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2024年10月から先発医薬品が高くなる?選定療養について徹底解説
選定療養とは
選定療養とは、患者が治療には直接影響を及ぼさない特別な医療サービスや治療方法を選ぶ際に追加料金が発生する制度のことです。一般的に治療費用には健康保険が適用されますが、患者の選択によって利用するサービス部分については全額自己負担となります。選定療養の代表例としては、入院時の差額ベッド代や予約診療、大病院の初診料などがあります。
2024年10月には、新たに「長期収載品の選定療養制度」が始まり、後発医薬品がある先発医薬品を選んだ場合に、後発医薬品との差額の一部を患者が自己負担することとなりました。
後発医薬品(ジェネリック)との差額の4分の1相当が自己負担に
「長期収載品の選定療養」が始まったことで、先発医薬品を希望する場合は患者の自己負担が増加します。
選定療養費にあたる自己負担は、先発医薬品と最も高価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)の薬価差の4分の1相当です。選定療養費は課税対象となるため、消費税が加算されます。
また、選定療養部分を引いた薬剤料に対して保険割合に応じた自己負担が発生します。
なお、公費負担医療の対象となる場合であっても、選定療養費を支払わなければなりません。また、診療にかかる費用や調剤に関連する費用は、これまで通りに支払う必要があります。
具体的にはいくら高くなる?
先発医薬品(長期収載品)が500円、後発医薬品が250円、患者の保険割合が3割の場合、9月までは150円、10月からは200円の自己負担となり、先発医薬品を選ぶことで50円増加します。具体的な計算式は、以下のとおりです。
9月まで:500円(先発医薬品)×3割=150円
10月から:[250円(後発医薬品との差額)×4分の1+消費税=68.75円]+[437.5円(500円から選定療養部分を引いた金額)×3割(保険割合)=131.25円]=200円
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2024年10月から法改正により一部のお薬について、患者様の希望で、同じ有効成分の後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある「先発医薬品」を希望した場合、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金が追加で発生いたします。
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なぜ自己負担が増える?
2024年10月に始まった「長期収載品の選定療養制度」の目的は、高騰している医療費を抑えることです。先発医薬品を希望する患者に自己負担を増やす仕組みを導入することで、先発医薬品の使用にかかる医療費の増加を抑制するとともに、価格の安い後発医薬品の利用を促進する効果が期待されます。
本制度の対象となるのは、後発医薬品が販売されて5年以上経過した薬や、すでに後発医薬品が広く使われている医薬品です。具体的な対象品目については、厚生労働省のホームページ上で確認できます。
※後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について
先発医薬品とは?
先発医薬品とは、特定の病気や症状に対して新たに開発された医薬品で、特許権によって製薬会社が一定期間独占的に販売できる製品を指します。一般的には、臨床試験を経て承認を受けた後に、臨床現場で治療薬として使用されます。しばらくすると有効成分の特許が切れ、その他の製薬会社から価格の安いジェネリック医薬品が販売され始めます。
後発医薬品(ジェネリック)とは?
