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目次:新しい睡眠薬べルソムラ®錠①特徴と基本的な服用方法
■これまでの睡眠薬
・ベンゾジアゼピン系の問題点
■世界初のオレキシン受容体拮抗剤ベルソムラ®
・覚醒を司る神経伝達物質オレキシン
・オレキシン受容体拮抗薬の働き
・ベルソムラ®の特徴
■ベルソムラ®の服用方法や注意点
・用量(使用量)について
・飲み方(用法)について
■おわりに
■参考
これまでの睡眠薬
ベルソムラ®の作用について詳しく説明する前に、従来使用されてきた睡眠薬について簡単にまとめてみます。
これまでの睡眠薬には、バルビツール酸系やベンゾジアゼピン系薬と呼ばれるタイプのものがあります。
脳内で働く神経伝達物質の一つにγ-アミノ酪酸(GABA:Gamma-AminoButyric Acid)があります。GABAは主に中枢神経を抑制する働きを持っています。バルビツール酸系薬やベンゾジアゼピン系薬はGABAが作用するGABA受容体に結合し、GABAの働きを強めることで鎮静・催眠作用を発揮します。
現在主流であるベンゾジアゼピン系薬は催眠作用の強さ・効果の持続時間が異なる様々な成分が開発されており、不眠症により使い分けられています。また、睡眠薬としてだけではなく、筋弛緩作用や抗不安作用などの効果を期待して使用されることもあります。
ベンゾジアゼピン系の問題点
様々な効果を持つベンゾジアゼピン系薬ではありますが、それが副作用として現れてしまうことがあります。持ち越し効果と言って翌朝まで眠気が残るケース、筋弛緩による転倒や怪我、集中力の低下や物忘れなどを起こしてしまうケースなどが知られています。
また、ベンゾジアゼピン系薬によって得られる睡眠はあまり質が良くないとも言われています。これはベンゾジアゼピン系薬が浅い眠りを増加させ、レム睡眠を短くしてしまう特性を持っているためです。
さらに、決して多くはありませんが、長期連用により依存性や耐性が生じることが問題になることもあります。
世界初のオレキシン受容体拮抗剤ベルソムラ®
ベルソムラ®の主成分であるスボレキサントは世界初のオレキシン受容体拮抗剤です。このオレキシン受容体拮抗剤はこれまでの睡眠薬とどう違うのでしょうか?
覚醒を司る神経伝達物質オレキシン
オレキシンは脳内で働く神経伝達物質で様々な働きを持ちますが、その代表的な役割の一つに覚醒中枢への作用1)があります。オレキシンにより活性化される「覚醒中枢の働き」が「睡眠中枢の働き」を上回ることで睡眠中の人は目を覚まします。
オレキシンの放出は体内時計により調節され、夜間は少なく、朝になると多くなります。夜は脳内のオレキシンの量が少なくなるため、覚醒中枢よりも睡眠中枢の働きが強くなることで眠くなります。逆に朝になると、脳内にオレキシンが放出され、中枢神経よりも覚醒神経が活発になり、目が覚めます。
オレキシン受容体拮抗薬の働き
オレキシン受容体拮抗薬であるベルソムラ®の有効成分であるスボレキサントは脳内のオレキシン受容体に結合することで、オレキシンがオレキシン受容体に結合するのを邪魔します。この働きにより、オレキシンの働きを抑えます。結果、「覚醒中枢の働き」が「睡眠中枢の働き」よりも弱くなり、睡眠を促すというわけです。
ベルソムラ®の特徴
ベルソムラ®はこれまでの睡眠薬とは異なる作用で睡眠薬としての効果を発揮します。この新しい作用により、これまでの睡眠薬にはない特徴を持っています。
より自然に近い睡眠
これまでの睡眠薬は睡眠中枢の働きを高めることで効果を発揮していました。覚醒系の興奮の有無に関わらず睡眠を引き起こす、いわば無理やり眠りに導く作用です。これに対し、ベルソムラ®は覚醒中枢の働きを抑えることで効果を発揮します。脳が覚醒しようとするのを抑えることで、より自然な眠りに近い効果を発揮するのではないかと言われています。
耐性や依存性がない
ベンゾジアピン系薬を長期連用することで耐性や依存性が生じてしまうことがあります。耐性というのは長く使用しているうちに薬の効果が減弱してしまうこと。依存性は長く使用していた結果、薬をやめることで睡眠障害などの離脱症状が出現することを言います。
ベルソムラ®は臨床試験において、耐性や依存性が形成されないことが報告2)されています。
ベルソムラ®の服用方法や注意点
ここからはベルソムラ®の服用方法や注意点についてまとめていきたいと思います。
用量(使用量)について
ベルソムラ®錠は10mg、15mg、20mgの3種類の規格が存在します。(10mgは2016年12月に新たに販売開始)先ずは、これらの使い分けについて解説します。
ベルソムラ®の添付文書を見てみると、『用法及び用量』の項には次のように記載されています。
『通常、成人にはスボレキサントとして1日1回20mgを、高齢者には1日1回15mgを就寝直前に経口投与する。』3)
つまり、高齢者※は15mg、高齢者以外の方は20mgを基本に服用するということです。(※添付文書における高齢者とは一般に65歳以上の方を指します)高齢者の方が少ない量を服用するように決められていますが、これは臨床試験において、高齢者とそうでない人のデータを比較した結果、高齢者の方が血中濃度が高くなり、それが下がるのにかかる時間(半減期)も長くなっていたことに由来します。
ただし、高齢者以外の方でも症状に応じて15mgを服用することもあります。
併用薬に応じて使用される10mg
「あれ?20mgと15mgの使い分けはわかったけど、もう1つの10mgはどういう時に使うの?」と思いますよね。
先に述べたように10mgは後から追加された規格です。10mgの使い分けについては添付文書の『用法及び用量に関連する使用上の注意』に次のように記載されています。
『CYP3Aを阻害する薬剤 (ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等) との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあるため、これらの薬剤を併用する場合は1日1回10mgへの減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。』3)
あとで詳しく解説しますが、ベルソムラ®錠には注意が必要な飲み合わせが存在し、その飲み合わせによってベルソムラ®錠の有効成分であるスボレキサントの血中濃度が高くなってしまう場合があります。血中濃度が高くなりすぎてしまうと、期待する効果以外の副作用が出現してしまうリスクが高まります。ですので、そういった飲み合わせが生じる場合はベルソムラ®錠を少なめの10mgにすることで血中濃度が高くなりすぎないようにするということですね。
飲み方(用法)について
上にも書いたように、ベルソムラ®は1日1回、寝る直前に1錠を服用します。
服用後は効果の持続する朝まで眠ることが大切です。途中で一度起きて仕事等を行う場合は服用するべきではありません。
また、もう一つ大事なポイントとして、食事中や食事の直後の服用は避けるようにしましょう。ベルソムラ®の有効成分であるスボレキサントの血中濃度は服用後1〜2時間後にピークを迎えます。ですが、食事の後にベルソムラ®を服用するとその時間が1時間くらい遅れてしまうことが報告されています。そのため、スムーズな入眠効果を期待できるように服用前(睡眠前)の食事は避けることが望ましいのです。
おわりに
今回はベルソムラ®の特徴や基本的な服用方法についてまとめてみました。次回は気になる副作用や飲み合わせ、そのほかの注意点についてまとめていきます。
参考
1)Gotter AL et al. Pharmacol Rev 2012;64(3):389-420
2)ベルソムラ錠 インタビューフォーム MSD株式会社
3)ベルソムラ錠添付文書 MSD株式会社