1.ベトネベート軟膏とは?

1-1. ベトネベート軟膏の成分と作用

ベトネベート軟膏は生体内で働いている副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド)の構造に似せて人工的に合成されたベタメタゾン吉草酸エステルを主成分としたステロイド塗り薬です。

 

ステロイドは様々な遺伝子産物の合成に影響することで多様な生理作用を示します。特に炎症に関わる免疫細胞の機能や炎症物質の産生を抑えることで抗炎症作用を示します。

 

多様な薬理作用を示すステロイドは医薬品として色々な使われ方をしますが、ベトネベート軟膏は皮膚に塗ることで湿疹や皮膚炎、皮膚搔痒症、蕁麻疹、虫刺され、やけどやケロイドを含む熱傷、薬疹・中毒症(薬を内服、注射することで起こる発疹など)、円形脱毛症、様々な皮膚の自己免疫疾患(乾癬、慢性円板状エリテマトーデス)などの疾患に効果を示します。これらの皮膚疾患は免疫細胞が皮膚で起こす炎症反応を主体とする病態と考えられています。

 

1-2. ステロイド塗り薬の中での強さと位置づけ

症状、塗る場所、年齢によって適した強さのステロイド塗り薬が使い分けられています。ステロイドは効力の強いものから、「最強(Strongest)」、「かなり強い(Very strong)」、「強い(Strong)」、「中等度(Mild)」、「弱い(Weak)」の5段階に分けられます。

 

ベトネベート軟膏は、この中で「強い(Strong)」に分類されるステロイド塗り薬です。

 

アトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、重症な皮疹では「最強」から「強い」ステロイドが、中等度の皮疹では「強い」あるいは「中等度」のステロイドが使用されます。

 

また症状が改善され皮疹が軽症になると副作用を避けるために「中等度」以下のステロイドが使われます。顔や頸、陰部は皮膚が薄くステロイド塗り薬が皮膚に浸透しやすいため副作用を生じやすく「中等度」以下のステロイドが使用されますが、重症の皮膚炎では、より強いステロイド塗り薬が用いられることもあります。

 

乳幼児や小児ではステロイド塗り薬の効果が強くなりやすく、重症あるいは中等度の皮疹では成人で使用するものより1ランク弱いステロイドを選択しますが、効果が得られない場合は、より強いステロイドが使われます。

 

1-3. Nとの違いについて

ベトネベートN軟膏には、ステロイド成分の他に抗菌薬が配合されています。

 

炎症を抑えるベトネベート軟膏は免疫抑制作用を併せ持っているため細菌、真菌、ウイルスなどの感染症を防ぐ免疫力を弱め感染を悪化させます。そのため皮膚感染症にベトネベート軟膏を単独で使用することは避けなければなりませんが、一方で、感染によって起こる皮膚炎症も治療する必要があります。

 

この場合は抗菌薬(一般的に「抗生物質」と呼ばれています)で事前に処置するか抗菌薬とベトネベート軟膏を併用して使用する必要があります。皮膚感染のある炎症を治療する目的でベトネベート軟膏に抗菌薬を配合したベトネベートN軟膏が使用されます。

 

1-4. ベトネベート軟膏の使い方

ベトネベート軟膏は患部の汚れや前回に塗った薬を洗い流してから新しい薬を1日に1回~数回塗布します。

 

医師から特別に指示される場合を除きベトネベート軟膏を塗った部分をラップなどで包む密封法は避けるようして下さい。密封法では単純に塗布した量より多量のベトネベートが体内に入り込み全身的な副作用が生じるリスクがあります。

 

また、ニキビに対してはベトネベート軟膏を含むステロイド塗り薬は効果が無い事が海外の臨床試験で明らかとなっていますので副作用の点からも使用は控えてください。

 

妊娠中、授乳中にステロイド塗り薬を使用することが安全であるとアトピー性皮膚炎診療ガイドラインに示されていますが、海外の臨床研究では強いステロイド塗り薬を大量に長期間使用した場合に胎児の発育が遅れる傾向があることが示唆されています。妊娠中、授乳中のベトネベート軟膏を大量あるいは長期間で使用することは避けてください。

 

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リンデロンv軟膏とはどう違う?

