1.何から何まで似ている二つの薬

メンソレータムとメンターム、似たような名前の薬ですが、似ているのは名前だけではないんです。二つの商品を比較してみましょう。

 

メンソレータム軟膏c

製造販売元(輸入元):ロート製薬(メンソレータム社より輸入)

効能:ひび、あかぎれ、しもやけ、かゆみ

成分・分量:dl-カンフル9.60%、l-メントール1.35%、ユーカリ油1.50%(添加物として、サリチル酸メチル、テレビン油、酸化チタン、黄色ワセリンを含有)

分類:第3類医薬品

包装・デザイン:今竹七郎デザインのリトルナース(ナースちゃん)が単色で描かれた缶


近江兄弟社メンターム

製造販売元(輸入元):ロート製薬(メンソレータム社より輸入)

効能:すり傷、やけど、しもやけ、虫さされ、そり傷、切傷、打撲傷、神経痛、かゆみ、靴ずれ、ひび、あかぎれ、筋肉ロイマチス、皮膚炎症

成分・分量:dl-カンフル9.60%、l-メントール1.35%、ユーカリ油1.30%(添加物として、白色ワセリン66.44%、黄色ワセリン16.63%、パラフィン4.00%、酸化チタン0.10%、テレビン油0.36%、サリチル酸メチル0.22%を含有)

分類:第3類医薬品

包装・デザイン:今竹七郎デザインのメンタームキッド(アポロン)が単色で描かれた缶


ドラッグストアやオンラインの通販サイトで実際に商品を見てもらえればわかりますが、デザインの雰囲気が非常によく似ています。同じ方がキャラクターをデザインしていることもありますが、緑(青)単色で白地に描かれたデザインはまさに兄弟のような雰囲気です。

 

成分・分量についてユーカリ油の分量や添加物については違いがありますが、ほぼ同じ。

 

効能はメンタームの方が多くなっていますが、主たる部分は同じです。第三類医薬品に分類されているところまで同じですね。

 

2.メンソレータムとメンタームの歴史

そっくりな二つの薬。それもそのはず、メンソレータムとメンタームはまさに兄弟といっても過言ではない関係を持っているんです。その歴史を簡単にまとめてみます。

 

メンソレータムの歴史は19世紀まで遡り、1984 年にアメリカで開発されました。

1920年、近江兄弟社(当時はヴォーリズ合名会社)がメンソレータムの国内販売権を取得し、輸入販売を開始します。

その後、近江兄弟社はメンソレータムの国内製造販売権も取得し、自社で製造販売を行うようになります。

1974年、経営難に陥った近江兄弟社が倒産、メンソレータムの製造販売権はメンソレータム社に変換されました。

その後、ロート製薬が日本におけるメンソレータムの製造販売権を取得し、国内製造販売を開始します。(現在ではメンソレータム社はロート製薬に買収され、傘下に)

一度倒産した近江兄弟社は再建し、メンソレータムを製造していた設備を利用して自社製品としてメンタームの製造販売を開始。

メンソレータムはロート製薬の製品、メンタームは近江兄弟社の製品として現在でも日本で発売されている。

中身は全く同じではないですが、元々日本でメンソレータムを作っていた会社が独自で作ったのがメンタームということですね。ということで、メンソレータムとメンタームが兄弟のような関係ということをお分かりになっていただけたでしょうか?

 

3.メンソレータムとメンタームの効果

メンソレータムとメンターム。そのほとんどは添加物であるワセリンです。使用されている有効成分の内容は同じです。ユーカリ油の割合こそ微妙に異なりますが、dl-カンフル、l-メントールについては割合まで同じです。

それぞれの添付文書にはその効果について以下のように記載されています。

 

メンソレータム軟膏c

皮ふの表面は天然の皮ふ保護作用を持つ皮脂で覆われています。この皮脂の働きを補い、すぐれた血液循環作用と消炎作用を発揮します。

⒈  皮ふの表面を被覆して外界の刺激を和らげるとともに、血液の循環を良くして、ひび、あかぎれを改善します。

⒉  特に、カンフル、メントール、ユーカリ油は局所刺激作用により、しもやけ、かゆみの症状を軽減し、不快感を除きます。


近江兄弟社メンターム

皮膚の表面を被覆して外側からの刺激からお肌を守ります。また血行の改善や消炎、鎮痛、鎮痒、殺菌・防腐作用があるので肌荒れ、やけど、カミソリ負け、すり傷、虫さされ、打撲傷などの治療薬としてお使いいただけます。

添付文書に書かれている内容がほとんどですが、各成分ごとにもう少し詳しく説明します。

 

4.保湿剤・保護剤としてのワセリン

両製品とも、そのほとんどは添加物であるワセリンです。メンソレータムの場合は黄色ワセリンのみ、メンタームは白色ワセリンと黄色ワセリンです。黄色ワセリンと白色ワセリンの違いは精製純度です。黄色ワセリンより白色ワセリンの方が精製純度が高く、不純物が少なくなっています。(ちなみに、さらに精製純度を高めたものがプロペトです)

 

ワセリンは原油からなる油脂性の基剤(有効成分を溶かし皮膚に浸透させるためのベースとなる賦形剤)として様々な軟膏で使用されています。単独で使用した場合には、乾燥などによりバリア機能が低下した皮膚を覆うことで保護したり、水分蒸発を防ぐことで保湿効果を発揮したりします。

 

後に述べますが、メンソレータムとメンタームに含まれる成分の薬効はそれほど強いものではないので、基剤として使用されているワセリンの保湿・保護効果自体の効果も大切な役割を持ちます。

 

4-1. dl-カンフルの働き

dl-カンフルは楠(クスノキ)に含まれる成分で樟脳(しょうのう)と呼ばれるものです。樹脂系の刺激臭を持ちます。衣類の防虫剤にも使用されるので古いタンスの匂いと感じる人もいるかもしれません。局所血行促進作用、鎮痛作用、鎮痒作用を持っています。

 

4-2. l-メントールの働き

薄荷やミントに多く含まれる、いわゆるハッカの香りの成分です。局所血管拡張作用や皮膚刺激による鎮痒作用を持っています。

 

4-3. ユーカリ油の働き

ユーカリ油はその名の通り、ユーカリ属の樹木から抽出された精油成分です。消炎作用、解熱鎮痛作用、殺菌作用を持っています。

 

5.ブランドとしての各製品

今回の記事では「メンソレータム軟膏c」と「近江兄弟社メンターム」について詳しく紹介しました。ですが、メンソレータムやメンタームの名前を持つ製品は非常に多く、医薬品だけでなく医薬部外品まで多岐に渡ります。

 

その多くは元となっている「メンソレータム軟膏c」や「近江兄弟社メンターム」とは異なる性質を持っており、「メンソレータム」と「メンターム」がただの製品名ではなく、ブランドネームとして両社ならびに日本人から愛着を持たれているといことがわかります。

 

今回紹介した内容はあくまでも「メンソレータム軟膏c」と「近江兄弟社メンターム」についてなのでその点は注意してください。

 

参考資料

メンソレータム軟膏c 添付文書

近江兄弟社メンターム 添付文書

ロート製薬 商品情報サイト(https://jp.rohto.com

近江兄弟社ホームページ(http://www.omibh.co.jp