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タイレノールA
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タイレノールとカロナールの違い
最初に結論をいえば、タイレノールとカロナールの中身は同じです。
具体的には、両者とも「アセトアミノフェン」という有効成分を含む痛み止め・熱さましです。有効成分は同じなのに名前が違う理由は、それぞれ販売するメーカーが独自につけた商品の名前だからです。
ちなみに、「タイレノール」はアセトアミノフェンの化学名である「N-acetyl-p-aminophenol」から「tyl」と「enol」を抜き出してくっつけたものとされます。一方、「カロナール」は痛みや熱が「軽くなる」ことに由来します (1)。要するに、ダジャレです。
また、余談ながらアセトアミノフェンは国際的には「paracetamol (パラセタモール)」とも呼ばれます。「なんだ、どちらも同じものか。じゃあこのページはこれ以上読む必要はないな」と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。今ここを読んでくださっている皆さんに、この機会に知っておいていただきたいことがあります。
それは、アセトアミノフェンを使う「量」についてです。どのような薬でも、使用にあたって量に注意するのは当然のことですが、アセトアミノフェンに関してはこの点がより重要なポイントになるからです。
その理由について述べる前に、アセトアミノフェンがどのような薬なのか、もう少し説明する必要がありそうです。
安全性の高さから汎用されている
アセトアミノフェンは、とても使用頻度の高い薬です。これは、痛み止めや熱さましとして十分な効果を持ちながら、同時に安全性も高いからです。
冒頭で挙げた商品名のうち、タイレノールは薬局・薬店で普通に購入できる、いわゆる「市販薬」です。これまでの経験上、十分に安全であることが明らかだからこそ、このように誰でも簡単に手に取れるようになっているわけです。
一方のカロナールは病院で処方してもらう薬、専門的には「医療用医薬品」です。
現在、日本で流通しているタイレノールは「タイレノールA」という商品の1種類で、これには1錠あたり300mgのアセトアミノフェンが含まれます (2)。カロナールについては、錠剤に「200」「300」「500」の3種類があり、それぞれ1錠あたり200mg、300mg、500mgのアセトアミノフェンを含んでいます (3)。
つまりが、タイレノールAはカロナール錠300の市販薬バージョンと思えばよいことになります。
ちなみに、カロナールには他にもシロップ・粉薬・坐薬などのバリエーションもありますが、今回の話とは直接的に関係ないので詳細は割愛します。「そういうものもあるんだ」くらいに思っておいてください。
1日あたりの上限量が決められている
アセトアミノフェンには1日あたりの上限量が定められています。まずは、医療用のカロナールの方から説明します。これまで何度か述べているように、アセトアミノフェンを使う目的は大きく
①痛み止め
②解熱
の2つです。上限量はこれらの使用目的によって異なり、①の場合は1日4000mgまで、②は1日1500mgまでと決められています (3)。他方のタイレノールは、使用目的に関係なく1日900mgまでです (2)。これは、市販薬として自己判断で使う関係上、より保守的な設定をしているためです。
こうした上限量は、どんな薬にも定められているわけではありません。むしろ、設定されている方が例外的といえるでしょう。
では、なぜアセトアミノフェンではこうした措置が取られているのか。理由はいくつかありますが、もっとも大きなものは肝臓に対する毒性です (4)。この副作用は一般に重篤で、ひとたび起こすと入院しての治療を要することも珍しくありません。
先ほど書いたように、アセトアミノフェンは基本的に安全性の高い薬ですが、過剰に服用するとこうした問題を生じます。
だからこそ、上限量を設定することでそれを避けているわけです。特に、アルコールをたくさん飲む人や栄養状態の悪い人の場合は、肝臓に対する毒性が強く現れやすいため、一層の注意を払う必要があります。
タイレノール・カロナールと同じ成分を含む薬
アセトアミノフェンの飲み過ぎが危険なことは、たった今説明した通りです。
読者の中には「要するに、決められた用法・用量を守ればいいんだろう」と感じている方もいることでしょう。もちろんそれは大切なことなのですが、私がアセトアミノフェンの量に注意するよう繰り返し強調しているのには、もう1つ大きな理由があります。
それは、アセトアミノフェンは他の薬にも含まれることのある成分だからです。ここでいう「他の薬にも含まれる」とは、タイレノールとカロナールの関係のように名前違いの同じ薬がいくつかあるということではなく、ある薬に複数の有効成分が含まれそのうちの一つがアセトアミノフェン、という意味です (こうした薬のことを「配合剤」と呼びます)。
具体的には、医療用医薬品の配合剤のうちアセトアミノフェンを含んだものとして、以下のようなものが挙げられます。
・PL配合顆粒
・SG配合顆粒
・カフコデN配合錠
・トラムセット配合錠
・ピーエイ配合錠