 

ベテネベート軟膏と同じベタメタゾン吉草酸エステルを主成分とする「強い」ステロイド塗り薬に分類される薬にリンデロンv軟膏があります。日本で発売された年は、ベトネベート軟膏はグラクソ・スミスクライン社によって1965年に、リンデロンv軟膏は塩野義製薬株式会社によって1966年です。薬としての効果・効能、副作用、用法・用量は同じです。

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2.ベトネベート軟膏の副作用と注意点

2-1. ベトネベート軟膏の注意すべき副作用

まぶたに塗布すると眼圧の上昇、緑内障や後嚢白内障を起こす危険性があります。

また全身に大量、長期間塗布することでも緑内障や後嚢白内障を起こすことがあります。

 

ステロイドであるベトネベート軟膏には免疫抑制作用があるため皮膚の感染症をおこしやすくします。また、ベトネベート軟膏を長期間にわたって使用することで皮膚が薄くなり皮膚萎縮が、皮膚の毛細血管が拡がることで紅くなるなど皮膚症状が現れます。色素が抜けることや多毛などの副作用も報告されています。

 

2-2. 使用上の注意点(塗る場所、塗る量など)

ベトネベート軟膏はステロイドの強さとして3番目の「強い(Strong)」に分類されております。皮膚のうすい顔、頸、わきの下には一般的には弱いステロイド塗り薬が用いられますが、重症の皮疹などでベテネベート軟膏を使用する場合には副作用が生じる危険性があるので多く使い過ぎないようにしてください。

 

また眼科用には使用しないでください。

 

化膿した場所にベテネベート軟膏を単独で塗ると皮膚感染を悪化させる危険性があるため使用を控えてください。感染した皮膚には抗菌薬とベテネベート軟膏、あるいは抗菌薬が配合されているベトネベート軟膏Nを使用しましょう。

 

ベトネベート軟膏はやけどの発赤や腫れを軽減しますが、そのまま使用すると皮膚の再生が遅れることが知られています。そのため表皮までのやけどにはベトネベート軟膏の使用は有効ですが、真皮までのやけどに対しては使用を避けてください。

 

ベテネベート軟膏を多量に長期間にわたり使用することや、医師の指示無くベトネベート軟膏を塗った部分をラップで包むなどの密封法も全身性の副作用を起こすので止めてください。

 

また化粧ののりを良くするので化粧の下にベテネベート軟膏を塗る女性がいますが使用を重ねることで皮膚が薄くなり顔に毛細血管が浮き出るようになりますので治療以外の目的で使用しないでください。

 

3.ベトネベート軟膏は市販で購入できる?

ベトネベートN軟膏とベトネベートクリームは病院の処方箋なしで一般のドラッグストアや薬店で市販薬として購入できます。

 

ベトネベートN軟膏→ ベトネベートN軟膏AS【指定第2類医薬品】

ベトネベートクリーム→ ベトネベートクリームS【指定第2類医薬品】

 

医療用医薬品と同成分、同じ量比率で含まれています。


ベトネベートN軟膏の取扱店舗を見る

 

一方で、ベトネベート軟膏は病院で処方せんが無いと入手できない医療用医薬品です。

 

このような状況は医薬品の有効性と安全性、セルフメディケーション(自己服用)の必要度を考慮して医療用医薬品を市販薬にスイッチすることがベトネベート軟膏Nとベテネベートクリームでは認定済みですがベテネベート軟膏はまだ認定されていないために起こります。

 

4.おわりに

今回は薬の添付文書とインタビューフォーム、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016」、「今日の治療薬」を参考にベトネベート軟膏について解説しました。ベテネベート軟膏は適切な使用方法を守ることで皮膚疾患を改善できる塗り薬なので怖がらずに使用してください。

 

一方で誤った使い方によって副作用が出ることや症状を悪化させることもあるので注意してください。またベトネベート軟膏を使用することで皮膚に色素沈着が起こることがありますが、これはベトネベート軟膏の副作用ではなく炎症が治まった時に生じる変化です。

 

色素沈着は自然に治ることが多いのですが、続く場合には医師に相談して色素沈着を改善するビタミン剤などを処方してもらってください。