1.フロモックス®の作用
フロモックス®︎というのはあくまでも薬品名で、実際に効果を発揮する有効成分は「セフカペンピボキシル」と言います。
このセフカペンピボキシルを主成分に開発された飲み薬がフロモックス®︎ということになります。
1-1. フロモックス®はどんなときに使う?
フロモックス®︎は“セフェム系”とよばれる抗生物質の一種です。もっと詳しくいうと、セフェム系の中でも様々な菌に対して効果を発揮するよう改良が重ねられた第三世代セフェム系抗生物質というグループに属する医薬品です。
フロモックス®︎の幅広い効果は医療保険上も認められていています。添付文書に記載されている効果を発揮する菌の種類を見てみると・・・
セフカペンに感性の
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、インフルエンザ菌、ペプトストレプトコッカス属、バクテロイデス属、プレボテラ属(プレボテラ・ビビアを除く)、アクネ菌
と非常に多くの種類の菌に対して効果を期待できることがわかります。
※淋菌は成人のみの適応で小児に対する適応はありません。
※最初に「セフカペンの感性の」とついていますが、セフカペンが反応するという意味で、「セフカペンの耐性菌は除く」という意味と理解してください。
医療保険ではどのような疾患にその薬を使用できるかということが決められています。
フロモックス®︎の添付文書を見てみると・・・
- 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
- 外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍
- 咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎,扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染
- 膀胱炎、腎盂腎炎
- 尿道炎、子宮頸管炎
- 胆嚢炎、胆管炎
- バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎
- 涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎
- 外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎(、猩紅熱)
- 歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
となっており、かなり多くの病気に対して使用することが可能です。
※小児は下線のみの適応です。猩紅熱は小児のみの適応となっています。
このように添付文書に記載されている内容だけでも、フロモックス®は様々な病気に対して効果を期待できる抗生物質ということがわかると思います。
1-2. セフェム系抗生物質のはたらき
では、フロモックス®︎はどのようなはたらきで細菌を倒すことができるのでしょうか?細菌だけ倒して、人間の細胞を破壊しないのは不思議じゃありませんか?
人間や動物を構成する細胞の一番外側は細胞膜と呼ばれる組織です。これに対して、細菌は細胞壁と呼ばれる組織で形を維持しています。
フロモックス®︎を始めとするセフェム系抗生物質はこの細胞壁を作るための過程を邪魔することで効果を発揮します。セフェム系抗生物質が細胞壁の合成を邪魔することで、細菌は分裂して増えることができなくなったり、形を維持することが難しくなったりして死んでしまいます。人間の細胞には細胞壁が存在しないため、フロモックス®︎による影響を受けません。
フロモックス®︎はこのようなはたらきにより、細菌のみに効果を発揮するというわけです。
本来飲めない薬を飲めるようにしている?
フロモックス®︎の成分はセフカペンピボキシルと最初に書きましたが、実は抗生物質として効果を発揮するのは「セフカペン」という物質です。
セフカペンはそのまま口から飲んでもほとんど体の中には吸収することができないため、飲み薬としては適していません。
そこで、セフカペンの吸収を高めるために「ピバリン酸」という物質をくっつけたのが「セフカペンピボキシル」です。「ピボキシル」が名前に含まれているということは、人工的に口から飲んでも吸収できるように加工しているというわけです。
2.フロモックス®の種類と飲み方
ここまでフロモックス®︎の作用について説明してきました。ここからはフロモックス®︎という名前を持つ医薬品にはどんな種類のものがあるのか、またそれぞれの飲み方はどうなっているか、ジェネリック医薬品は存在するのかということについて解説していきます。
2-1. どんな剤型がある?