実際には、これらの名前・メーカー違いの同一成分の薬も存在しますので、もっと種類が多いことになります。市販薬についても列挙しようかと思ったのですが、あまりにも数が多すぎるためここではしません。
多くの風邪薬などに含まれていると紹介するにとどめます。
つまり、一見しただけではアセトアミノフェンが含まれていることがわかりにくい薬がたくさんあり、これらを同時に使用することで自覚なく危険な量を服用してしまう可能性があるのです。
先ほど書いたように、アセトアミノフェンを含んだ薬を一覧として紹介するのは難しいので、使用する前に身近な薬剤師にたずねることを推奨します。
他の痛み止め・熱さましとの違い
NSAIDs (「エヌセイズ」と読みます) と呼ばれるもので、日本語では「非ステロイド性抗炎症薬」といいます。NSAIDsにはたくさんの種類があり、これらはほぼ共通の効果と作用メカニズムを持っています。
これは、アセトアミノフェンとどのような違いがあるのでしょうか。以下の観点からそれぞれ説明します。
・治療効果
・副作用
・妊娠中の使用
治療効果はほぼ類似する
治療効果とはすなわち、薬の効き目のことです。これについては、アセトアミノフェンとNSAIDsでほとんど同様と考えて差し支えありません。
厳密にいえば、アセトアミノフェンは「炎症」を抑える効果がほとんどないため、患部の腫れなどを鎮めるに不向きなどの差はありますが、痛み止めまたは熱さましとして使う上で、この点が深刻な問題につながることはほとんどないでしょう。
他には、痛みの部位や原因によってどちらの薬が効きやすいかに、若干の差異が認められることがあります。一例として、変形性関節症という病気に伴う痛みの場合、NSAIDsの効果が高い可能性が示されています (5)。
ともあれ、これはあくまで一般論であり、実際には個人差が大きいものです。つまりが、両方を試して自分に合うものを使えばそれでよいのです。
副作用はアセトアミノフェンのほうが少なめ
次は安全性、すなわち副作用について。こちらは、アセトアミノフェンの方が有利であると示唆するデータが多い傾向にあります。
NSAIDsの問題として、胃を荒らすことが挙げられます。これは、胃の粘膜を守る効果を持つ「プロスタグランジン」という物質の量を、NSAIDsが減らすからです。
一方、アセトアミノフェンはプロスタグランジンにほとんど影響しないので、こうした問題が少ないというのが理論的な根拠です。実際に調べてみても、おおむねその通りの結果です。
同じNSAIDsでも、薬の種類によって胃に対する副作用の頻度はまちまちなのですが、ある調査ではアセトアミノフェンはNSAIDsのうちこうした副作用がもっとも少ない薬とほぼ同じ頻度でした (6)。
アセトアミノフェンは妊娠中も比較的安全
NSAIDsは、妊娠中に使用するのは好ましくありません。羊水の減少や、一部の先天性奇形などのリスクを高めることが知られているからです (7)。
もちろん、薬の影響は妊娠してからどのくらいの期間が経過しているのかによって異なりますが、可能であれば避けた方がよいでしょう。
他方、アセトアミノフェンはNSAIDsと比較して、妊娠期間中でも影響が少ないと考えられています (8)。近年では、アセトアミノフェンでも早産などのリスクが高まる可能性が示されるようになり、妊娠中に使用しても一切ノーリスクとはいい難い状態になりました (7)。
しかしながら、NSAIDsと比較すれば、相対的に安全であることは依然としていえると思います。
まとめ
一部、特徴的な副作用などもあるものの、タイレノールやカロナールは上記の注意点を踏まえれば極めて安全かつ効果的な薬です。
知らないうちに過量投与にならないように、不明な点はかかりつけの薬剤師にご相談ください。
■タイレノールとカロナールはいずれもアセトアミノフェンを有効成分とする痛み止め・熱さましである
■基本的に安全性は高いが、一定以上の量を服用すると肝臓などに悪影響を生じる
■アセトアミノフェンは様々な薬に配合されているため、意図せず過量投与になりやすい
■類似する薬にNSAIDsがあるが、アセトアミノフェンの方が多くのケースで安全に使用できる
参考文献
・1. カロナール錠 インタビューフォーム あゆみ製薬株式会社
・2. タイレノールA 添付文書 東亜薬品(株)
・3. カロナール錠 添付文書 あゆみ製薬株式会社
・4. Jaeschke H, Expert Opin Drug Metab Toxicol. 2005 Oct;1(3):389-397. PMID: 16863451
・5. Towheed TE, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2006 Jan 25;(1):CD004257. PMID: 16437479
・6. Moore N, et al. Postgrad Med. 2018 Mar;130(2):188-199. PMID: 29417856
・7. Burdan F, et al. Pharmacol Rep. 2012;64(3):521-7. PMID: 22814005
・8. Rebordosa C, et al. Am J Obstet Gynecol. 2008 Feb;198(2):178.e1-7. PMID: 18226618
※掲載内容は執筆時点での情報です。