目次
ぜんそくとは
ぜんそくでよくみられる症状
咳や痰、息切れや胸苦しさ、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という特徴的な呼吸音(喘鳴)がします。これらの中では、咳がもっとも高頻度にみられる症状です。- 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音
- 息切れ、胸苦しさ
- 咳、痰
症状が起こりやすいタイミング
- 夜間や早朝に起こりやすい
- かぜ、運動、気候の変化や冷気、たばこの煙、ストレス、アレルゲン曝露、大気汚染、香水や化粧品の成分などが誘因になって症状がでることがある
ぜんそくの発症原因
個体要因
- 家族歴・遺伝的要因…近親者に喘息患者がいると発症頻度が高くなる
- 性差…小児ぜんそくは男児の方が多く、成人に向け女性の比率が高くなる
- アレルギー要因(アトピー要因)…アレルゲン(アレルギーの原因になる物質)に対するIgE 抗体 を作りやすく、アレルギー疾患になりやすい体質
- 肥満…肥満指数(Body mass index: BMI)が高いほどぜんそくを発症するリスクが高いとされる
※IgE抗体…身体のなかに入ってきたアレルギーの原因物質(アレルゲン)に対して働きかけ、アレルギー反応を起こす抗体
環境要因
- アレルゲンへの曝露
- 呼吸器感染症…ウイルスや細菌感染などがきっかけとなりぜんそくを引き起こす場合がある
- 喫煙(受動喫煙含む)
- 大気汚染
成人ぜんそくの特徴
- 非アトピー型が多い
- 成人ぜんそくの有病率は、約6%~10%が罹患している
- 成人になって初めて症状が出るぜんそくは、成人ぜんそく全体の70~80%
- 治療を継続し症状を抑えれば、健康な方と同じように生活することが可能
- 肥満はぜんそく悪化の要因とされ、肥満で気道が過敏になり炎症が起きやすいといわれている
ぜんそくはアレルギーが関与するアトピー型とアレルギーの原因物質であるアレルゲンを特定できないタイプの非アトピー型がありますが、大人になってから発症するぜんそくは非アトピー型が多いとされます。
非アトピー型ぜんそくでは、喫煙、呼吸器感染症、メタボリックシンドローム・肥満、気象の変化、大気汚染や煙、ストレス、アルコール、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、β遮断薬など様々な原因でぜんそく発作が誘発されます。
アトピー型ぜんそくでは、以下に示した様々なアレルゲンが関与します。そのため、原因となるアレルゲンへの曝露を避けることが重要です。
・吸入性アレルゲン…ダニの死骸やふん、かび、人・ペットの毛やふけ、花粉、ほこりなど
・食物性アレルゲン…小麦粉、たまご、そばなど
・接触性アレルゲン…塗料や建材の化学物質、衣服、化粧品等
アトピー型でも非アトピー型でもぜんそくを発症するとどちらも気道の慢性炎症を生じ、このような慢性炎症がぜんそくの病態とされています。
そのため、アトピー型でも、非アトピー型でも気動の慢性炎症を改善するための治療を行います。
気道の炎症とは
ポイント
- 症状がなくても気道の炎症は続いています
- ぜんそく治療は症状がないときも継続し、炎症を抑えることが大切です
症状が現れていない時もぜんそく患者さんの気道では、常に炎症が起こっています。
「症状がないから」と自己判断で治療を中止してしまうと、慢性化が進みぜんそくが悪化してしまいます。自己判断せず、医師に相談しながらしっかりと治療を続けましょう。
気道のつくり
気道とは、呼吸をした時に空気が通る管のことです。このうち、鼻から喉(喉頭)までが「上気道」、それより下が「下気道」です。ぜんそくの炎症は、下気道の気管支に生じます。

炎症 ~ぜんそくでの気道の変化~
ぜんそく患者さんの気道ではリンパ球、好酸球、マスト細胞など様々な炎症細胞により2型炎症と呼ばれる慢性の炎症を生じます。いったんこのような炎症を起こすと気道は敏感となり、少しの刺激に対しても炎症が悪化してぜんそく症状が見られます。ダニやたばこの煙などの刺激により炎症が生じると、粘膜がむくみ、平滑筋が収縮し、痰がたまるなどして気道が狭くなります。また、ぜんそくの発作を繰り返したり、自己判断で発作時のみ治療を繰り返すなどして気道の慢性炎症が持続すると、気道のリモデリングを引き起こします。