ジェネリック医薬品は、先発品の特許が切れた後に販売される医薬品で、先発品と同じ有効成分を持っています。価格が先発品よりも低く設定されていることが多く、患者の経済的な負担を軽減できるのが大きなメリットです。ジェネリック医薬品は、先発品と同じ品質基準を満たす必要があり、販売承認を得るためには規制機関による検査を通過する必要があります。ただし、医薬品の外見や添加物、効能・効果が先発医薬品と異なる場合があるため、ジェネリック医薬品に抵抗を感じる患者や適応症がない場合などジェネリック医薬品を使用できないケースもあります。
それぞれのメリット・デメリット
それぞれのメリット・デメリットについて、以下で紹介いたします。それぞれのメリット・デメリットを理解することで適切な選択ができますよ。
先発医薬品のメリット・デメリット
メリット
・効果と信頼性が高い
先発医薬品は、臨床試験を通じて効果と安全性が厳格に検証されているため、医師や患者から高い信頼を得ています。また、使用実績が豊富にあるため、安心して使用できる点が大きなメリットです。
・ブランドの信頼がある
多くの先発品は知名度の高いブランドとして知られています。先発医薬品を製造する製薬会社も名だたる企業が多く、高品質な製品を提供します。
・新しい作用機序の医薬品で治療を受けられる
先発品の中には、従来の医薬品にはない作用機序や効果を有するものがあります。そういった先発医薬品を使用すれば、これまでの医薬品ではうまく治療できなかった病気に対して、より効果的な治療を行える可能性があります。
デメリット
・高コスト
先発医薬品は、開発コストが高いため、販売価格も高く設定されています。そのため、治療にかかる経済的な負担が大きく、特に高額な薬を必要とする患者には大きな問題となる場合もあるでしょう。
また、先発医薬品は特許により一定期間独占的に販売されるため、高価格が維持されやすいのが特徴です。特許が切れるまでは、後発医薬品が販売されないため、価格が下がらない状況が続きます。
後発医薬品(ジェネリック)のメリット・デメリット
メリット
・コスト削減が可能
ジェネリック医薬品は、先発医薬品の特許が切れた後に販売されるため、研究開発費用がかからず、価格が安価に設定されています。そのため、患者の医療費負担が軽減され、経済的な負担を気にせずに治療を続けやすいのが特徴です。
・先発医薬品と同等の効果を持つ
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を持っており、治療効果は基本的に同等と言えるでしょう。厚生労働省や医薬品規制機関によって、有効性や安全性など品質の同一性が確認されています。
・医療費の抑制に役立つ
近年、日本では医療費の増大が課題となっています。ジェネリック医薬品が普及すると、国全体の医療費抑制につながり、社会保障制度にとっても大きなメリットがあります。
デメリット
・認知度が低い
ジェネリック医薬品は、先発医薬品のような知名度がないため、使用するにあたり不安を抱える患者がいるかもしれません。医薬品としての知名度や品質を重視する患者の中には、先発医薬品を希望する方もいます。
・先発医薬品と効能・効果が異なる場合がある
先発医薬品とジェネリック医薬品は有効成分が同じであるものの、効能・効果が異なる場合があります。そのため、治療中の疾患によってはジェネリック医薬品を使用できないケースもあります。
『先発医薬品高くなる』『先発医薬品自己負担』に関するQ&A
『ジェネリック 先発 違い』』『先発医薬品自己負担』についてよく疑問に思われる内容をまとめました。
一方、後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、先発医薬品の特許が切れた後に販売される医薬品で、先発医薬品と同じ有効成分を使用するため、新たな開発費用が不要です。そのため、3〜6割ほど安く販売されています。
さらに、2024年10月から長期収載品の選定療養制度が開始されたため、一部の先発医薬品を選ぶと、これまで以上に自己負担が高くなりました。
・同じ有効成分の後発医薬品が販売されている
・後発医薬品が薬価収載されてから5年経過している、もしくは後発医薬品が薬価収載されてから5年以内の品目のうち後発医薬品置き換え率が50%以上のもの
・先発医薬品の薬価が、後発医薬品のうち最も薬価の高い医薬品の薬価を超えている
具体的な医薬品名については、厚生労働省のホームページで公開されているため、確認するとよいでしょう。
・効能・効果が異なる
・治療効果に差が生じると思われる
・ガイドライン等で後発医薬品への切り替えが推奨されていない
・後発医薬品の剤形では服用しにくい、一包化できないなど服用上の不都合がある
まとめ
長期収載品の選定療養が開始されたことで、先発医薬品を選ぶ場合、医療費の自己負担が増加します。本制度は高騰している医療費を抑制するためだけではなく、後発医薬品を推進することを目的としています。選定療養制度によってどのくらい自己負担額が変わるのか知りたい場合には、病院や薬局に問い合わせる必要があるでしょう。選定療養制度を正しく理解して、自身にあった治療方針を選びましょう。
※掲載内容は執筆時点での情報です。