目次
アトピー性皮膚炎とは
アトピーの治療の目標設定
日本皮膚科学会のガイドラインでは、「治療薬を適切に使って症状がないか、症状があっても日常生活に支障がない状態を維持していくこと」を目標としています。実は医師としては、薬をゼロにすることが目標ではなく、適切に薬を使いながら限りなく症状をゼロにすることを目指しています。これは高血圧や心臓病などの慢性疾患も薬を使ってコントロールするので似ています。患者さん個人としては、まずは治療薬を使って皮膚症状でほとんど悩むことのない生活を手に入れましょう(寛解導入と言います)。さらに医師の指導のもと、必要最低限の治療で良い状態を上手にキープできるようになりましょう。保湿剤でのスキンケアがメインで維持できるようになれば嬉しいですね。

アトピーの重症度
病気全体としての重症度は、皮膚症状とその体表面積の割合で定義されます。Severity Scoring of Atopic Dermatitis(SCORAD)とEczema Area and Severity Index(EASI)が国際的によく使われる指標ですが、一般の方には馴染みがないので、今回はそれぞれの皮膚症状の重症度について簡単にまとめます。

アトピーの治療方法
アトピー性皮膚炎は体質的なものにしても環境的なものにしても、原因が1つに絞れないのが厄介なところです。対策も1つだけではうまくいかないことが多いため、アトピーの治療には、下記のような治療の三本柱があります。

薬物療法
標準治療の3本柱の1つが薬物療法で、皮膚の炎症を抑えることを目的としています。皮膚の炎症をとる治療薬は以下の通りです。

皮膚症状の重症度によって治療のステップが異なります。軽症~中等症の場合は塗り薬や抗ヒスタミン薬の飲み薬などを使います。中等症~重症で皮膚症状の面積が大きく塗り薬だけではコントロールが難しい場合は、その他の飲み薬や注射薬を使うこともあります。これらを上手く組み合わせて起こっている炎症を速やかに抑えることが大切です (寛解導入)。

■薬の期間/頻度と量
正しい治療のためには、服薬の「期間・頻度」と「量」を守ることが大切です。
薬の服用期間/頻度 ~プロアクティブ療法~
アトピー性皮膚炎は皮膚症状を繰り返すので、寛解を維持するためにプロアクティブ療法を行います。これは症状が良くなってからも治療薬を計画的に使い続けて、皮膚症状のない状態を維持する治療戦略です。状態に応じて最低限の薬となるよう微調整するので、薬の副作用も避けやすいというメリットもあります。

■薬の量
塗り薬が基本の治療となりますが、正しい量を塗れているでしょうか?
成人の人差し指の先から第一関節まで薬を乗せた量を1FTUと言い、口径5mm程度のチューブタイプの軟膏やクリームでは、1FTU=約0.5g、これは、成人の手のひら2枚分の面積に塗るのに適した量になります。塗り薬の効果が得られやすい分量ですので実際にやってみてください。なお、ローションタイプの場合は1円玉大に出すと1FTUとなります。保湿剤を塗り終えた後、「ティッシュペーパーがくっつく程度」というのも使用量の目安になります。

医療の進歩
ここ最近のアトピー性皮膚炎の治療薬の進歩は目覚ましく、ステロイド以外の塗り薬の選択肢が増えたり、JAK阻害薬の飲み薬の種類が増えたり、皮下注射の薬がほかにも開発されたりしています。
前向きに治療を続けても症状が改善しないときは、あなたにとって最適な治療法をもう一度医師と相談してみるのもいいかもしれません。

