチン依存がガムに引き継がれてしまうこともあります。

 

これは、ニコチン置換療法の仕組みやガムの減量方法が正しく理解されていないために生じる「副作用」とも言えます。そこで次の項では、ニコチン依存症がガムに引き継がれないようにするための工夫をご紹介します。

 

1-2. 依存症にならないための工夫

ニコチンガムへの依存を防ぐためには、ガムの減量を確実に行うことが必要となります。

 

ニコチンガムは、禁煙による離脱症状が強い最初の1~2週間は、喫煙要求を感じた時に我慢せず使用することがすすめられています。そして禁煙に慣れてきた1ヶ月前後から、1日の使用量を少しずつ減らしていきます。減量の目安は1週間に1~2個です。

 

減量時に喫煙要求があらわれた場合には、ニコチンガム以外の方法で対処するようにします。対処方法の例としては、以下のようなものがあります。

 

・ニコチンガム以外の普通のガムを噛む
・深呼吸をする
・冷たい水や熱いお茶を飲む
・軽く体を動かす
・シャワーを浴びる
・音楽を聞く
・部屋の片付けをする
・歯を磨く

これらの他、禁煙の目的や効果について家族・知人と話し合うという方法も効果的です。なお、ガムについては、普通のガムでは噛み心地が柔らかすぎて物足りないこともあるので、硬さや味がニコチンガムとよく似ている歯磨きガムを利用するのがおすすめです。

 

なお、ガムの減量ペースには個人差があります。また、「減量の失敗=禁煙の失敗」では必ずしもありません。ニコチン依存症は治せる病気です。他人と比較する必要はありませんので、無理のないペースで確実にガムを減らしていきましょう。

 

2.ニコレットをやめられない時の対処方法

前項のような工夫をしてもニコチンガムがやめられず、毎日ガムを噛み続けているという方の場合はすでに依存が生じている可能性が否定できません。実際、海外ではニコチンガム使用者の10数%~40%近くが依存症となっており、1年以上に渡ってガムを使用続けているという報告があります。

しかし、ニコチンガムへの依存はニコチン依存症に他なりません。ここからは、ニコチンガム依存からの離脱について解説します。

 

2-1. 1日の使用個数が少ない場合


まず、ニコチンガムの減量にある程度成功したものの1日1~2個程度のガムをどうしてもやめることができないという方の場合です。

このような方の場合、身体的依存はすでになく、心理的依存でガムをやめられない可能性があります。

 

ガムを噛むタイミングが決まっている場合には、ニコチンガム以外の方法で対処してみましょう。ガムを噛むタイミングが決まっていない場合には、喫煙欲求を誘発しやすい環境(喫煙者と一緒に過ごす・酒の席に同席するなど)を避けるようにしましょう。

 

また、「いきなりガムなしでは不安だ」という場合には、ガムを半分に切って口に含むといった工夫も有効です。そして、万が一の喫煙欲求のためにニコチンガムを持ち歩く場合には、少なめの個数にしましょう。

 

2-2. 1日の使用個数が多い場合

ニコチンガムの減量がうまく進まず、ガムを口にしていないと離脱症状があらわれる方の場合は、ニコチン依存症がガムに引き継がれている可能性があります。「自力ではもうやめられない」と考える場合には、医療機関を受診して禁煙治療を受けましょう。

 

医療機関では、禁煙治療としてニコチン置換療法だけではなく、ニコチンを含まない飲み薬(商品名:チャンピックス)による治療を受けることができます。

 

チャンピックスには、ニコチン離脱症状を軽減するだけでなく、ニコチン摂取による満足感を妨げて喫煙要求をおさえる働きがあります。そのため、ニコチン置換療法で禁煙ができなかった方やニコチンガムへの依存がみられる方への治療にも役立つとされています。

 

ただし、チャンピックスが保険適用で使用できるのは「ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助」のみです。ニコチンガム依存の治療は保険診療の範囲外となるため、自費診療となります。とはいえ、安価とは言えないニコチンガムを長期間大量に消費することに比べれば、治療費は高いものではありません。

 

どうしてもニコチンガムをやめられない場合には医療機関を受診し、医師と相談しながら離脱を目指しましょう。

 

3.「ニコレット禁煙支援センター」について

最後に、「ニコレット禁煙支援センター」についてご紹介します。当該センターは、ニコレットによる禁煙をサポートする電話相談窓口です。こちらでは、ニコレットの製品情報や正しい使い方だけでなく、禁煙に関する疑問への回答、アドバイスや励ましなどさまざまなサポートを行っています。

 

ニコレットの減らし方がよくわからない場合やなかなかやめられない場合、禁煙を目指していたのにタバコを吸ってしまった場合など、自分だけでは解決が難しい問題が生じた時に利用すれば、次のステップに進む大きな足がかりとなります。

 

ニコレット禁煙支援センターの電話番号はフリーダイヤル0120-250103です(受付時間:平日9:00~17:00)。困った時は積極的に利用してアドバイスをもらいましょう。

4.おわりに

市販されているニコレット(ニコチンガム)は禁煙補助剤として非常に有用なアイテムですが、減量に失敗するとニコチンへの依存がガムに引き継がれ、ニコチンガムへの依存が生じることがあります。


ニコチンガムを長期間大量に消費している場合には、依存が生じている可能性があるので医療機関を受診して診察を受けましょう。医療機関では、ニコチンを含まない飲み薬による治療を受けることができます。


ニコチンガム使用中に不安点・疑問点などが生じた場合には、ニコレット禁煙支援センターを利用するのも一つの方法です。一人で悩まず、上手にニコチン依存症から離脱しましょう。