フロモックス®︎には、「錠剤」と「細粒」の二種類の剤型が存在します。
錠剤は、「フロモックス®︎錠100mg」と「フロモックス®︎錠75mg」の2種類が発売されています。
錠剤は主に成人に対して使用されますが、体重に応じて小児に使用することも可能です。
成人の場合は「1回100mgを1日3回食後に服用する(毎食後にフロモックス®︎錠100mgを1錠ずつ飲む)」のが基本となります。治りにくい場合には「1回150mgを1日3回食後に飲む(毎食後にフロモックス®︎錠75mgを2錠ずつ飲む)」ことも可能です。
細粒は、1種類のみで「フロモックス®︎小児用細粒100mg」が発売されています。名前の通り基本的には小児に使用されるように作られていますが、何らかの理由で錠剤を飲むのが難しい場合は成人が使用することも可能です。
成人の飲み方は錠剤と同じで、小児の場合は、「体重1kgあたり3mgの量を1日3回食後に服用する」ようになっています。
小児用の粉薬ということで、いちご風味に甘く味付けられていますが、口の中に長く含んでいると苦味が出てくるので注意が必要です。
2-2. フロモックス®のジェネリック医薬品
フロモックス®︎にはジェネリック医薬品(後発医薬品)が存在し、発売されています。
ジェネリック医薬品の場合、その成分名であるセフカペンピボキシル塩酸塩を商品名として各社から発売されています。
ジェネリック医薬品を選択することで、お薬代も安くなりますし、医療費の削減にもつながるので積極的に利用したいところですね。
3.フロモックス®の副作用や注意点
完全に安全なお薬は存在しません。どんな薬にもリスクは少なからず存在します。
ここからはフロモックス®︎の注意点についてまとめてみたいと思います。
3-1. 腸内環境の変化
フロモックス®︎は、細菌を倒すが人間の細胞は攻撃しないと説明しました。ですが、細菌を倒すことが必ずしもいいこととは限りません。人体にとって有害な細菌のみを倒してくれればいいのですが、特に悪さをしていない細菌や人間にとって役に立つはたらきをする細菌も倒してしまう可能性があります。
特に影響を受けやすいのが腸内細菌です。フロモックス®︎は口から飲み込むことで体内に吸収されて効果を発揮しますが、飲み込んだ全てが吸収されるわけではありません。
多くは腸内を通って便とともに排泄されます。その過程で、通り道である腸内の細菌を倒してしまうことがあります。腸内細菌の変化は腸内環境の変化に繋がります。結果として、下痢や便秘を引き起こしてしまうことがあります。
また、長期間服用することで、腸内でビタミンKやビタミンBを作る細菌を倒してしまい、ビタミン不足になってしまう可能性もあります。
3-2. アナフィラキシーショック
非常に稀ではありますが、セフェム系抗生物質に対して強いアレルギー反応を示す場合があり、「アナフィラキシーショック」という命に関わる症状が引き起こされることがあります。
初期症状として、不快感,口内異常感,喘鳴,眩暈,便意,耳鳴,発汗,呼吸困難,血圧低下などの症状が短時間に複数現れた場合は、すぐ医師や薬剤師に相談してください。
3-3. 腎臓の悪い人は注意
フロモックス®︎の成分であるセフカペンは腎臓を通じて尿と一緒に排泄されます。
ですので、腎臓の機能が低下している場合、なかなか排泄されずに体内に薬が溜まってしまう場合があります。
腎機能が低下していたり、透析を受けたりしている場合は飲み方や飲む量を調節する場合があります。腎臓に疾患を抱えている場合には、必ず事前に医師に伝えるようにしましょう。
3-4. 小児の低カルニチン血症
フロモックス®︎の抗生物質としての本体はセフカペンという成分で、吸収をよくするために「ピボキシル」をくっつけていると説明しました。実はこの「ピボキシル」の部分に大きな問題があります。
フロモックス®︎を飲むと、有効成分のセフカペンピボキシルが体内に吸収されます。その後、セフカペンピボキシルは代謝を受け、ピボキシルの部分が外れて、セフカペンとピバリン酸に分かれます。このピバリン酸を体の外に排出されるためには、体内にあるカルニチンという物質が必要になります。つまり、フロモックス®︎を飲むことで体内にピバリン酸が多く入ってしまい、そのため、カルニチンが過剰に消費されてしまいます。
その結果、引き起こされるのが「低カルニチン血症」です。
人間は食事から糖分を摂取しますが、糖分が足りない場合、脂肪を分解して糖に変換しています。カルニチンは脂肪を糖へ変換するために必要な物質です。低カルニチン血症になることで、脂肪を糖へ変換することができずに低血糖を起こしてしまう危険があるんです。
特に、小児の場合は成人に比べて体内のカルニチンの量が少なく、低カルニチン血症を起こしやすいので注意が必要になります。
3-5. 耐性菌の問題
抗生物質は細菌を倒してくれる便利な薬ですが、細菌もただ倒されるわけではなく、抗生物質に負けないように学習し、「耐性」を獲得していきます。
抗生物質により影響を受け、それでも生き残った細菌の中の一部が耐性を獲得してしまいます。よく「抗生物質は最後まで飲み切りましょう」と言われるのは、中途半端に飲むのをやめて、生き残った細菌が耐性を獲得してしまうのを防ぐためです。
4.まとめ
今回はセフェム系抗生物質の一つであるフロモックス®︎についてまとめました。幅広い菌に対して効果を発揮し、ひどい副作用も起こりにくいため、処方される機会が多くなっています。注意点を知った上で、きちんと服用し、適切な効果が発揮されるように服用してください。
参考資料:
・フロモックス錠75mg/フロモックス錠100mg 添付文書 塩野義製薬株式会社
・フロモックス小児用細粒100mg 添付文書 塩野義製薬株式会社
・PMDAからの医薬品適正使用のお願い No.8 2012年4月