気道のリモデリングとは、気道内の粘膜が徐々に厚くなり、内部が狭くなっていくことをいいます。
気道のリモデリングが進むと、発作がおさまってまっても気道の中が狭いままになり、「いつも苦しい」状態になります。
自覚症状がなくても炎症を抑える治療をしないと気道の内側では炎症が進みリモデリングを早めてしまうので、症状のない時にも炎症をおさめる治療を続けることが重要です。軽症の患者さんは治療を中断しがちなので、発作がなく調子がいい時こそ、しっかり治療すべきです。
ぜんそくの検査
ぜんそくの主な検査方法を目的ごとに紹介します。
■呼吸機能をみる検査
スパイロメトリー・・・息を吸ったり吐いたりして肺気量(肺の中の空気の出入り)や息を吐く速さを調べます。気道の狭窄や気動のりモデリングによる肺気量を調べます。
■アレルギーや炎症の有無を調べる検査
<アレルゲンを特定する>
血液検査・・・血液に含まれるアレルギーにかかわる物質「IgE抗体」のタイプや量を調べる。
<炎症の有無を調べる>
血液検査・・・ぜんそくによる炎症では、白血球の一種である「好酸球」が増えるため、血中にどのくらい好酸球が含まれているかを調べます。
呼気NO検査・・・気道に炎症があると、吐く息に「一酸化窒素(NO)」がたくさん含まれるため、その量が多いとぜんそくが疑われます(アレルギー性鼻炎や上気道の炎症でも、数値は高くなることがあります)。
気管支ぜんそくでは、これらの検査を行うことにより、どのようなタイプのぜんそくかの鑑別を行います。
特定のアレルゲンが関与していることがわかれば、そのアレルゲンを避けることが重要です。アレルギーが関わっている「アトピー型喘息」ではIg Eが高値となったり、特別な抗原にに対するIgEが陽性になります。呼吸器の症状があってアレルギー検査が陽性になったり、血液の中の好酸球が増加したり呼気N Oが増加するとぜんそくの可能性が高くなりますが、症状などを合わせて総合的にぜんそくかどうかを判断します。血中の好酸球数や呼気N O検査は気道炎症の状態を反映するので、これらを定期的に検査することにより気道炎症のコントロールの状態を判断して治療を行なっていきます。
ぜんそくの重症度
ぜんそくの重症度は表に示したように症状と呼吸機能から軽症間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型の4段階に分けられ、重症度毎に治療内容は異なります。症状や呼吸機能から医師が重症度を判断し、治療方針を決めていきます。
適切な治療を行うと薬のおかげで症状が落ち着いて、ぜんそく症状の頻度や強度が軽快します。ただここで注意しなければいけないのが、症状が出ない=治ったということではない点です。ぜんそくの症状が軽快しても勘違いして自己判断で治療を中止しないということが重要です。治療を中断すると気道炎症が悪化して再度症状が悪化するので、医師の指導のもとに気道の炎症を抑える治療を継続して症状を抑えて健康な人と同様の生活が送れるようにすることが重要です。
ぜんそくの重症度分類

重症度に合わせて、医師と治療方針や目標を決めていきます。ぜんそくの治療では、使う薬のタイプは決まっており、重症度に合わせてくすりの組み合わせや用量を調節します。
自覚症状が治療方針にも反映されるため、日々の症状を記録し、正確に医師に伝えましょう。
まず、発作を起こさずに生活を楽しむことを目指し、気道の炎症をおこさないよう症状をコントロールしていきましょう。
また、調子が良くても、ついつい休薬したり、診察をキャンセルしたりせず、診察を受けましょう。
参考文献
・喘息予防・管理ガイドライン2021
・喘息診療実践ガイドライン
・「ぜんそく」のことがよくわかる本
・玉置 淳「肥満が喘息に与える影響とその対策」耳鼻免疫アレルギー 33(2):20,2015
・ERCA(環境再生保全機構)HP 成人ぜん息の基礎知識
・福冨友馬ら 本邦における病院通院成人喘息患者の実態調査、アレルギー56、2010より引用
※掲載内容は執筆時点での情報です。