スキンケアと保湿
日々のスキンケアや保湿で皮膚のバリア機能と、水分量を補ってあげることが大切です。湿疹まではいかないけれど乾燥して痒みがあるタイプの方は、定期的な保湿をすると、外界からの刺激に対して肌が過剰な反応をしなくて済み、湿疹化するのを予防できるでしょう。季節によって、保湿剤をローションタイプやクリームタイプなど、使用感で使い分けるのもおすすめです。
スキンケアのタイミングと頻度
1日1回より1日2回の保湿剤外用の方が、保湿効果が高いと言われています。特に入浴後はしばらくすると乾燥してしまうので、早めに全身に保湿剤を塗りましょう。〇塗り方
まず手を清潔にしてください。適量を手に出して、手のひらで優しく塗り広げましょう。ゴシゴシこすらないように注意してください。広い範囲に塗るときは、保湿剤を点在させてから塗り広げるのがコツです。
〇入浴・シャワー時の注意点
皮膚バリア機能の回復に適温なのは、38~40度とされています。逆に42度以上では痒みが増してしまうので注意しましょう。こするのも刺激となりますので、石鹸はよく泡立ててから使いましょう。洗浄剤が肌に残らないように十分にすすいでください。
原因・悪化因子の除去
アトピーの方は体質の他にも生活環境の変化に影響を受けやすく、皮膚症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しがちです。症状が起こるきっかけとなる要因を除去することが大切です。
■症状が起こりやすいとされる環境例
- 季節の変わり目などの温度・湿度の変化
- 学校・職場・家庭での精神的ストレス
- 洗剤や化粧品・シャンプーといった日常生活で使っている刺激物
- 風邪などの体調不良
アトピー性皮膚炎の肌は、どうしても外界からの刺激を受けやすくなっています。いくつか具体的な対策をお示しします。
- 肌着は刺激が少ない素材を選び、締め付けの強い肌着は避ける。
- ナイロンタオルでの清拭は避け、シャンプーのすすぎ残しがないように注意する。
- かぶれを疑ったらパッチテストで原因を特定して避ける。
- ダニやホコリに対してアレルギー体質があれば、こまめに掃除をしておく。
- 流れ出る汗をかいた時は吸水性の良いタオルで優しくぬぐう。
- 精神的ストレスを伴う場合は、気分転換をするなど対処法を考える。
病院に行く目安

皮膚科を受診する時間がなかなか取れずに、自己流の対処法や市販の外用薬で何とかしのいでいる方もおられるでしょう。どういう場合に皮膚科を受診するべきかの具体的な目安をいくつかお示しします。
・乾燥している
・赤みや腫れがある
・かきむしって血がにじむ
・ジュクジュクしている
・肌荒れが痛い
・スキンケアをしても肌荒れが良くならない
・どの薬を使えばよいのか分からない
上記のような場合は、1人で悩みを抱え込まず、お近くの皮膚科やアレルギー科でご相談ください。
まとめ

アトピー性皮膚炎について治療方法やスキンケアの具体的な方法などご理解いただけましたでしょうか。アトピー関連ではどんどん新しい治療薬が開発されています。まずは正しい病気の知識を持って、できることから始めていただければ幸いです。
アトピー性皮膚炎に関するQ&A


一般的にアトピーの皮膚症状は体調が悪くなると同時に悪化しがちです。栄養バランスよく食事をとることで、体調を整えていきましょう。


ただ、両親がアトピー性皮膚炎だからと言って発症が確定しているわけではありません。環境要因によって引き起こされることもあるので、環境の悪化要因をできるだけ取り除いてあげることが大切です。また医学の進歩により、子どもに関しても新しい治療法やお薬を選択できるようになってきています。




とはいえ、同じ部位に何年も毎日ステロイド外用薬を塗っていると皮膚が薄くなることもあります。毎日ステロイドを塗らないと治らない場合は、その他の外用薬を組み合わせて副作用ができるだけ出ないようなさじ加減をしていきますので、主治医とご相談ください。


なお、幼少期からのアトピーの場合は成長と共に自然に塗り薬が不要になることも多々ありますので、根気強く薬を使って症状を抑えていくことを目指しましょう。

※掲載内容は執筆時点での情報です。
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大泊 香 医師
執筆・監修者プロフィールはこちら医師。2013年卒、初期臨床研修を修了後、大学病院での皮膚科研修で研鑽を積み、大学の関連病院皮膚科で勤務。2019年からは大学院に進学し、皮膚科疾患の研究を行うかたわら、派遣先のクリニックで多くの患者と向き合う。

















